両国の勝ち上がり状況
イングランドは開催国としてグループAに入り、初戦のスイス戦を引き分けて不安なスタートを予感させたが、2戦目のライバル・スコットランド戦を2-0で勝利して勢いにのり、3戦目は優勝候補の一角オランダを4-1で撃破して、グループを首位で通過した。準々決勝のスペイン戦はスコアレスのPK戦を制して、準決勝に進出してきた。
ドイツはグループCに入り、優勝候補の一角イタリアと同組だったが、2勝1分の首位で通過し、準々決勝では今大会注目のクロアチアを2-1で競り勝って準決勝に進出してきた。
両国は2年前の1994年のワールドカップアメリカ大会で失意を味わっていた。ドイツはディフェンディングチャンピオンとして連覇を目指して同大会に臨んだが、準々決勝でブルガリアに逆転負けを喫して敗退していた。イングランドに至っては欧州予選でよもやの敗退を喫して本大会にすら出場できなかった。そして両国は復活を期してEURO1996に臨み、準決勝で激突した。
試合
1990年のワールドカップ準決勝の再戦となったこの試合は開始早々の3分、イングランドが左サイドのCKをガスコインが上げて、アダムスが頭で後ろにそらし、さらにシアラーが頭でゴールに押し込み先制点を挙げた。いきなりビハインドを負ったドイツだが、16分メラーが中央からザマーへ縦パスを通し、ザマーが反転して折り返したところをクンツがスライディングシュートでゴールに押し込み、ドイツがすかさず同点に追いついた。
お互い得点を取り合った後はしばらく膠着状態が続いていくが、ホームの大歓声を背に次第にイングランドがペースを握っていきドイツ陣内に攻め込んでいった。攻撃スタイルは執拗に左右からクロスとセンタリングを上げて、シアラーの頭に合わせていき、42分には決定的なヘディングシュートを放つが、惜しくもゴール左に外れていった。そして前半は1-1のまま終了した。
後半もイングランドペースで進んでいき、ドイツは時折カウンターを仕掛けていく展開になっていたが、お互いにディフェンスが固く、なかなか得点を奪えない。後半も半ば以降は消耗戦になっていき、前後半90分が終了し延長戦に突入していった。
延長戦もイングランドが主導権を握って攻め込みアンダートン、ガスコインが決定的チャンスを迎えるが、ともに外してしまい得点は奪えず。結局、延長戦も終了して120分で決着がつかずPK戦まで縺れることになった。
PK戦はお互い5人目まで全員が失敗なしで終わり迎えた6人目、先攻のイングランドはサウスゲートの蹴ったキックがGKケプケに止められてしまう。そして後攻のドイツはメラーがきっちり決めて勝負あり、ドイツが死闘を制して決勝に進出することになった。
その後の両国
ドイツは事実の決勝といわれた開催国イングランドとの準決勝をPK戦の末競り勝ち、決勝ではグループリーグでも対戦したチェコを再び下して、通算3度目のEUROを制覇した。2年前のワールドカップをベスト8で敗退し、国内から非難を浴びたフォクツ監督だったが、EUROで優勝して名誉を挽回した。またドイツ統一後、初のビッグタイトル獲得となった。
イングランドは「1990年ワールドカップの悪夢再び!」と、いったところか…。試合を終始優勢に進めながら、またしてもPK戦で屈してしまった。PKを失敗した失意のサウスゲートをヴェナブルズ監督を始め選手全員が慰めていた。このサウスゲートこそ、現イングランド代表監督であり、2018年のワールドカップベスト4、2020年のEURO準優勝に導くことになる。
出場選手(イングランド)
GK 1 D・シーマン 1996年、2000年のEUROに出場。1980年代後半からの2000年代前半のイングランドを代表するゴールキーパー。
DF 7 D・プラット 1992年、1996年のEUROに出場。1980年代後半から1990年代のイングランドを代表するミッドフィルダー。
DF 6 G・サウスゲート 1996年、2000年のEUROに出場。現イングランド代表監督で2020年のEUROに監督として出場し、準優勝に導いている。
DF 5 T・アダムス Ⓒ 1988年、1996年、2000年のEUROに出場。1980年代から1990年代のイングランドを代表するディフェンダー。
DF 3 S・ピアース 1992年、1996年のEUROに出場。1980年代から1990年代のイングランドを代表する左サイドバック。
MF 4 P・インス 1996年、2000年のEUROに出場。
MF 11 D・アンダートン 1996年のEUROに出場。
MF 17 S・マクマナマン 1996年、2000年のEUROに出場。
MF 8 P・ガスコイン 1996年のEUROに出場。1980年代後半から1990年代のイングランドを代表するファンタジスタ。
FW 10 T・シェリンガム 1996年のEUROに出場。
FW 9 A・シアラー 1996年、2000年のEUROに出場し、1996年は得点王。1990年代から2000年代前半のイングランドを代表するストライカー。
監督 T・ヴェナブルズ イングランドを代表する名将の一人。1996年のEUROに監督として出場し、ベスト4に導いている。
出場選手(ドイツ)
GK 1 A・ケプケ 1996年のEUROに出場。
DF 6 M・ザマー 1992年、1996年のEUROに出場。1990年代のドイツを代表する名リベロ。1996年にバロンドール受賞。
DF 2 S・ロイター 1992年、1996年のEUROに出場。
DF 14 M・バベル 1992年、1996年のEUROに出場。
DF 5 T・ヘルマー ▼110分 1996年のEUROに出場。
DF 17 C・ツィーゲ 1996年、2000年、2004年のEUROに出場。
MF 6 S・フロイント ▼118分 1996年のEUROに出場。
MF 21 D・アイルツ 1996年のEUROに出場。
MF 7 A・メラー Ⓒ 1992年、1996年のEUROに出場。1990年代のドイツを代表するオフェンシブミッドフィルダー。
MF 8 M・ショル ▼77分 1996年、2000年のEUROに出場。
FW 11 S・クンツ 1996年のEUROに出場。後にトルコ代表監督に就任するが、親善試合で日本と対戦して敗れた後に解任されている。
MF 10 T・ヘスラー △77分 1992年、1996年、2000年のEUROに出場。1980年代後半から1990年代のドイツを代表するオフェンシブミッドフィルダー。
MF 3 M・ボーデ △110分 1996年、2000年のEUROに出場。
MF 19 T・シュツルンツ △118分 1996年のEUROに出場。
監督 H・フォクツ 1960年代後半から1970年代のドイツを代表する名ディフェンダー。1972年、1976年のEUROに出場し、1972年は優勝に貢献。1992年、1996年のEUROに監督として出場し、1996年は優勝に導いている。
試合結果
イングランド 1-1(PK5-6) ドイツ
得点 A・シアラー(イングランド) 3分
S・クンツ(ドイツ) 16分