決勝までの2003ー2004チャンピオンズリーグ
2003ー2004チャンピオンズリーグは大会史上、最も波乱が多かった大会となった。グループリーグは概ね順当な結果に終わり、優勝候補と思われるチームは決勝トーナメント進出を決めていた。強いていえば、インテルとラツィオのイタリア勢がグループリーグで脱落したぐらいだった。
決勝トーナメント1回戦でバイエルン・ミュンヘンとユヴェントスが、それぞれレアル・マドリードとラ・コルーニャのスペイン勢に敗れて敗退したのはやむを得なかったが、マンチェスター・ユナイテッドがポルトに敗れて敗退したのは驚きの結果となった。
そして準々決勝では、優勝候補と思われたレアル・マドリードとアーセナル、ディフェンディングチャンピオンのACミランが、揃いも揃って敗退して姿を消すことになった。ベスト4に残ったのはモナコ、チェルシー、ポルト、ラ・コルーニャとなり、大会前の優勝候補は、全て準々決勝までに敗退してしまい大波乱の大会となった。
準決勝はモナコがチェルシーを、ポルトがラ・コルーニャをそれぞれ下して決勝に進出し、大会前の下馬評を覆す顔合わせとなった。
両チームの勝ち上がり状況
モナコはグループCに入り、ラ・コルーニャ、PSVアイントホーフェン、AEKアテネと同組になり、どのチームにも突破と敗退の可能性があるグループを3勝1敗2分の勝点11を挙げてグループを首位で通過した。決勝トーナメント1回戦でロコモティフ・モスクワを下し、準々決勝では優勝候補の一角レアル・マドリードを第1戦のビハインドを跳ね返して逆転で下し、準決勝のチェルシー戦も制して初の決勝進出を決めた。
ポルトはグループFに入り、優勝候補の一角レアル・マドリード、マルセイユ、パルチザンと同組になり、2位を争うとみられたマルセイユを連勝で下して、3勝1敗2分の勝点11の2位で通過した。決勝トーナメント1回戦では優勝候補の一角マンチェスター・ユナイテッドを破り、準々決勝でリヨン、準決勝でラ・コルーニャを下して、1986ー1987シーズン以来17年ぶりの決勝に進出を決めた。
試合(前半)
前半23分 モナコのキャプテン・ジュリーが負傷でプルソと交代。
前半29分 ポルトのN・ヴァレンテが前線にフィードしようとしたパスをシセにカットされ、シセの持ち上がりをタックルで足を引っかけて倒しイエローカードを貰う。
前半39分 ポルトが右サイドからP・フェレイラがモナコペナルティエリア内にクロスを入れ、カルロス・アルベルトがワントラップしてシュートを放ち、モナコゴールの右上に突き刺して先制点を挙げる。ゴール後にカルロス・アルベルトはユニフォームを脱いでイエローカードを貰う。
前半は両チーム互角の攻防となり、特にポルトの最終ラインは何度もモナコの攻撃をオフサイドトラップの網にかけていた。そしてワンチャンスをきっちりものにしたポルトがリードで折り返しを迎えることになった。
試合(後半)
後半60分 ポルトが流れを変えるためにカルロス・アルベルトが下げてアレニチェフを投入する。
後半64分 モナコのシセが下がり、ノンダを投入する。
後半71分 ポルトがカウンターからデコが自陣エリアから持ち上がって左サイドのアレニチェフにパスを出し、アレニチェフがモナコペナルティエリア内に折り返し、デコがモナコゴールに蹴り込んでポルトが追加点を挙げる。
後半72分 モナコのギヴェットが下がり、スキラッチを投入する。
後半75分 ポルトが再びカウンターからチャンスを掴み、左サイドからアレニチェフがデルレイにボールを渡し、デルレイの縦パスをアレニチェフがモナコゴールに蹴り込み、ポルトがダメ押しの3点目を挙げる。
後半77分 ポルトのキャプテンのJ・コスタがイエローカードを貰う。
後半78分 ポルトのデルレイが下がり、マッカーシーを投入する。
後半80分 ポルトのデコが下がり、守備固めでP・エマヌエルを投入する。直後にモナコがポルトペナルティエリア内でノンダが折り返してエブラがシュートを撃ったが、クロスバーを超えて得点にはならず。
後半に入るとビハインドを追いかけるモナコがペースを握って攻め込んでいったが同点に追いつくことが出来ず、ポルトは流れを変えるためにアレニチェフを投入した。そしてモナコが攻撃に重心を置いてる中、ポルトがカウンターから71分と75分に立て続けに得点を挙げて試合を決めた。モナコにとって誤算だったのは前半23分に攻撃の中心キャプテン・ジュリーを失ったことだった。
試合後の両チーム
大波乱となった2003ー2004チャンピオンズリーグを制したのは、17年ぶり2回目の優勝を達成したポルトとなり、初の決勝進出にして初優勝を狙ったモナコは準優勝に終わった。そしてこの両チームの主力の多くは、このシーズンの活躍によりビッグクラブへと移籍していくことになった。
ポルトはP・フェレイラとR・カルヴァーリョがモウリーニョ監督と共にチェルシーへ、P・メンデスはトテナム・ホットスパー、デコがバルセロナにそれぞれ移籍し、モナコはジュリーがバルセロナ、ロテンがパリSG、プルソがレンジャーズに移籍し、モリエンテスはレアル・マドリードに復帰していった。
そしてもう一つ注目されたのが大波乱の大会を決勝に導いた両チームの若き指揮官モウリーニョとデシャンである。モウリーニョはこの大波乱の大会を制して一躍名声を高め、その後世界有数の名将へとなっていった。一方のデシャンは、後にフランス代表監督に就任して2018年のワールドカップで母国フランスを優勝に導くことになる。
出場選手(モナコ)
GK 30 F・ローマ
DF 4 H・イバラ 1990年代後半から2000年代のアルゼンチンを代表する右サイドバック。
DF 27 J・ロドリゲス
DF 32 G・ギヴェット ▼72分
DF 3 P・エブラ 2008年にマンチェスター・ユナイテッドでチャンピオンズリーグ優勝。2000年代から2010年代のフランスを代表する史上最高の左サイドバックの一人であり、欧州を代表する史上最高の左サイドバックの一人。
MF 14 E・シセ ▼64分
MF 7 L・ベルナルディ
MF 15 A・ジコス
FW 8 L・ジュリー Ⓒ ▼23分 2006年にバルセロナでチャンピオンズリーグ優勝。
FW 25 J・ロテン
FW 10 F・モリエンテス 1998年、2000年、2002年にレアル・マドリードでチャンピオンズリーグ優勝。1990年代後半から2000年代のスペインを代表するストライカー。
FW 9 D・プルソ △23分
FW 18 S・ノンダ △64分
DF 19 S・スキラッチ △72分
監督 D・デシャン フランスを代表する史上最高の監督の一人。1980年代後半から2000年代前半のフランスを代表する史上最高のディフェシブミッドフィルダーの一人であり、欧州を代表するディフェシブミッドフィルダーの一人。1993年にマルセイユ、1996年にユヴェントスで選手としてチャンピオンズリーグ優勝。
出場選手(ポルト)
GK 99 V・バイア 2004年にポルトでチャンピオンズリーグ優勝。1990年代から2000年代のポルトガルを代表する史上最高のゴールキーパーの一人。
DF 22 P・フェレイラ 2004年にポルト、2012年にチェルシーでチャンピオンズリーグ優勝。
DF 2 J・コスタ Ⓒ 2004年にポルトでチャンピオンズリーグ優勝。
DF 4 R・カルヴァーリョ 2004年にポルトでチャンピオンズリーグ優勝。2000年代から2010年代のポルトガルを代表する史上最高のセンターバックの一人であり、欧州を代表するセンターバックの一人。
DF 8 N・ヴァレンテ 2004年にポルトでチャンピオンズリーグ優勝。
MF 6 コスティーニャ 2004年にポルトでチャンピオンズリーグ優勝。
MF 23 P・メンデス 2004年にポルトでチャンピオンズリーグ優勝。
MF 18 マニチェ 2004年にポルトでチャンピオンズリーグ優勝。
MF 10 デコ ▼85分 2004年にポルト、2006年にバルセロナでチャンピオンズリーグ優勝。2000年代から2010年代のポルトガルを代表する史上最高のプレーメーカーの一人であり、欧州を代表するプレーメーカーの一人。
FW 19 カルロス・アルベルト ▼60分 2004年にポルトでチャンピオンズリーグ優勝。
FW 11 デルレイ ▼78分 2004年にポルトでチャンピオンズリーグ優勝。
MF 15 D・アレニチェフ △60分 2004年にポルトでチャンピオンズリーグ優勝。
FW 77 B・マッカーシー △78分 2004年にポルトでチャンピオンズリーグ優勝。
DF 3 P・エマヌエル △85分 2004年にポルトでチャンピオンズリーグ優勝。
監督 J・モウリーニョ ポルトガルを代表する史上最高の監督。2004年にポルト、2010年にインテルで監督としてチャンピオンズリーグ優勝。
試合結果
2004年5月26日 アリーナ・アウフシャルケ(ゲルゼンキルヒェン)
モナコ 0-3 ポルト
得点 カルロス・アルベルト(ポルト) 39分
デコ(ポルト) 71分
D・アレニチェフ(ポルト) 75分