大会概要と予選グループ3
1982年のワールドカップが終わり、欧州は次なるビッグトーナメント2年後のEURO1984フランス大会の本大会出場権の獲得を巡る予選にシフトチェンジしていた。出場権は各グループの1位のみが出場権を獲得し、フランスで行われる本大会に出場出来ることになっていた。
グループ3に入ったのが、ワールドカップにも出場したイングランドとハンガリー、2大会連続出場を目指すギリシャ、そしてデンマークとルクセンブルクの5カ国で出場権を争うことになる。下馬評は本命イングランドに対抗ハンガリーで、ギリシャとデンマークは基本的にはルクセンブルクと共にアウトサイダーであった。
そしてグループ3の初戦でデンマークとイングランドが対戦することになり、イングランド代表監督に就任したロブソン監督のデビュー戦となった。
試合
試合はアウェーのイングランドがボールをキープして攻め込み、6分にマリナーがミドルシュートを撃ってチャンスを掴んでいった。前半8分、後方からのロングボールをマリナーが競り合い、ロブソンが折り返したボールをリックスがシュートを撃ち、こぼれ球をフランシスがデンマークゴールに押し込んでイングランドが早くも先制点を挙げた。
さらに21分に中央でボールを受けたフランシスが左サイドのサンソムにパスを出し、サンソムが折り返してマリナーがシュートを撃ったが枠を外してしまい追加点とはならなかった。ホームのデンマークは35分過ぎからボールを前に運べるようになり、イングラドペナルティエリア内でバストルップがヒールパスでオルセンにボールを渡し、オルセンがシュートを撃ったが枠を外れてしまった。
前半37分と43分には後方からの裏を狙ったロングボールをエルケーア・ラーセンが、イングランドDFと競り合いながらシュートを撃ったが、いずれも枠を外してしまいゴールにはならなかった。前半はこのまま終了し、1-0のイングランドリードで折り返しを迎えることになった。
後半に入っても、前半の終盤でペースを握ったデンマークペースで進み、46分に左サイドからオルセンがカットインしてバストルップにパスを出し、バストルップがそのままシュートを撃ったが枠を外してしまう。50分には後方からのロングボールに反応したエルケーア・ラーセンがイングランドペナルティエリア内でGKシルトンに倒されたがPKにはならなかった。これに怒ったデンマークサポーターがGKシルトンが守るゴールに発煙筒を投げ入れ、ゲームが一時止まってしまった。
そして後半68分、ペナルティエリア内でバストルップが切り返したところをオスマンが倒し、このこぼれ球をとりに行ったオルセンを再びオスマンが倒してデンマークがPKを獲得した。これをハンセンが決めてデンマークが同点に追いついた。その後もデンマークが攻め込み78分にバスクのロングフィードを右サイドで受けたオルセンがエルケーア・ラーセンに渡し、エルケーア・ラーセンがDFを1人かわしてシュートを撃ったがGKシルトンが好セーブして得点にはならなかった。
すると後半80分、イングランドが左サイドのCKからウィルキンスがデンマークゴール前に上げ、これをフランシスが押し込んでイングランドが再び勝ち越しに成功した。再びリードを許したデンマークは、直後にエルケーア・ラーセンがシュートを撃ったがGKシルトンにセーブされゴールにならなかった。
このままイングランドが逃げ切るかと思われた試合終了間際の後半89分、ペナルティエリア外中央でボールを受けたオルセンが、自らペナルティエリア内に持ち込んでシュートを決めて土壇場でデンマークが同点に追いついた。そして試合は2-2で終了し、デンマークが劇的な同点弾で勝点1を分け合うことになった。
試合終了後のスタジアム内では、この時代恒例のイングランドサポーターが暴れまわってデンマークサポーターと衝突し、あちこちで乱闘劇が繰り広げられていた。
その後の両国
ホーム・イングランド戦を劇的な同点弾でスタートしたデンマークは、その後も好調を維持してアウェーでイングランドを破り、大方の予想を覆してデンマークが1位で予選グループを終了して、フランスで行われる本大会の出場権を獲得した。本大会でもM・オルセンを中止とした堅守から、シモンセン、エルケーア・ラーセン、ラウドルップのカウンター戦法で旋風を巻き起こすことになる。
アウェーのデンマーク戦で勝ち試合を引き分けに持ち込まれたイングランドはまずまずのスタートを切ったが、ホームのギリシャ戦を引き分け、デンマーク戦はまさかの敗戦を喫してしまい、デンマークに勝点1及ばず予選敗退となってしまった。ロブソン監督は辞任を表明していたが、慰留されて撤回し、1986年のワールドカップ本大会出場に向けて欧州予選に臨むことになる。
出場選手(デンマーク)
GK 1 T・ラスムッセン 1984年、1988年のEUROに出場。
DF 2 I・ニールセン 1984年、1988年のEUROに出場。
DF 3 S・バスク 1984年、1988年のEUROに出場。
DF 4 P・レントヴェド Ⓒ
DF 5 O・ラスムッセン 1984年のEUROに出場。
MF 6 S・レアビー 1984年、1988年のEUROに出場。
MF 7 J・J・ベルテルセン 1984年のEUROに出場。
MF 8 J・オルセン 1984年、1988年のEUROに出場。
MF 9 ハンセン
FW 10 P・エルケーア・ラーセン 1984年、1988年のEUROに出場。1970年代後半から1980年代のデンマークを代表する史上最高のストライカーの一人であり、欧州を代表するストライカーの一人。
FW 11 L・バストルップ
監督 S・ピオンテック ドイツ人でデンマークを代表する史上最高の監督。1984年、1988年のEUROに監督として出場し、1984年はベスト4に導いている。
出場選手(イングランド)
GK 1 P・シルトン 1980年、1988年のEUROに出場。1970年代から1990年代前半のイングランドを代表する史上最高のゴールキーパーの一人であり、欧州を代表する史上最高のゴールキーパーの一人。
DF 2 P・ニール 1980年のEUROに出場。1970年代から1980年代のイングランドを代表するサイドバック。
DF 3 K・サンソム 1980年、1988年のEUROに出場。
DF 4 R・ウィルキンス Ⓒ 1980年のEUROに出場。
DF 5 オスマン
DF 6 T・ブッチャー
MF 7 T・モーリー ▼83分
MF 8 B・ロブソン 1988年のEUROに出場。1970年代後半から1990年代前半のイングランドを代表するミッドフィルダー。
MF 11 G・リックス
FW 9 P・マリナー 1980年のEUROに出場。
FW 10 T・フランシス
MF 15 R・ヒル
監督 B・ロブソン イングランドを代表する史上最高の監督の一人。1988年のEUROに監督として出場。後年ポルトガルのスポルティング・リスボンの監督時代の通訳が、のちに世界的名将となるJ・モウリーニョである。
試合結果
1982年9月22日 イドラツパルケン(コペンハーゲン)
デンマーク 2-2 イングランド
得点 T・フランシス(イングランド) 8分
ハンセン(デンマーク) 68分
T・フランシス(イングランド) 82分
J・オルセン(デンマーク) 89分