両国の勝ち上がり
フランスは死の組グループDに入り、2勝1敗の2位で通過した。準々決勝でスペインを2-1で下し、準決勝ではポルトガルを延長戦のジダンのPKで2-1と競り勝ち決勝に進出してきた。イタリアは開催共催国のベルギーがいるグループBに入り、3戦全勝で1位通過した。準々決勝ではルーマニアを2-0で下し、準決勝ではもう一つの開催国オランダをスコアレスのPK戦の末に競り勝って決勝に進出してきた。
両国は2年前のフランスワルードカップの準々決勝でも対戦しており、その時はスコアレスのPK戦でフランスがイタリアを下して、そのまま頂点まで勝ち上がりワールドカップを制している。またフランスのメンバーのほとんどが、当時世界最高峰のイタリアリーグ・セリエAに所属しており、お互い手の内を知り尽くした者同士の顔合わせとなった。
試合
試合は両チーム互角の攻防で始まり、意外にもイタリアもボールをキープしてフランス陣内に攻め込んでいた。前半はほぼこのままのペースで流れていき、38分にフランスが一度だけ絶好機を迎えていた。デシャンが自陣からのロングフィードで左サイドのアンリへパスを通し、アンリが中央へ切り込んでペナルティエリア内のジョルカエフへパスを出し、ジョルカエフがシュートを撃ったがGKトルドに防がれた。結局前半は0-0で終了した。
後半も同じ展開で進んでいった55分、イタリアが左サイドのCKからショートコーナーの流れでトッティがキープしてフランスDFを2人引き付けて、裏を走り込んだペソットにヒールパスを出し、ペソットがゴール前にパスを出してデルヴェッキオが押し込みイタリアが先制点を挙げた。
先制されたフランスはギアを上げて攻め込んでいくが、鉄壁のイタリアディフェンスをなかなか崩せず、逆にトッティ、デル・ピエロ、デルヴェッキオの3人からカウンターを仕掛けられて度々ピンチを招いてしまう。
試合時間残り10分を切った段階では、イタリアは逃げ切りに入っておりフランスは猛攻撃を仕掛けるがゴールを割ることが出来ない。90分にはヴィエラが自陣からのロングフィードでトレゼゲにパスを通し、シュートを撃つがGKトルドに防がれて万事休す。もはやイタリアの優勝は揺るぎないものと思われた後半アディショナルタイムの93分に奇跡が起きる。
フランス自陣エリアからのFKをGKバルテズがイタリア陣内にロングボールを送り込み、トレゼゲが頭ですらしたボールをヴィルトールが拾い、そのままシュートしたボールはイタリアゴールに吸い込まれていった。目の前で同点ゴールを見せつけられたマルディーニは頭を抱え、落胆するイタリア陣営を尻目に、土壇場で追いついたフランスは勢いにのって延長戦へと突入していった。
延長前半、フランスが勢いのままに攻め込み迎えた113分、左サイドでボールを奪ったピレスがドリブルで持ち込みゴール前のトレゼゲに合わせてパスを出し、これをトレゼゲがゴールに蹴り込んで決着をつけた。今大会はゴールデンゴール方式によりこれで試合は終了し、フランスが16年振り2度目のEUROを制覇し、同時にワールドカップとEUROの連覇を達成した。
その後の両国
フランスはワールドカップとEUROのビッグトーナメントを連覇して世界最強の名を欲しいままにし黄金時代に突入していった。この大会を最後に主将デシャンと名リベロブランは代表引退したが、次代は育っており、何よりエースジダンが健在だった為、しばらくは黄金時代が続くと思われた。
一方、土壇場で優勝をさらわれたイタリアはゾフ監督が辞任し、トラパットーニが新監督に就任した。トラパットーニ監督の元、次なるワールドカップ2002年日韓大会の出場、いや優勝を目指して始動していくことになる。
また、この両国は1998年ワールドカップ準々決勝からの10年間で公式戦を何度も対戦することになる。1998年ワールドカップ準々決勝、2000年EURO決勝、2006年ワールドカップ決勝、2008年EURO予選、2008年EUROグループリーグと歴史に残る名勝負を繰り広げていくことになる。
出場選手(フランス)
GK 16 F・バルテズ 2000年、2004年のEUROに出場。1990年代から2000年代前半のフランスを代表するゴールキーパー。
DF 15 L・テュラム 1996年、2000年、2004年、2008年のEUROに出場。1990年代から2000年代のフランスを代表する名ディフェンダー。
DF 8 M・デサイー 1996年、2000年、2004年のEUROに出場。1980年代後半から2000年代前半のフランスを代表するボランチ、ディフェンダー。
DF 5 L・ブラン 1992年、1996年、2000年のEUROに出場。1980年代後半から2000年代前半のフランスを代表する名リベロ。後にフランス代表監督に就任し、2012年のEUROに監督として出場。
DF 3 B・リザラズ ▼86分 1996年、2000年、2004年のEUROに出場。1980年代後半から2000年代前半のフランスを代表するディフェンダー。
MF 4 P・ヴィエラ 2000年、2004年、2008年のEUROに出場。1990年代後半から2000年代のフランスを代表するディフェンシブミッドフィルダー。
MF 7 D・デシャン Ⓒ 1992年、1996年、2000年のEUROに出場。1980年代後半から2000年代前半のフランスを代表するディフェンシブミッドフィルダー。現フランス代表監督で2016年、2020年のEUROに監督として出場し、2016年は準優勝。
MF 6 Y・ジョルカエフ ▼76分 1996年、2000年のEUROに出場。1990年代から2000年代前半のフランスを代表するオフェンシブミッドフィルダー。
MF 10 Z・ジダン もはや説明不要の超ド級のスーパースター。
FW 12 T・アンリ 2000年、2004年、2008年のEUROに出場。1990年代後半から2000年代のフランスを代表する史上最高のストライカーの一人。
FW 21 C・デュガリー ▼57分 1996年、2000年のEUROに出場。
FW 13 S・ヴィルトール △57分 2000年、2004年のEUROに出場。
FW 20 D・トレゼゲ △76分 2000年、2004年のEUROに出場。1990年代後半から2010年代前半のフランスを代表するストライカー。
MF 11 R・ピレス △86分 2000年、2004年のEUROに出場。1990年代から2000年代のフランスを代表するオフェンシブミッドフィルダー。
監督 R・ルメール 2000年のEUROに監督として出場し優勝。
出場選手(イタリア)
GK 12 F・トルド 2000年のEUROに出場。
DF 5 F・カンナヴァーロ 2000年、2004年のEUROに出場。1990年代から2000年代のイタリアを代表する名ディフェンダー。2006年にバロンドール受賞。
DF 13 A・ネスタ 2000年、2004年のEUROに出場。1990年代から2000年代のイタリアを代表する名ディフェンダー。
DF 15 M・ユリアーノ 2000年のEUROに出場。
DF 3 P・マルディーニ Ⓒ 1988年、1996年、2000年のEUROに出場。1980年代から2000年代のイタリアを代表する史上最高の選手の一人。
DF 11 G・ペソット 2000年のEUROに出場。
MF 4 D・アルベルティーニ 1996年、2000年のEUROに出場。1990年代から2000年代前半のイタリアを代表するゲームメーカー。
MF 14 L・ディ・ビアッジョ ▼66分 2000年のEUROに出場。
MF 18 S・フィオレ ▼53分 2000年、2004年のEUROに出場。
FW 20 F・トッティ 2000年、2004年のEUROに出場。1990年代から2010年代前半のイタリアを代表する史上最高のファンタジスタの一人。
FW 21 M・デルヴェッキオ 2000年のEUROに出場。
FW 10 A・デル・ピエロ △53分 1996年、2000年、2004年、2008年のEUROに出場。1990年代から2010年代前半のイタリアを代表する史上最高のファンタジスタの一人。
MF 16 M・アンブロジーニ △66分 2000年、2008年のEUROに出場。
FW 19 V・モンテッラ △86分 2000年のEUROに出場。
監督 D・ゾフ 1960年代から1980年代前半のイタリアを代表する史上最高のゴールキーパー。1968年、1980年のEUROに選手として出場し、1968年は優勝に貢献。2000年のEUROに監督として出場し準優勝。
試合結果
フランス 2-1 イタリア
得点 M・デルヴェッキオ(イタリア) 55分
S・ヴィルトール(フランス) 90分+3分
D・トレゼゲ(フランス) 103分