両国の勝ち上がり状況
ブラジルがグループBを2勝1分で1位通過し、決勝トーナメント1回戦では開催国のアメリカにレオナルドの退場もあって苦戦するもベベートのゴールで振り切りベスト8に進出した。オランダはグループFで3チームが2勝1敗で並ぶが総得点と直接対決の結果で1位通過を決め、決勝トーナメント1回戦ではアイルランドを2-0で下しベスト8に進出した。
試合
前半はお互いに慎重な立ち上がりで中盤の潰しあいが多く、ほとんど見どころの少ない展開になってしまった。すると後半開始間もなくの52分、アウダイールの自陣からのロングフィードをベベートがオフサイドラインをかいくぐって抜け出し、ゴール前に折り返したボールをロマーリオが合わせてブラジルが先制した。勢いにのるブラジルはその後もベベート、ロマーリオが立て続けにオランダゴールを脅かし、迎えた63分、ゴールキックのルーズボールにいち早く反応したベベートがボールを拾い、そのまま持ち込んでゴールキーパーもかわしてゴールに流し込み追加点を挙げた。ゴール後には自身の子供誕生を祝うゆりかごダンスを披露した。
2点をリードされたオランダだったが、1分後にスローインからベルカンプが持ち込んでそのままゴールに叩き込み反撃の狼煙を上げる。ブラジルディフェンスの一瞬の隙をついたゴールだった。今度はオランダが勢いにのって迎えた76分、コーナーキックからヴィンターがヘディングシュートを決めて試合を振り出しに戻した。
前半とは打って変わった後半の点の取り合いは大いに盛り上がり、最後に決着をつけたのはブラジルだった。81分にブランコが得たFKを自らゴールに蹴り込み再度勝ち越し点を挙げた。その後はオランダの反撃を抑えて3-2で試合終了。激しい点の取り合いを制したブラジルがベスト4に進出した。
その後の両国
この後ブラジルは準決勝でスウェーデン、決勝でイタリアを破って通算4度目の優勝に輝くことになる。今大会のブラジルは圧倒的な強さはなかったが、何より守備を重視したバランスは他チームより一枚上手だった。また今大会出場こそなかったが当時若干17歳のロナウドもメンバーに選ばれていた。この大会以降はロナウドがブラジルのエースとして引っ張ていくことになる。
一方、オランダはフリット(辞退)、ファン・バステン(故障)の2巨人が欠場したため4年前ほど優勝候補には上がっていなかった。2巨人に加えライカールト、クーマンなどEURO88の優勝メンバーはこの大会で代表を去り、今後はベルカンプやオーフェルマルス、アヤックス勢の若手が引っ張ていくことになる。またこの両国は4年後のフランス大会でも準決勝で激突することになる。
出場選手(オランダ)
GK 1 E・デ・フーイ 1994年のワルードカップに出場。
DF 4 R・クーマン Ⓒ 1990年、1994年のワルードカップに出場。1980年代から1990年代前半のオランダを代表する名リベロ。現オランダ代表監督。
DF 18 S・ファルクス 1994年のワルードカップに出場。
DF 6 J・ボウタース 1990年、1994年のワルードカップに出場。
DF 20 A・ヴィンター 1990年、1994年、1998年のワルードカップに出場。
MF 3 F・ライカールト ▼64分 1990年、1994年のワルードカップに出場。1980年代から1990年代前半のオランダを代表するオールラウンドミッドフィルダー。後にオランダ代表監督に就任。バルセロナの監督時代にメッシをプロデビューさせている。
MF 8 W・ヨンク 1994年、1998年のワルードカップに出場。
MF 5 R・ビツィヘ 1990年、1994年のワルードカップに出場。
MF 7 M・オーフェルマルス 1994年、1998年のワルードカップに出場。1990年代から2000年代前半のオランダを代表する名ウインガー。
FW 10 D・ベルカンプ 1994年、1998年のワルードカップに出場。1990年代から2000年代前半のオランダを代表するスタープレヤー。
FW 19 P・ファン・ホッセン ▼54分 1994年のワルードカップに出場。
FW 11 B・ロイ △54分 1994年のワルードカップに出場。
FW 9 R・デ・ブール △64分 1994年、1998年のワルードカップに出場。
監督 D・アドフォカート 1994年のワルードカップに監督として出場。
出場選手(ブラジル)
GK 1 C・タファレル 1990年、1994年、1998年のワルードカップに出場。
DF 2 ジョルジーニョ 1990年、1994年のワルードカップに出場。1980年代から1990年代のブラジルを代表する右サイドバック。後年J・リーグの鹿島アントラーズに選手と監督として在籍。
DF 15 マルシオ・サントス 1994年のワルードカップに出場。
DF 13 アウダイール 1994年、1998年のワルードカップに出場。
DF 6 ブランコ ▼90分 1986年、1990年、1994年のワルードカップに出場。1980年代から1990年代前半のブラジルを代表する左サイドバック。
MF 17 マジーニョ ▼80分 1994年のワルードカップに出場。スペイン代表のチアゴ・アルカンタラは息子である。
MF 8 ドゥンガ Ⓒ 1990年、1994年、1998年のワルードカップに出場。1980年代から1990年代のブラジルを代表するディフェンシブミッドフィルダー。後にブラジル代表監督に就任し、2010年のワルードカップに監督として出場。後年J・リーグのジュピロ磐田に選手として在籍。
MF 5 マウロ・シウバ 1994年のワルードカップに出場。1990年代から2000年代前半のブラジルを代表するディフェンシブミッドフィルダー。
MF 9 ジーニョ 1994年のワルードカップに出場。後年J・リーグの横浜フリューゲルスに選手として在籍。
FW 11 ロマーリオ 1990年、1994年のワルードカップに出場。1980年代後半から1990年代のブラジルを代表する史上最高の選手の一人。
FW 7 ベベート 1990年、1994年、1998年のワルードカップに出場。1980年代後半から1990年代のブラジルを代表するストライカー。この大会で披露したゆりかごダンスは現在でも子供が誕生した選手がパフォーマンスしている。後年J・リーグの鹿島アントラーズに選手として在籍。
MF 10 ライー △80 1994年のワルードカップに出場。本来は代表チームのキャプテンであったが、大会前から不調に陥り大会中にドゥンガにキャプテンの座を奪われた。実兄は1970年代後半から1980年代のブラジルを代表する名選手ソクラテスである。
DF 14 カフー △90 1994年、1998年、2002年、2006年のワルードカップに出場。1990年代から2000年代のブラジルを代表する史上最高の右サイドバック。ワールドカップの決勝に3度出場した唯一の選手。
監督 C・パレイラ 1994年、2006年のワルードカップに監督として出場し、1994年は優勝に導いている。
試合結果
オランダ 2-3 ブラジル
得点 ロマーリオ(ブラジル) 52分
ベベート(ブラジル) 63分
D・ベルカンプ(オランダ) 64分
A・ヴィンター(オランダ) 76分
ブランコ(ブラジル) 81分