1986FIFAワールドカップ欧州予選グループ1 ベルギーVSポーランド

ここまでの欧州予選グループ1

 1986年にメキシコで開催されるワールドカップ本大会出場権を巡って行われている欧州予選グループ1は、前回大会3位のポーランド、ベルギー、ギリシャ、アルバニアの4カ国が入り、1位が本大会出場権を獲得し、2位がプレーオフに回ることになる。そしてこのグループはポーランドとベルギーが有力視されていた。

 ベルギーはここまで2勝1敗1分の勝点5を挙げていたが、痛かったのはアウェーとはいえアルバニア戦に敗れて勝点を取りこぼしていたことだった。そのため直接のライバルとなるホームのポーランド戦は必勝を義務付けられていた。一方のポーランドは消化試合が少なく、1勝1分の勝点3でアウェーのベルギー戦を迎えることになった。ポーランドとしては引き分け以上の結果を収めれば、十分にグループ首位通過が見えてくることになる。

試合

 前回大会のワールドカップの2次リーグでも対戦しており、その時はボニエクのハットトリックでポーランドが快勝して準決勝進出への足掛かりとなった試合であった。ベルギーとしては、その時のリベンジも兼ねた負けられない重要な一戦となった。

 試合はホームのベルギーがボールをキープして攻め込み、ポーランドがカウンターで応酬する展開になり17分、中央でボールを受けたスモラレクがブンコルにボールを渡し、ブンコルが右サイドをオーバーラップしてきたパウラクにパスを出してそのままシュートを撃ったが枠を外してしまった。

 前半20分、ハーフェライン付近からヴァンデレイケンがポーランドペナルティエリア内にロングボールを送り、クーレマンスが合わせてシュートを撃ったがGKムイナルチクがセーブしてゴールならず。直後の右サイドからのCKをヴェルコーテレンがグルンにパスを出し、グルンがミドルシュートを撃ったがクロスバーを直撃して惜しくもゴールにはならなかった。

 そして前半30分、中央でボールを受けたクーレマンスがヴァンデンベルグに縦パスを出し、ヴァンデンベルグが左に横パスを出し、ヴェルコーテレンがシュートを撃ったところをコースを変えてポーランドゴールに押し込み、ホームのベルギーが先制点を挙げた。

 その後もベルギーペースで進み、40分にカウンターからヴェルコーテレンがヴァンデレイケンにボールを預けて駆け上がり、ヴァンデレイケンからボールを貰ってシュートを撃ったがGKムイナルチクにセーブされた。前半は1-0のベルギーリードで終了し、ハーフタイムに入っていった。

 後半に入ってもベルギーペースで進み47分、フォールデッカーズがポーランドゴール前にクロスを上げ、オフサイドラインを抜け出したクーレマンスがキープして折り返すがヴァンデンベルグには合わなかった。続く53分にファン・デル・エルストがゴール前に上げたクロスをヴェルコーテレンがポーランドDFと競り合いながらボールを奪い、シュートを撃つとポーランドゴールに突き刺さってベルギーが追加点を挙げた。

 2点をリードしたベルギーはその後もカウンターから度々チャンスを作り後半59分、右サイドからクーレマンスが個人技で突破してフォールデッカーズにパスを出し、そのこぼれたボールをヴェルコーテレンがミドルシュートを放つが枠を外れ、60分にはシーフォ、ヴェルコーテレン、プレサーズと繋いでゴール前に浮き球を上げ、シーフォがヘディングで狙うが枠を外してしまった。

 ここまでほとんどチャンスらしいチャンスがなかったポーランドは後半68分、右サイドのFKからのこぼれ球をコモルニッキがミドルシュートを放ち、GKムナロンが弾いたボールをブンコルが押し込みベルギーゴールを割ったが、無情にもオフサイドの判定でゴール無効となった。さらに73分に再びコモルニッキ、76分にはエース・ボニエクがそれぞれシュートを撃ったがいずれもGKムナロンにセーブされてゴールにはならなかった。

 その後はベルギーが交代枠を使いながら時間を進めていき、試合は2-0のままホームのベルギーが勝利を手にした。敗れたポーランドは4か月後のホーム・ベルギー戦は落とすことが出来なくなり、ここで本大会出場権の行方が決することになった。

その後の両国

 大一番を制したベルギーは、これで3勝1敗1分の勝点7で暫定首位に立ち、残すは最終戦のアウェー・ポーランド戦のみとなった。そのポーランドは、アウェー・ベルギー戦を落とした後は持ち直してアウェーのギリシャ戦とアルバニア戦を連勝し、3勝1敗1分の勝点7でベルギーと並び、得失点差も同じだったが総得点でベルギーを上回り、最終戦のホーム・ベルギー戦を前にポーランドが暫定で首位に立つことになった。

 そして最終戦はスコアレスのドローに終わり、その結果ポーランドが1位で予選グループを通過し、4大会連続の本大会出場を決めた。一方のベルギーは予選グループを2位で終えた為にプレーオフに回ることになり、本大会出場はお預けとなった。

余談

 ベルギーとポーランド、それにワールドカップの試合とは直接関係はないが、この試合が行われたヘイゼル・スタジアムは、4週間後の1985年5月29日にチャンピオンズカップ決勝のユヴェントス対リヴァプールが行われたスタジアムであった。試合開始前にイングランドのフーリガンが暴れまわり、死者39人を出したいわゆる「ヘイゼルの悲劇」の舞台になったスタジアムである。

 ここでは詳細は割愛するが、選手では唯一ポーランドのエース・ボニエクがユヴェントスの一員として出場しており、「ヘイゼルの悲劇」を目の当たりにしていた。

出場選手(ベルギー)

 GK 1 J・ムナロン

 DF 2 G・グルン                                                                                                                1986年、1990年、1994年のワールドカップに出場。1980年代から1990年代のベルギーを代表するディフェンダー。

 DF 3 F・ファン・デル・エルスト                                                                                                           1986年、1990年、1994年、1998年のワールドカップに出場。1980年代から1990年のベルギーを代表するディフェンダー。

 DF 4 G・プレサーズ                                                                                                                  1982年のワールドカップに出場。

 DF 5 M・レンカン                                                                                                                                     1982年、1986年のワールドカップに出場。

 MF 6 F・ヴェルコーテレン ▼80分                                                                                                   1982年、1986年のワールドカップに出場。1970年代から1980年代のベルギーを代表するウインガー。後年ベルギー代表監督に就任する。

 MF 7 R・ヴァンデレイケン                                                                                                                           1986年のワールドカップに出場。後年ベルギー代表監督に就任する。

 MF 8 E・シーフォ ▼83分                                                                                                         1986年、1990年、1994年、1998年のワールドカップに出場。1980年代から1990年代のベルギーを代表する史上最高の選手の一人であり、欧州を代表するプレーメーカーの一人。

 MF 10 E・フォールデッカーズ

 FW 9 E・ヴァンデンベルグ                                                                                                            1982年、1986年のワールドカップに出場。

 FW 11 J・クーレマンス Ⓒ                                                                                                                   1982年、1986年、1990年のワールドカップに出場。1970年代から1980年代のベルギーを代表する史上最高の選手の一人。

 FW 15 R・モメンス △80分                                                                                                                                                          1982年、1986年のワールドカップに出場。

 MF 14 L・クライステルス △83分                                                                                                                                                                  1986年、1990年のワールドカップに出場。元テニスプレーヤーで全豪・全米オープン優勝のキム・クライステルスは娘である。

 監督 G・タイス                                                                                                                                                                                                           ベルギーを代表する史上最高の監督。1982年、1986年、1990年のワールドカップに監督として出場し、1986年は4位入賞。

出場選手(ポーランド)

 GK 1 J・ムイナルチク                                                                                                            1982年、1986年のワールドカップに出場。

 DF 2 K・パウラク                                                                                                             1986年のワールドカップに出場。後年ポーランド代表監督に就任する。

 DF 3 V・ズムダ Ⓒ                                                                                                                     1974年、1978年、1982年、1986年のワールドカップに出場。1970年代から1980年代のポーランドを代表するディフェンダー。

 DF 4 M・オトロフスキー                                                                                                                                      1986年のワールドカップに出場。

 DF 5 R・ヴォイチツキ                                                                                                                                                                                     1978年、1982年、1986年のワールドカップに出場。

 MF 6 W・マティシク                                                                                                                      1982年、1986年のワールドカップに出場。

 MF 7 A・ブンコル                                                                                                                           1982年、1986年のワールドカップに出場。

 MF 8 J・ヤウォチャ ▼46分                                                                                                                                                        1982年のワールドカップに出場。

 MF 9 Z・ボニエク                                                                                                                                                  1978年、1982年、1986年のワールドカップに出場。1970年代から1980年代のポーランドを代表する史上最高の選手の一人であり、欧州を代表する史上最高の選手の一人。後年ポーランド代表監督に就任する。

 FW 10 D・ジェカノフスキー ▼65分                                                                                                   1986年のワールドカップに出場。

 FW 11 W・スモラレク                                                                                                                          1982年、1986年のワールドカップに出場。元ポーランド代表のエウゼビウス・スモラレクは息子である。

 MF 13 R・コモルニッキ △46分                                                                                              1986年のワールドカップに出場。

 MF 14 A・パワシュ △65分                                                                                                     1982年、1986年のワールドカップに出場。

 監督 A・ピエチニチェク                                                                                                                         ポーランドを代表する名将の一人。1982年、1986年のワールドカップに監督として出場し、1982年は3位入賞。

試合結果

1985年5月1日 ヘイゼル・スタジアム(ブリュッセル)

   ベルギー 2-0 ポーランド

得点 E・ヴァンデンベルグ(ベルギー) 30分

   F・ヴェルコーテレン(ベルギー) 53分

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