両国のグループリーグ戦
組み合わせ抽選の時、グループBには両国にスペインとルーマニアが入り、実力伯仲の4カ国の争いが予想されていた。中でもこの両国の対戦は、グループAのイングランドースコットランド戦と並び注目されていた。理由はもちろん2年前のワールドカップ欧州予選の最終戦に尽きる。
ここまでの勝ち上がり状況は、両国とも同じスコアでスペインと1-1の引き分け、ルーマニアを1-0で下して、1勝1分の勝点4で総得点と得失点差も全く同じであった。つまり勝てばベスト8進出になり、敗ければ同時刻開催のスペインールーマニア戦の結果次第になる。フランスがリベンジするのか、ブルガリアが返り討ちにするのか、注目の一戦である。
試合
試合は開始3分、デサイーがストイチコフに強烈なタックルを見舞い、イエローカードを貰ったところから始まった。フランスの確固たる決意が伝わるプレーであり、またこの両者は前半、口論も含めて何度もやり合っていた。
すると前半21分、右サイドのCKからジョルカエフが上げたクロスをブランが頭で合わせてフランスが先制点を挙げた。その後も激しいコンタクトが続いていたが、珍しいハプニングが起きた。前半28分にギャラガー主審が足を痛めてダーキン第4審判とレフリーが交代になってしまった。試合の方は、それ以降フランスが主導権を握ったまま前半を1-0で終了した。
後半もフランスが主導権を握ってペースを掴んで迎えた後半63分、左サイドで獲得したFKを再びジョルカエフがゴール前にクロスを上げると、ディフェンスに戻っていたペネフの頭にあたってゴールに吸い込まれていった。オウンゴールで2点差にされたブルガリアは苦しくなったが、後半69分にペナルティエリア外中央の位置でFKを獲得した。これをストイチコフが美しい弧を描いて直接蹴り込み1点を返した。
1点差にされたフランスだが、主導権は渡さずに進めていった終了間際の後半90分、交代出場していたロコがオフサイドラインを抜け出してGKと1対1になり、GKミハイロフもかわしてゴールに蹴り込み、3点目を挙げて勝負を決めた。
フランスはリベンジして雪辱を果たし、グループを2勝1分の首位で突破して準々決勝に進出した。ブルガリアは同時刻開催のスペインールーマニア戦が、スペインの勝利によって勝点を逆転されグループリーグ敗退となった。
その後の両国
フランスは準々決勝のオランダ戦をスコアレスのPK戦で制して準決勝に進出し、チェコと決勝進出をかけて対戦するがスコアレスのPK戦で敗れてベスト4止まりで大会を終えた。2年前の悲劇的敗戦からチームを作り直して臨んだEUROだったが、得点力不足が課題になった。2年後の自国開催のワールドカップに向けてさらにチーム力を上げていくことになる。
一方、ブルガリアは2年前のワールドカップベスト4をピークにチーム力は、やや下り坂の傾向にある。主力もほぼ変わらず、今大会はストイチコフの孤軍奮闘の感があった。2年後のワールドカップは何とか出場するが、以降は2004年のEURO本大会出場を除き、欧州予選を突破できずに国際舞台から遠ざかり、暗黒時代に突入している。
出場選手(フランス)
GK 1 B・ラマ 1996年のEUROに出場。1980年代から1990年代のフランスを代表するゴールキーパー。
DF 15 L・テュラム 1996年、2000年、2004年、2008年のEUROに出場。1990年代から2000年代のフランスを代表する名ディフェンダー。
DF 8 M・デサイー 1996年、2000年、2004年のEUROに出場。1980年代後半から2000年代前半のフランスを代表するボレンチ、ディフェンダー。
DF 5 L・ブラン 1992年、1996年、2000年のEUROに出場。1980年代後半から2000年代前半のフランスを代表する名リベロ。後にフランス代表監督に就任し、2012年のEUROに監督として出場。
DF 12 B・リザラズ 1996年、2000年、2004年のEUROに出場。1980年代後半から2000年代前半のフランスを代表するディフェンダー。
MF 7 D・デシャン Ⓒ 1992年、1996年、2000年のEUROに出場。1980年代後半から2000年代前半のフランスを代表するディフェンシブミッドフィルダー。現フランス代表監督で2016年、2020年のEUROに監督として出場し、2016年は準優勝。
MF 6 V・ゲラン 1996年のEUROに出場。
MF 19 C・カランブー 1996年、2000年のEUROに出場。
MF 10 Z・ジダン ▼62分 もはや説明不要の超ド級のスーパースター。
MF 9 Y・ジョルカエフ 1996年、2000年のEUROに出場。1990年代から2000年代前半のフランスを代表するオフェンシブミッドフィルダー。
FW 13 C・デュガリー ▼70分 1996年、2000年のEUROに出場。
MF 18 R・ペドロス △62分 1996年のEUROに出場。
FW 11 P・ロコ △70分 1996年のEUROに出場。
監督 A・ジャケ フランスを代表する史上最高の監督の一人。1996年のEUROに監督として出場しベスト4。
出場選手(ブルガリア)
GK 1 B・ミハイロフ 1996年のEUROに出場。
DF 5 P・フブチェフ 1996年のEUROに出場。後にブルガリア代表監督に就任する。
DF 17 E・クレメンリエフ 1996年のEUROに出場。
DF 3 T・イヴァノフ 1996年のEUROに出場。
DF 18 T・ツヴェタノフ 1996年のEUROに出場。
MF 6 Z・ヤンコフ ▼79分 1996年のEUROに出場。
MF 15 I・ヨルダノフ 1996年のEUROに出場。
MF 11 Y・レチコフ 1996年のEUROに出場。1980年代後半から1990年代のブルガリアを代表するミッドフィルダー。
MF 10 K・バラコフ ▼82分 1996年のEUROに出場。1980年代後半から2000年代前半のブルガリアを代表するミッドフィルダー。後にブルガリア代表監督に就任する。
FW 8 H・ストイチコフ 1996年のEUROに出場。1980年代後半から1990年代のブルガリアを代表する史上最高の選手。1994年にバロンドール受賞。後年ブルガリア代表監督に就任。後にJ・リーグの柏レイソルに選手として在籍し、Jリーガーで唯一のバロンドーラー。
FW 9 L・ペネフ 1996年のEUROに出場。1980年代後半から1990年代のブルガリアを代表するアタッカー。後にブルガリア代表監督に就任する。
MF 16 D・ボリミロフ △79分 1996年のEUROに出場。
FW 20 G・ドンコフ △82分 1996年のEUROに出場。
監督 D・ペネフ ブルガリアを代表する名将。1996年のEUROに監督として出場。
試合結果
フランス 3-1 ブルガリア
得点 L・ブラン(フランス) 21分
L・ペネフ(OG) 63分
H・ストイチコフ(ブルガリア) 69分
P・ロコ(フランス) 90分