ここまでの予選グループ7
1996年イングランドで開催されるEURO本大会出場権をかけて行われている予選グループは、各組1位と2位の内上位6カ国と残り2カ国でプレーオフを行い勝ったチームの合計15カ国に、開催国のイングランドを加えた16カ国に出場権が与えらる。その予選グループ7でともに本命視されているのが両国であり、前年の1994年ワールドカップ準々決勝でも死闘を演じた因縁の対決はEURO予選中盤のハイライトとなった。
このグループ7で実力的に飛び抜けている両国は実質的に2位以上は固いため、焦点は両国の1位争いに絞られていた。ブルガリアはここまで5戦全勝のパーフェクトな成績で1位を快走しており、絶好調な状態でホームにドイツを迎えることになった。
一方のドイツは、ワールドカップ準々決勝敗退の後遺症もあり低調な内容が続いていたが、格下相手ということもあり4勝1分でグループ2位につけていた。チームに自信を植え付けるためにもアウェーとはいえ、再度ブルガリアの軍門に下るわけにはいかない一戦となった。
試合
試合はリベンジに燃えるドイツが攻め込み前半5分、オフサイドラインを抜け出したバスラーがGKミハイロフと1対1になり、コースを狙ってシュートを撃ったが枠を外してゴールはならなかった。直後の7分、今度はブルガリアがチャンスを掴みペナルティエリア外やや左寄りのFKをストイチコフが豪快にシュートを撃ったがGKケプケが防いでゴールにはならなかった。
そして前半17分、ブルガリアゴールキックをバスラーが中盤でカットしてヘスラーとのワンツーで抜け出し、ゴール前のクリンスマンに合わせてドイツが先制点を挙げた。先制されたブルガリアは反撃に転じて24分、ペネフがオフサイドラインを抜け出してシュートを撃ち、ゴールにはならなかったがCKを獲得した。そしてCKのこぼれ球を拾ったストイチコフが豪快にミドルシュートを撃ったがポストを直撃して惜しくもゴールならず。
その後もレチコフのクロスからクレメンリエフが、さらにレチコフのスルーパスを受けたペネフがそれぞれシュートを撃ったが、いずれもゴールにはならなかった。ブルガリアがチャンスを外し続けて迎えた前半43分、バスラーのロングスローをヘーリッヒが頭でそらしてクリンスマンに渡り、クリンスマンがワンタッチでシュトルンツにパスを出して撃ったシュートがブルガリアゴールに突き刺さってドイツが追加点を挙げた。
前半終了間際に貴重な追加点を挙げたドイツだったが、アディショナルタイムの46分に右サイドでボールを受けたペネフが走り込んできたバラコフにパスを出し、そのままドイツペナルティエリア内に侵入したところをシュトルンツに倒されてPKを獲得した。このPKをストイチコフが落ち着いて決めてブルガリアが1点を返して前半が終了したが、ドイツにとっては悔やまれる失点となってしまった。
後半に入りしばらくは膠着状態が続いていったが、後半65分にブルガリアが自陣エリアからバラコフのロングフィードに反応したコスタディノフが抜け出し、ドイツペナルティエリア内に侵入したところをヘルマーに倒されて、またしてもPKを獲得した。これを再びストイチコフが決めてブルガリアが同点に追いついた。
勢いづいたブルガリアはその5分後の後半70分、ドイツペナルティエリア内での混戦からコスタディノフがボールを拾ってシュートを放つと、そのままドイツゴールに吸い込まれていきブルガリアが逆転に成功した。
自らのDFのミスから逆転されたドイツは、その後猛攻を仕掛けていきシュトルンツ、バスラーのミドルシュートやクリンスマンのボレーシュートなどでチャンスを作ったが、遂に同点に追いつくことは出来ずに試合はこのまま3-2で終了し、ドイツは再びブルガリアに屈してしまいリベンジとはならなかった。
その後の両国
ドイツを返り討ちにした格好となったブルガリアは、これで予選6戦全勝となりほぼ予選通過を確実なものとした。しかし、その後はやや調子を落とし、予選最終戦のアウェー・ドイツ戦では敗戦を喫して2位に順位を下げたが、見事本大会出場権を獲得するに至った。
「ワールドカップの悪夢再び」と、いった感じでまたしてもブルガリアに痛恨の逆転負けを喫したドイツは、予選4勝1敗1分で首位ブルガリアに水をあけられてしまった。しかし、以降は調子を上げていき予選最終戦でブルガリアをホームに迎え撃って、遂に3-1で天敵ブルガリアを下して逆転1位で予選を通過し、本大会出場権を獲得した。
出場選手(ブルガリア)
GK 1 B・ミハイロフ Ⓒ 1996年のEUROに出場。
DF 2 E・クレメンリエフ 1996年のEUROに出場。
DF 3 T・イヴァノフ 1996年のEUROに出場。
DF 4 T・ツヴェタノフ 1996年のEUROに出場。
DF 5 P・フブチェフ 1996年のEUROに出場。後にブルガリア代表監督に就任する。
MF 6 Z・ヤンコフ 1996年のEUROに出場。
MF 7 I・ヨルダノフ ▼62分 1996年のEUROに出場。
MF 10 K・バラコフ 1996年のEUROに出場。1980年代後半から2000年代前半のブルガリアを代表するミッドフィルダー。後にブルガリア代表監督に就任する。
MF 11 Y・レチコフ ▼80分 1996年のEUROに出場。1980年代後半から1990年代のブルガリアを代表するミッドフィルダー。
FW 8 H・ストイチコフ 1996年のEUROに出場。1980年代後半から1990年代のブルガリアを代表する史上最高の選手。1994年にバロンドール受賞。後年ブルガリア代表監督に就任。後にJ・リーグの柏レイソルに選手として在籍し、Jリーガーで唯一のバロンドーラー。
FW 9 L・ペネフ 1996年のワールドカップに出場。1980年代後半から1990年代のブルガリアを代表するアタッカー。後にブルガリア代表監督に就任する。
FW 15 E・コスタディノフ △62分 1996年のEUROに出場。1980年代後半から1990年代のブルガリアを代表するアタッカー。
MF 14 N・シラコフ △80分 1996年のEUROに出場。
監督 D・ペネフ ブルガリアを代表する名将。1996年のEUROに監督として出場。
出場選手(ドイツ)
GK 1 A・ケプケ 1996年のEUROに出場。
DF 2 S・ロイター 1992年、1996年のEUROに出場。
DF 3 T・シュトルンツ ▼90分 1996年のEUROに出場。
DF 4 M・バベル 1992年、1996年のEUROに出場。
DF 5 T・ヘルマー 1996年のEUROに出場。
DF 6 M・ザマー 1992年、1996年のEUROに出場。1990年代のドイツを代表する名リベロ。1996年にバロンドール受賞。
MF 7 D・アイルツ 1996年のEUROに出場。
MF 8 M・バスラー ▼80分 1996年のEUROに出場。
MF 10 T・ヘスラー 1992年、1996年、2000年のEUROに出場。1980年代後半から1990年代のドイツを代表するオフェンシブミッドフィルダー。
FW 9 J・クリンスマン Ⓒ 1988年、1992年、1996年のEUROに出場。1980年代後半から1990年代のドイツを代表するストライカー。後にドイツ代表監督に就任する。
FW 11 H・ヘーリッヒ
MF 15 A・メラー △80分 1992年、1996年のEUROに出場。1990年代のドイツを代表するオフェンシブミッドフィルダー。
FW 13 U・キルステン △90分 2000年のEUROに出場。
監督 H・フォクツ 1960年代後半から1970年代のドイツを代表する名ディフェンダー。1972年、1976年のEUROに選手として出場し、1972年は優勝に貢献。1992年、1996年のEUROに監督として出場し、1996年は優勝に導いている。
試合結果
ブルガリア 3-2 ドイツ
得点 J・クリンスマン(ドイツ) 17分
T・シュトルンツ(ドイツ) 43分
H・ストイチコフ(ブルガリア) 45分+1分
H・ストイチコフ(ブルガリア) 65分
E・コスタディノフ(ブルガリア) 70分