両国の勝ち上がり状況
デンマークは、本大会開催直前にユーゴスラヴィアに代わって出場し、グループAに組み込まれた。フランス、イングランドに開催国のスウェーデンと、激戦区のグループAを1勝1敗1分の2位で通過し、準決勝ではディフェンディングチャンピオンのオランダを、PK戦で競り勝ち、決勝に進出してきた。
ワールドカップチャンピオンのドイツは、グループBに入り、こちらも1勝1敗1分と際どいながらも2位通過を決めていた。準決勝では開催国のスウェーデンと激しい点の取り合いを制して決勝に進出してきた。
試合
試合はドイツがボールをキープして主導権を握り、両サイドからの折り返しをツートップが合わしていく攻撃が多く、7分にはザマーからのスルーパスをロイターが持ち込んでシュートを撃つが、これは枠を外れた。一方デンマークは後方からのロングフィードやボールを奪ってからのカウンターでツートップのスピードを生かした攻撃が主だった。
迎えた前半18分、右サイドでボールを受けたポブルセンがイエンセンに折り返し、これを迷わず振り抜いてゴールに突き刺し、デンマークが先制した。先制されたドイツだったが、その後もボールキープして攻め込み、23分にはクリンスマンがシュートを放つが、これはGKシュマイケルが好セーブして難を逃れた。
30分過ぎ頃から、GKシュマイケルを中心としたデンマークのディフェンスに手を焼き、攻めあぐねてしまいパスミスやファールが増えていった。結局、前半はこのまま1-0で、どちらかというとデンマークペースで折り返しを迎えることになった。
後半ドイツは同点に追いつくべく猛攻を仕掛けていくが、デンマークディフェンスは固く、なかなかゴールを割ることが出来ない。後半73分のクリンスマンの決定的なヘディングシュートも、GKシュマイケルの好セーブで得点ならず。また、ドイツが人数をかけて猛攻を仕掛ければ仕掛けるほど、デンマークのカウンターの危険度が増し、ラウドルップとポブルセンが度々ドイツディフェンスを脅かしていた。
そして後半78分、デンマークに待望の追加点が入る。ドイツ陣内のルーズボールに競り勝ったボールが、ヴィルフォートの前に転がり、これをヴィルフォートがミドルシュートを撃つとポストにあたってゴールに転がり込んだ。
この日のデンマークディフェンスは2点あれば十分で、その後のドイツの攻撃を凌いで2-0で試合終了のホイッスルがなった。デンマークは初優勝を飾り、ドイツはワールドカップとEUROの連覇はならず、準優勝で大会を終えた。
両国の大会総括
ドイツは東西統一後、初のビッグトーナメントだったが惜しくも準優勝に終わった。主力は2年前のワールドカップを制したメンバーがほとんどだったが、キャプテンのマテウスは負傷のため不在だった。
デンマークは本来、予選で敗退したため本大会出場の資格はなかったが、諸事情によりユーゴスラヴィアに代わって出場した。本大会では、グループリーグで優勝候補のフランス、準決勝でディフェンディングチャンピオンのオランダ、決勝でワールドカップチャンピオンのドイツを破って優勝に輝いた。今大会のデンマークの活躍は、シンデレラ・ストーリーとしてEUROの歴史に深く刻まれることになった。
余談
この試合をスタジアムで、元西ドイツ代表監督ベッケンバウアーとブラジルの王様キングペレが並んで観戦していた。
出場選手(デンマーク)
GK 1 P・シュマイケル 1992年、1996年、2000年のEUROに出場。1980年代から1990年代のデンマークを代表する史上最高のゴールキーパー。デンマーク代表ゴールキーパーのカスパー・シュマイケルは息子である。
DF 4 L・オルセン Ⓒ 1988年、1992年、1996年のEUROに出場。
DF 12 T・ピエチニク 1992年、1996年のEUROに出場。
DF 3 K・ニールセン 1992年のEUROに出場。
DF 2 J・シヴェベーク ▼66分 1988年、1992年のEUROに出場。
DF 6 K・クリストフテ 1992年のEUROに出場。
MF 7 J・イエンセン 1988年、1992年のEUROに出場。
MF 18 K・ヴィルフォート 1988年、1992年、1996年のEUROに出場。
MF 13 H・ラーセン 1992年、1996年のEUROに出場。
FW 11 B・ラウドルップ 1992年、1996年のEUROに出場。1980年代後半から1990年代のデンマークを代表するアタッカー。実兄はデンマーク史上最高の選手ミカエル・ラウドルップである。
FW 9 F・ポブルセン 1988年、1992年のEUROに出場。1980年代から1990年代前半のデンマークを代表するアタッカー。
DF 17 C・クリスチャンセン △66分 1988年、1992年のEUROに出場。
監督 R・メラー・ニールセン 1992年、1996年のEUROに監督として出場し、1992年は優勝に導いている。
出場選手(ドイツ)
GK 1 B・イルクナー 1992年のEUROに出場。
DF 6 G・ブッフバルト 1984年、1988年、1992年のEUROに出場。後年J・リーグの浦和レッズに選手と監督として在籍。
DF 4 J・コーラー 1988年、1992年、1996年のEUROに出場。1980年代後半から1990年代のドイツを代表する名ストッパー。
DF 14 T・ヘルマー 1992年、1996年のEUROに出場。
DF 2 S・ロイター 1992年、1996年のEUROに出場。
DF 3 A・ブレーメ Ⓒ 1984年、1988年、1992年のEUROに出場。1980年代から1990年代前半のドイツを代表する左サイドバック。
MF 16 M・ザマー ▼46分 1992年、1996年のEUROに出場。1990年代のドイツを代表する名リベロ。1996年にバロンドール受賞。
MF 17 S・エフェンベルグ ▼80分 1992年にEUROに出場。1990年代から2000年代前半のドイツを代表する名ゲームメーカー。
MF 8 T・ヘスラー 1992年、1996年、2000年のEUROに出場。1980年代後半から1990年代のドイツを代表するオフェンシブミッドフィルダー。
FW 11 K・リードレ 1992年のEUROに出場。
FW 18 J・クリンスマン 1988年、1992年、1996年のEUROに出場。1980年代後半から1990年代のドイツを代表するストライカー。後にドイツ代表監督に就任。
MF 10 T・ドル △46分 1992年のEUROに出場。
FW 13 A・トーム △80分 1992年のEUROに出場。
監督 H・フォクツ 1960年代後半から1970年代のドイツを代表する名ディフェンダー。1972年、1976年のEUROに選手として出場し、1972年は優勝に貢献。1992年、1996年のEUROに監督として出場し、1996年は優勝に導いている。
試合結果
デンマーク 2-0 ドイツ
得点 J・イエンセン(デンマーク) 18分
K・ヴィルフォート(デンマーク) 78分