両国のここまでのグループD
両国が入ったグループDには他にオランダとラトヴィアが入り、最激戦区の死のグループとなっていた。両国の対戦はグループリーグ最終戦に組み込まれており、チェコは初戦のラトヴィア戦を2-1で、2戦目のオランダ戦を歴史に残る名勝負で3-2の逆転勝利で2連勝し、最終戦のドイツ戦を残して早々にグループ1位で通過を決めていた。
ドイツは初戦のオランダ戦、2戦目のラトヴィア戦をともに引き分けて勝点2のグループ2位につけていた。誤算だったのは勝点3を目論んでいたラトヴィア戦を引き分けたことによって、チェコ戦は必勝を義務付けられることになったことだった。ただ、チェコがグループリーグ通過を決めていたために主力を休ませたことで、ドイツには十分にチャンスがあった。
こうして準々決勝進出の残る1枠をドイツと同時刻開催のオランダ対ラトヴィアの3カ国で争うことになった。
試合
試合は勝利以外突破の可能性が低いドイツが積極的に攻め込んでいくが、4分に左サイドでFKを得たチェコはハインツがクロスを上げ、ロクヴェンツがそらしてイラーネクの前に転がったがGKカーンがキャッチしてゴールにはならなかった。ドイツも反撃し19分にクラニーのポストプレーからバラックがミドルシュートを撃ったがチェコDFに阻まれてしまった。
そして前半21分、ドイツCKの流れからチェコがカウンターに移ろうとしたところをラームがカットし、そのままペナルティエリア内に折り返したボールをシュバインシュタイガーがワンタッチでバラックに渡し、これをバラックが左足ボレーでゴールに突き刺してドイツが待望の先制点を挙げた。
その後もドイツが攻め込みシュナイダー、クラニーがシュートを放ったが追加点にはならなかった。すると前半29分、ハインツがドリブルで仕掛けてドイツ陣内ペナルティエリア外やや右の位置でラームに引っ掛けられてFKを獲得した。これをハインツ自身が直接ゴールに突き刺してチェコが同点に追いついた。
ドイツにとっては痛い失点だったが、これはハインツの見事なゴールを褒めるしかなかった。前半はこのまま1-1で終了しハーフタイムに入っていった。
後半に入り、再び勝ち越しを目指して攻め込むドイツだが後半開始早々の46分、ドイツが自陣エリアからビルドアップしようとしたボールをブラシルがカットしてドイツゴール前にクロスを上げ、ロクベンツが合わせてシュートを撃ったが、これはGKカーンが好セーブしてゴールはならなかった。
ヒヤリとしたドイツだったが、ここから猛攻を仕掛けていき、52分にシュナイダー、シュバインシュタイガーがそれぞれミドルシュートを放ち、56分には左サイドからラームの折り返しをバラックがシュート、さらに63分には再びバラックがミドルシュートを撃ったがいずれもゴールを割ることは出来なかった。
そしてドイツの最大の決定的チャンスが後半65分、左サイドを突破したラームがペナルティエリア内のバラックに折り返し、バラックがチェコDFを1人かわして撃ったシュートは、惜しくもポスト弾いてしまう。さらにポストに跳ね返ったボールをシュナイダーがシュートを撃ったがこれはGKブラジェクが好セーブしてゴールはならなかった。
ドイツの猛攻に防戦一方だったチェコは後半77分、ドイツディフェンスの一瞬の隙をついてカウンターを仕掛け、ハインツが交代出場していたバロシュにスルーパスを出し、バロシュが撃ったシュートは一度はGKカーンが防いだが、跳ね返ったボールが再びバロシュの前に転がり、これをバロシュが落ち着いてドイツゴールに押し込んでチェコが勝ち越しのゴールを挙げた。
再三の猛攻も得点に結びつかず、一発のカウンターにしてやられたドイツは気落ちしてしまい、その後は反撃する力も弱まり試合は2-1のまま終了してチェコの勝利となった。同時刻開催のオランダ対ラトヴィア戦はオランダが3-0で勝利し、ドイツは2大会連続でグループリーグ敗退となった。
その後の両国
死の組と言われたグループDを予想外の3戦全勝で突破したチェコは、一躍優勝候補に躍り出て準々決勝でもデンマークを3-0で一蹴して準決勝に進出した。相手はディフェンディングチャンピオンのフランスを破って進出してきたダークホースのギリシャ。前評判は圧倒的にチェコだったが、前半で大黒柱のネドヴェドがケガで交代するなどギリシャゴールを割ることが出来ずに、延長戦の末に1-0で敗れてしまいベスト4で大会に別れを告げることになった。
一方、チェコの主力温存の恩恵があったにもかかわらず敗れたドイツは、2分1敗で2大会連続のグループリーグ敗退という屈辱に終わった。ただ4年前の大惨敗と違って若手の活躍や成長もあり、2年後の自国開催ワールドカップに向けてそれなりに収穫もあった大会でもあった。それでもフェラー監督はこの成績の責任をとって辞任し、新監督にはクリンスマンが就任した。
ピックアップコーチ ルディ・フェラー
現役時代は西ドイツ代表として活躍し、1990年のワールドカップでも優勝に貢献したストライカーだったフェラーは、2000年のEUROで大惨敗したリベック監督の後任としてドイツ代表監督に就任した。当時のドイツ代表は若手も育たず低迷しており、内外からも批判が殺到していた時期だった。
しかし、フェラー監督は2002年日韓ワールドカップでチームを準優勝に導き、また今大会でもクローゼ(2002年日韓大会)、ラーム、シュバインシュタイガー、ポドルスキーなど、後のドイツ代表の屋台骨となる若手を抜擢して国際舞台にデビューさせている。今大会は不本意な成績に終わり辞任に至ったが、ドイツ代表が混乱している時期に就任し、多くの優秀な若手を国際舞台にデビューさせ、後の常勝ドイツ代表の礎を築いた功績は見事だった。
出場選手(ドイツ)
GK 1 O・カーン Ⓒ 2000年、2004年のEUROに出場。1990年代から2000年代のドイツを代表する史上最高のゴールキーパーの一人。
DF 3 A・フリードリヒ 2004年、2008年のEUROに出場。
DF 5 J・ノヴォトニー 2000年、2004年のEUROに出場。
DF 4 C・ヴェアンス 1992年、2004年のEUROに出場。
MF 22 T・フリングス ▼46分 2004年、2008年のEUROに出場。
MF 8 D・ハマン ▼79分 2000年、2004年のEUROに出場。
MF 21 F・ラーム 2004年、2008年、2012年のEUROに出場。2000年代から2010年代のドイツを代表するサイドバック。
MF 19 B・シュナイダー 2004年のEUROに出場。
MF 13 M・バラック 2000年、2004年、2008年のEUROに出場。2000年代のドイツを代表するオールラウンドミッドフィルダー。
MF 7 B・シュバインシュタイガー ▼86分 2004年、2008年、2012年、2016年のEUROに出場。2000年代から2010年代のミッドフィルダー。
FW 10 K・クラニー 2004年、2008年のEUROに出場。
FW 20 L・ポドルスキー △46分 2004年、2008年、2012年、2016年のEUROに出場。2000年代から2010年代のドイツを代表するアタッカー。後にJ・リーグのヴィッセル神戸に選手として在籍。
FW 11 M・クローゼ △79分 2004年、2008年、2012年のEUROに出場。2000年代から2010年代前半のドイツを代表するストライカー。
MF 16 J・イェレミース △86分 2000年、2004年のEUROに出場。
監督 R・フェラー 1980年代から1990年代前半のドイツを代表するストライカー。1984年、1988年、1992年のEUROに選手として出場し、2004年のEUROに監督として出場。
出場選手(チェコ)
GK 16 J・ブラジェク 2004年のEUROに出場。
DF 13 M・ジラネク 2004年のEUROに出場。
DF 5 R・ボルフ 2004年のEUROに出場。
DF 22 D・ロゼフナル 2004年、2008年のEUROに出場。
MF 3 P・マレシュ 2004年のEUROに出場。
MF 4 T・ガラセク Ⓒ ▼46分 2004年、2008年のEUROに出場。
MF 20 J・プラシル ▼70分 2004年、2008年、2012年、2016年のEUROに出場。
MF 18 M・ハインツ 2004年のEUROに出場。
MF 14 S・ヴァチョウシェク 2004年のEUROに出場。
FW 12 V・ロクヴェンツ ▼59分 2000年、2004年のEUROに出場。
DF 17 T・ヒューブシュマン △46分 2004年、2012年のEUROに出場。
FW 15 M・バロシュ △59分 2004年、2008年、2012年のEUROに出場し、2004年は得点王。2000年代から2010年代のチェコを代表するアタッカー。
MF 8 K・ポボルスキー △70分 1996年、2000年、2004年のEUROに出場。1990年代後半から2000年代前半のチェコを代表するオフェンシブミッドフィルダー。
監督 K・ブリュックナー チェコを代表する名将。2004年、2008年のEUROに監督として出場し、2004年はベスト4に導いている。
試合結果
ドイツ 1-2 チェコ
得点 M・バラック(ドイツ) 21分
M・ハインツ(チェコ) 29分
M・バロシュ(チェコ) 77分