ハンブルガーSVの勝ち上がり状況
前シーズンにブンデスリーガを制したハンブルガーSVは、1回戦で東ドイツのディナモ・ベルリンと対戦し、2試合合計3-1で下して2回戦に進出した。2回戦ではギリシャのオリンピアコスと対戦して2試合合計5-0で下し、危なげなく準々決勝に進出を決めた。
準々決勝ではソ連のディナモ・キエフと対戦し、2試合合計4-2で下して準決勝に進出した。そして準決勝でスペインのレアル・ソシエダと対戦し、2試合合計3-2で下して3年ぶり2回目の決勝進出を決めた。
ユヴェントスの勝ち上がり状況
前シーズンにセリエAを制したユヴェントスは、1回戦でデンマークのビドゥビレIFと対戦し、2試合合計7-4で下して2回戦に進出した。2回戦ではベルギーのスタンダード・リエージュと対戦し、2試合合計3-1で下して準々決勝に進出した。
準々決勝ではディフェンディングチャンピオンのアストン・ヴィラをホーム・アウェーを連勝して、2試合合計5-2で下して準決勝に進出した。準決勝は優勝候補の一角リヴァプールを破って勝ち上がったポーランドのウィジェフ・ウッチとの対戦となり、2試合合計4-2で下して10年ぶり2回目の決勝進出を決めた。
対戦前状況
こうして1982ー1983チャンピオンズカップ決勝のカードはハンブルガーSV対ユヴェントスの顔合わせとなり、どちらが勝っても初優勝ということになった。
対戦前の下馬評では、前年のワールドカップを制したイタリア代表の主力を多数擁し、同大会で活躍したプラティニとボニエクを加えたユヴェントスが優位とみられていた。対してハンブルガーSVは、1970年にフェイエノールトをチャンピオンズカップ優勝に導いたオーストリア屈指の名将エルンスト・ハッペル監督がチームを率いていた。
試合(前半)
7分 ユヴェントスが右サイドからタルデリがクロスを上げ、ベッテガがヘディングでハンブルガーSVゴールを狙ったがGKスタインがセーブしてゴールならず。
8分 ハンブルガーSVのマガトが左サイド45度の位置から意表をついたミドルシュートを放ち、GKゾフの頭上を越えてユヴェントスゴールに吸い込まれハンブルガーSVが先制点を挙げる。
14分 ハンブルガーSVが左サイドのFKをマガトがクロスを上げ、カルツがシュートを撃ったがユヴェントスDFがクリアしてゴールならず。
19分 ユヴェントスが右サイドからジェンティーレがハンブルガーSVペナルティエリア内にクロスを入れ、プラティニがダイビングヘッドで合わせたがGKスタインがセーブしてゴールならず。
23分 ハンブルガーSVのマガトがミドルシュートを撃ったが枠を外れてゴールならず、さらに左サイドからウェーマイヤーがクロスを上げ、ルベッシュが頭で合わせたが枠を外れてゴールならず。
35分 ジェンティーレをロルフが足を引っかけて倒しイエローカードを貰う。
36分 ボニーニがヒエロニムスを体ごとぶつけて倒してしまいイエローカードを貰う。
39分 左サイドハーフェライン付近でカブリーニとグローがやり合い、両者にイエローカードが出される。
試合は開始早々の8分にマガトがミドルシュートを決めてハンブルガーSVが先制し、早くもスコアが動く展開で始まっていった。その後は両チームにチャンスが訪れたが得点には至らず、25分過ぎ頃からは膠着状態に陥り、イエローカードが乱発していった。結局前半は1-0のまま終了し、ハンブルガーSVのリードでハーフタイムに入っていった。
試合(後半)
52分 ユヴェントスのカブリーニが左サイド45度の位置からミドルシュートを撃ったがGKスタインがセーブしてゴールならず。
54分 ハンブルガーSVのバストルップがジェンティーレと衝突して負傷する(顎を骨折)。
55分 ハンブルガーSVのバストルップが負傷してフォン・ヘーセンと交代。
56分 ユヴェントスがロッシを下げてマロッキーノを投入。
58分 ハンブルガーSVのマガトがルーズボールをワントラップから強烈なボレーシュートを撃ったが枠を外れてゴールならず。
63分 ユヴェントスのタルデリが中盤でボールをキープして右サイドのボニーニにパスを出し、ボニーニがハンブルガーSVペナルティエリア内にクロスを入れ、ボニエクが強烈なシュートを撃ったが枠を外れてゴールならず。
72分 ユヴェントスが右サイドのショートコーナーからボニーニがハンブルガーSVペナルティエリア内に浮き球のボールを入れ、このボールに反応したプラティニがGKスタインをチップキックでかわそうとしたがスタインに倒されてしまう。しかしこのプレーに主審の笛は吹かれずPKにはならなかった。
77分 ハンブルガーSVが中盤でボールを回してロルフが縦パスでグローに通し、グローがシュートを撃ったがGKゾフがセーブしてゴールならず。
82分 ハンブルガーSVが右サイドからカルツが持ち上がってグローに渡し、グローの縦パスをフォン・ヘーセンがワンタッチでマガトに渡し、マガトがシュートを撃ったが枠を外れてゴールならず。
後半に入ると追いかけるユヴェントスが猛攻を仕掛けて攻め込んでいくが、ハンブルガーSVもオフサイドトラップを駆使しながら粘り強く守っていった。なかなか同点に追いつくことが出来ないユヴェントスは、75分過ぎ頃から攻め疲れが出てきたのかハンブルガーSVにチャンスを作られてピンチを迎える場面も出てくるようになった。ユヴェントスにとっては前半8分の失点が重くのしかかり、結局試合は1-0のまま終了してハンブルガーSVが歓喜の初優勝を飾ることになった。そしてハンブルガーSVのエルンスト・ハッペル監督は、史上初の2つのクラブでチャンピオンズカップ制覇という偉業を達成した。
その後のハンブルガーSV
チャンピオンズカップ初優勝を飾ったハンブルガーSVは、ヨーロッパスーパーカップでカップ・ウィナーズカップ優勝のスコットランドのアバディーンと対戦し、2試合合計0-2で敗れてタイトル獲得とはならなかった。そしてこの時のアバディーンの指揮官が、後にマンチェスター・ユナイテッドの監督に就任して黄金時代を築くことになるアレックス・ファーガソン監督である。
インターコンチネンタルカップでもブラジルのグレミオと対戦し、1-2で敗れてタイトル獲得とはならなかった。翌シーズンのチャンピオンズカップではディフェンディングチャンピオンとして出場したが、2回戦でルーマニアのディナモ・ブカレストに2試合合計3-5で敗れて連覇は出来なかった。
出場選手(ハンブルガーSV)
GK 1 U・スタイン 1983年にハンブルガーSVでチャンピオンズカップ優勝。
DF 5 H・ヒエロニムス 1983年にハンブルガーSVでチャンピオンズカップ優勝。
DF 2 M・カルツ 1983年にハンブルガーSVでチャンピオンズカップ優勝。1970年代から1980年代の西ドイツを代表する右サイドバック。
DF 4 D・ヤコブス 1983年にハンブルガーSVでチャンピオンズカップ優勝。
DF 3 B・ウェーマイヤー 1983年にハンブルガーSVでチャンピオンズカップ優勝。
MF 6 W・ロルフ 1983年にハンブルガーSVでチャンピオンズカップ優勝。
MF 7 J・ミレフスキー 1983年にハンブルガーSVでチャンピオンズカップ優勝。
MF 8 J・グロー 1983年にハンブルガーSVでチャンピオンズカップ優勝。
MF 10 W・F・マガト 1983年にハンブルガーSVでチャンピオンズカップ優勝。1970年代から1980年代の西ドイツを代表するオフェンシブミッドフィルダー。後年ハンブルガーSVとバイエルン・ミュンヘンの監督に就任する。
FW 11 L・バストルップ ▼55分 1983年にハンブルガーSVでチャンピオンズカップ優勝。
FW 9 H・ルベッシュ Ⓒ 1983年にハンブルガーSVでチャンピオンズカップ優勝。
MF 12 T・フォン・ヘーセン △55分 1983年にハンブルガーSVでチャンピオンズカップ優勝。
監督 E・ハッペル オーストリアを代表する史上最高の監督。1970年にフェイエノールト、1983年にハンブルガーSVで監督としてチャンピオンズカップ優勝。
出場選手(ユヴェントス)
GK 1 D・ゾフ Ⓒ 1960年代から1980年代前半のイタリアを代表する史上最高のゴールキーパーであり、欧州を代表する史上最高のゴールキーパーの一人。後年ユヴェントスの監督に就任する。
DF 6 G・シレア 1985年にユヴェントスでチャンピオンズカップ優勝。1970年代から1980年代のイタリアを代表する史上最高の選手の一人であり、欧州を代表する史上最高の選手の一人。
DF 2 C・ジェンティーレ 1970年代から1980年代のイタリアを代表する史上最高のディフェンダーの一人であり、欧州を代表する史上最高のディフェンダーの一人。
DF 5 S・ブリオ 1985年にユヴェントスでチャンピオンズカップ優勝。1970年代後半から1980年代のイタリアを代表するディフェンダー。
DF 3 A・カブリーニ 1985年にユヴェントスでチャンピオンズカップ優勝。1970年代後半から1980年代のイタリアを代表する史上最高の左サイドバックであり、欧州を代表する史上最高の左サイドバックの一人。
MF 8 M・タルデリ 1985年にユヴェントスでチャンピオンズカップ優勝。1970年代後半から1980年代のイタリアを代表する史上最高の選手の一人であり、欧州を代表するディフェシブミッドフィルダーの一人。
MF 4 M・ボニーニ 1985年にユヴェントスでチャンピオンズカップ優勝。1980年代から1990年代前半のサンマリノを代表する史上最高の選手。
MF 10 M・プラティニ 1985年にユヴェントスでチャンピオンズカップ優勝。1970年代から1980年代のフランスを代表する史上最高の選手であり、欧州を代表する史上最高の選手の一人。1983年、1984年、1985年にバロンドール受賞。後年UEFA会長に就任する。
MF 7 R・ベッテガ 1970年代から1980年代前半のイタリアを代表する史上最高のストライカーの一人であり、欧州を代表するストライカーの一人。後年ユヴェントスの副会長に就任する。
MF 11 Z・ボニエク 1985年にユヴェントスでチャンピオンズカップ優勝。1970年代後半から1980年代のポーランドを代表する史上最高の選手であり、欧州を代表する史上最高の選手の一人。後年ポーランドサッカー協会会長に就任する。
FW 9 P・ロッシ ▼56分 1985年にユヴェントスでチャンピオンズカップ優勝。1970年代後半から1980年代のイタリアを代表する史上最高のストライカーの一人であり、欧州を代表するストライカーの一人。1982年にバロンドール受賞。
MF 15 D・マロッキーノ △56分
監督 G・トラパットーニ イタリアを代表する史上最高の監督の一人。1960年代のイタリアを代表するディフェシブミッドフィルダー。1963年、1969年にACミランで選手としてチャンピオンズカップ優勝し、1985年にユヴェントスで監督としてチャンピオンズカップ優勝。
試合結果
1983年5月25日 オリンピックスタジアム(アテネ)
ハンブルガーSV 1-0 ユヴェントス
得点 W・F・マガト(ハンブルガーSV) 8分