大会前の両国
フランスは開催国のため予選は免除されて本大会に出場し、今大会は優勝候補の筆頭として迎えることになった。チームの主力は2年前のワールドカップベスト4のメンバーで、大黒柱でありエースのプラティニとジレス、ティガナ、ジャンジニに代わってフェルナンデスで構成する銀の中盤がチームの生命線となっていた。
一方のデンマークは予選をグループ3に入り、下馬評を覆して強豪イングランドを抑えて本大会に出場してきた。戦術はM・オルセンを中心とした堅守からのシモンセン、エルケーア・ラーセン、ラウドルップのカウンター戦法で厳しい予選を勝ち上がってきた。そしてこの両国が今大会の開幕戦で対戦することになった。
試合
試合はフランスがボールキープして攻め込み、デンマークがカウンターで応酬する展開で進んでいった。前半25分、フランスがペナルティエリア外15m左の位置からプラティニが直接狙ったが、GKクヴィストがキャッチしてゴールにはならず。その後もフランスが攻め込んでいったが、前半35分過ぎからはデンマークもボールを前に運べるようになっていった。
前半36分、左サイドでFKを獲得したデンマークはレアビーがフランスペナルティエリア内にクロスを上げ、バーググリーンがヘディングで合わせたがGKバツに防がれてゴールにはならなかった。さらに39分、レアビーからパスを貰ったエルケーア・ラーセンが、ペナルティエリア内をドリブルで持ち込んでシュートを撃ったが枠を外れてしまう。
しかし前半42分にデンマークにアクシデントが発生し、中盤でのボールの競り合いの際にシモンセンとル・ルーが激しく衝突してしまい、シモンセンが骨折で退場になってしまった。デンマークの精神的支柱のシモンセンは、この試合は元より今大会の離脱が決まってしまった。そしてここで前半は終了してスコアレスのまま折り返しを迎えることになった。
デンマークはシモンセンの代わりにラウリドセンを投入して後半が始まり、後半58分にゴール正面25mのFKをアーネセンが直接狙ったがGKバツにセーブされ、60分には左サイドからレアビーのクロスをエルケーア・ラーセンが頭で合わせたが枠を外れてゴールにならなかった。
後半61分にフランスは右サイドからバティストンのクロスを、プラティニがヘディングをワンバウンドさせてゴールを狙ったがGKクヴィストの好セーブで弾きだされてしまい、74分には左サイドからベロンヌのクロスを再びプラティニがダイビングヘッドでゴールを狙ったが、またしてもGKクヴィストの好セーブで得点にはならなかった。
一進一退の攻防が続き後半70分、レアビーが自陣エリアからロングフィードでラウドルップにパスを通し、ラウドルップがキープしてエルケーア・ラーセンに横パスで渡し、エルケーア・ラーセンがフランスDFをシュートを撃ったが僅かに外れてゴールにならなかった。
デンマークの堅守に手を焼いていたフランスは後半78分、右サイドでボールを奪ったティガナが中央のジレスにパスを通し、ジレスがラコンブにパスを出すがデンマークDFにあたって通らず。しかし、そのこぼれ球に反応したプラティニがそのままシュートするとデンマークDFにあたってコースが変わり、ゴールに吸い込まれていってフランスが待望の先制点を挙げた。
先制されたデンマークはアーネセンに代えてJ・オルセンを投入して攻撃に重点を置くと、逆に今度はフランスがカウンターを繰り出しベロンヌ、ジレスがチャンスを掴んだが追加点にはならず。しかし、後半87分にアモロスがフェイントでかわして持ち込もうとしたときに、J・オルセンが後ろから強烈なタックルを見舞うと、アモロスが激怒してJ・オルセンに頭突きを喰らわせて退場処分になってしまった。
そして激しくなった試合は1-0のまま終了し、フランスが開幕試合をものにして白星で大会をスタートすることになった。
その後の両国
苦しみながらも開幕試合を白星でスタートしたフランスは2戦目のベルギー戦、最終戦のユーゴスラヴィア戦をプラティニの2試合連続のハットトリックで下し、3戦全勝でグループ1を首位で通過した。準決勝ではポルトガルを延長の末に3-2で下し、決勝でもスペインを2-0で破って、自国開催でEURO初優勝となった。
惜しくも開幕戦を落とし、シモンセンの骨折リタイアとなったデンマークは、2戦目のユーゴスラヴィア戦を5-0で大勝し、最終戦のベルギー戦も3-2で競り勝って準決勝に進出した。準決勝ではスペインに1-1の延長PK戦の末に競り負けて決勝進出とはならなかった。
出場選手(フランス)
GK 1 J・バツ 1984年のEUROに出場。
DF 4 M・ボシス 1984年のEUROに出場。1970年代から1980年代のフランスを代表するディフェンダー。
DF 5 P・バティストン 1984年のEUROに出場。
DF 15 Y・ル・ルー ▼60分 1984年のEUROに出場。
DF 2 M・アモロス 1984年、1992年のEUROに出場。1980年代から1990年代前半のフランスを代表するサイドバック。
MF 14 J・ティガナ 1984年のEUROに出場。1970年代から1980年代のフランスを代表する史上最高のミッドフィルダーの一人であり、欧州を代表するミッドフィルダーの一人。
MF 6 L・フェルナンデス 1984年、1992年のEUROに出場。1980年代から1990年代前半のフランスを代表するミッドフィルダー。
MF 10 M・プラティニ Ⓒ 1984年のEUROに出場。1970年代から1980年代のフランスを代表する史上最高の選手であり、欧州を代表する史上最高の選手の一人。後年フランス代表監督に就任し、1992年のEUROに出場。UEFA会長にも就任する。1983年、1984年、1985年にバロンドール受賞。
MF 12 A・ジレス 1984年のEUROに出場。1970年代から1980年代のフランスを代表するミッドフィルダー。
FW 17 B・ラコンブ 1984年のEUROに出場。
FW 11 B・ベロンヌ 1984年のEUROに出場。
DF 3 J・F・ドメルグ △60分 1984年のEUROに出場。
監督 M・イダルゴ フランスを代表する史上最高の監督の一人。1984年のEUROに監督として出場し、優勝に導いている。
出場選手(デンマーク)
GK 20 O・クヴィスト 1984年のEUROに出場。
DF 4 M・オルセン Ⓒ 1984年、1988年のEUROに出場。1970年代から1980年代のデンマークを代表する史上最高の選手の一人。後年デンマーク代表監督に就任し、2004年、2012年のEUROに監督として出場。
DF 3 S・バスク 1984年、1988年のEUROに出場。
DF 5 I・ニールセン 1984年、1988年のEUROに出場。
MF 15 F・アーネセン ▼79分 1984年のEUROに出場。
MF 7 J・J・ベルテルセン 1984年のEUROに出場。
MF 11 K・バーググリーン 1984年、1988年のEUROに出場。
MF 9 A・R・シモンセン ▼46分 1984年のEUROに出場。1970年代から1980年代のデンマークを代表する史上最高の選手の一人であり、欧州を代表するストライカーの一人。1977年にバロンドール受賞。
MF 6 S・レアビー 1984年、1988年のEUROに出場。
FW 14 M・ラウドルップ 1984年、1988年、1996年のEUROに出場。1980年代から1990年代のデンマークを代表する史上最高の選手であり、欧州を代表するオフェンシブミッドフィルダーの一人。後年J・リーグのヴィッセル神戸に選手として在籍する。元デンマーク代表のブライアン・ラウドルップは実弟である。
FW 10 P・エルケーア・ラーセン 1984年、1988年のEUROに出場。1970年代後半から1980年代のデンマークを代表する史上最高のストライカーの一人であり、欧州を代表するストライカーの一人。
MF 13 J・M・ラウリドセン △46分 1984年のEUROに出場。
MF 8 J・オルセン △79分 1984年、1988年のEUROに出場。
監督 S・ピオンテック ドイツ人でデンマークを代表する史上最高の監督。1984年、1988年のEUROに監督として出場し、1984年はベスト4に導いている。
試合結果
1984年6月12日 パルク・デ・プランス(パリ)
フランス 1-0 デンマーク
得点 M・プラティニ(フランス) 78分