ここまでの欧州予選グループ6
1986年にメキシコで開催されるワールドカップ本大会出場権を巡って行われている欧州予選グループ6は、2大会連続出場を目指すソ連、EURO1984ベスト4のデンマーク、アイルランド、スイス、ノルウェーの5カ国で2つの出場枠を争うことになった。
EUROベスト4でワールドカップ本大会初出場を目指すデンマークは、ここまで2勝1敗の勝点4を挙げて、ホームにこのグループ最大のライバルとなるソ連を迎えることになった。一方、2大会連続出場を目指すソ連は、ここまで1勝1敗2分とややスタートダッシュに失敗し、アウェーのデンマーク戦に臨むことになった。アウェーとはいえ、ここまで少々勝点を取りこぼしているソ連は負けられない一戦となった。
試合
試合は両チームともアグレッシブな展開で始まり、4分にベルテルセンがソ連DFからボールを奪って持ち込みシュートを撃ったが枠を外れてしまう。6分にはバスクがハーフェラインからスルーパスを出し、ボールを受けたラウドルップがミドルシュートを撃ったがゴールにはならなかった。
そして前半15分、デンマークが中盤でのパス交換からベルテルセンに渡り、ベルテルセンが折り返したボールをエルケーア・ラーセンがシュートを決めてデンマークが先制点を挙げた。続く前半19分にソ連ペナルティエリア外でボールを受けたエルケーア・ラーセンが、ソ連DFをかわして持ち込み、そのままシュートを撃ってゴールに突き刺してデンマークが追加点を挙げた。
2点差にされたソ連は前半24分、ガブリロフがミドルシュートを撃ったがポストを直撃してゴールにはならず。そして前半26分、左サイドからデミネンコがドリブルでカットインしてプロタソフにパスを出し、プロタソフが振り向き様にシュートを撃ってデンマークゴールに突き刺してソ連が1点を返した。
前半30分に右サイドからのクロスを受けたガブリロフが左のゴツマノフにボールを渡し、ゴツマノフがシュートを撃ったがポストにあたってゴールにはならなかった。その後はお互いにノーガードの打ち合いの様相になっていき、デンマークはエルケーア・ラーセン、レアビー、バーググリーンがシュートを撃ち、ソ連はゴツマノフがシュートを撃ったがゴールにはならず、前半は2-1で終了し、ハーフタイムに入っていった。
後半に入っても前半同様の展開で進んでいったが、より多くチャンスを作っていったのホームのデンマークだった。後半57分、中央からM・オルセンが左サイドのニールセンにパスを出し、ニールセンがソ連ゴール前にクロスを上げたボールにエルケーア・ラーセンが飛び込んだが合わせることが出来なかった。
しかし、後半61分にGKクヴィストのゴールキックをソ連DFが自陣で軽率なパスミスをしてしまい、これをエルケーア・ラーセンが奪って持ち上がりソ連ペナルティエリア内でラウドルップにパスを出し、ラウドルップがソ連ゴールに押し込んでデンマークが再びリードを2点差に広げた。
さらに3分後の後半64分、レアビーが自陣でボールをカットしてラウドルップにパスを出し、ラウドルップがハーフェラインからドリブルで持ち上がってそのままシュートを撃ってゴールに突き刺し、デンマークがさらにリードを広げた。3点差にされたソ連は後半68分、右サイドのFKから上げたクロスボールの競り合いから、こぼれ球をゴツマノフがデンマークゴールに突き刺してソ連がゴールを挙げて再び2点差に詰め寄った。
後半に入っても激しく点の取り合いとなり、その後も両チームチャンスを迎えたが得点には至らず、試合は4-2のままホームのデンマークが勝利した。
その後の両国
ホームでソ連を下したデンマークは3か月後のアウェー・ソ連戦ではリベンジされてしまったが、最終的には5勝2敗1分の勝点11を挙げてグループを首位で終え、同国初のワールドカップ本大会出場を決めた。主力は2年前のEUROベスト4のメンバーであり、翌年の本大会でも旋風を起こすことになる。
アウェー・デンマーク戦を落としたソ連は、この時点で1勝2敗2分となって本大会出場に黄信号が灯ったが、残る試合デンマーク戦を含むホーム3連戦を3連勝で切り抜けて、4勝2敗2分の勝点10を挙げて予選を2位で通過し、2大会連続の本大会出場を決めた。
出場選手(デンマーク)
GK 1 O・クヴィスト
DF 3 S・バスク 1986年のワールドカップに出場。
DF 4 M・オルセン Ⓒ 1986年のワールドカップに出場。1970年代から1980年代のデンマークを代表する史上最高の選手の一人。後年デンマーク代表監督に就任し、2002年、2010年のワールドカップに監督として出場。
DF 5 I・ニールセン 1986年のワールドカップに出場。
MF 2 K・バーググリーン 1986年のワールドカップに出場。
MF 6 S・レアビー 1986年のワールドカップに出場。
MF 7 J・J・ベルテルセン 1986年のワールドカップに出場。
MF 8 J・オルセン ▼46分 1986年のワールドカップに出場。
MF 9 F・アーネセン ▼78分 1986年のワールドカップに出場。
FW 10 P・エルケーア・ラーセン 1986年のワールドカップに出場。1970年代後半から1980年代のデンマークを代表する史上最高のストライカーの一人であり、欧州を代表するストライカーの一人。
FW 11 M・ラウドルップ 1986年、1998年のワールドカップに出場。1980年代から1990年代のデンマークを代表する史上最高の選手であり、欧州を代表するオフェンシブミッドフィルダーの一人。後年J・リーグのヴィッセル神戸に選手として在籍する。元デンマーク代表ブライアン・ラウドルップは実弟である。
MF 14 P・フリーマン △46分 1986年のワールドカップに出場。
DF 15 H・アンデルセン △78分 1986年のワールドカップに出場。
監督 S・ピオンテック ドイツ人でデンマークを代表する史上最高の監督。1986年のワールドカップに監督として出場。
出場選手(ソ連)
GK 1 R・ダサエフ Ⓒ 1982年、1986年、1990年のワールドカップに出場。1970年代後半から1990年代前半のソ連を代表する史上最高のゴールキーパーの一人であり、欧州を代表する史上最高のゴールキーパーの一人。
DF 2 T・スラクヴェリゼ 1982年のワールドカップに出場。
DF 3 B・ポズドニャコフ
DF 4 A・デミネンコ 1982年、1986年、1990年のワールドカップに出場。1970年代後半から1990年代前半のソ連を代表する左サイドバック。
DF 5 S・バルタチャ 1982年のワールドカップに出場。
MF 6 S・アレイニコフ 1986年、1990年のワールドカップに出場。後年J・リーグのガンバ大阪に選手として在籍する。
MF 7 S・ゴツマノフ
MF 8 H・リトフチェンコ ▼23分 1986年、1990年のワールドカップに出場。
MF 9 Y・ガブリロフ 1982年のワールドカップに出場。
FW 10 O・プロタソフ 1986年、1990年のワールドカップに出場。後年J・リーグのガンバ大阪に選手として在籍する。
FW 11 I・ベラノフ ▼74分 1986年のワールドカップに出場。1980年代から1990年代前半のソ連を代表するストライカー。1986年にバロンドール受賞。
MF 14 A・ジフマントヴィッチ △23分 1990年のワールドカップに出場。
FW 12 G・コンドラチェフ △74分 後年ベラルーシ代表監督に就任する。
監督 E・マロフェエフ 1966年のワールドカップに選手として出場。後年ベラルーシ代表監督に就任する。
試合結果
1985年6月5日 パルケン・スタジアム(コペンハーゲン)
デンマーク 4-2 ソ連
得点 P・エルケーア・ラーセン(デンマーク) 16分
P・エルケーア・ラーセン(デンマーク) 20分
O・プロタソフ(ソ連) 25分
M・ラウドルップ(デンマーク) 61分
M・ラウドルップ(デンマーク) 64分
S・ゴツマノフ(ソ連) 68分