両国の勝ち上がり状況
イングランドは死の組グループFを1勝2分の2位で通過し、決勝トーナメント1回戦ではデンマークを3-0の快勝で勝ち上がり準々決勝に進出してきた。
ブラジルは組み合わせに恵まれて、グループCを3戦全勝の首位で通過し、決勝トーナメント1回戦ではベルギーを2-0で下して準々決勝に進出してきた。
多くの強豪たちが早々と敗退していった今大会では、準々決勝で激突したサッカーの母国イングランドとサッカー王国ブラジルの対戦は、優勝を占う意味でも注目のビッグマッチとなった。
試合
立ち上がりからしばらくは一進一退で進んでいき、ブラジルの方がボールキープ率は上回っていたが、今大会のイングランドの守備力は非常に強力で、ブラジルといえどもなかなかチャンスを作れなかった。均衡が破れたのは前半23分、中央でパスを受け取ったヘスキーが前方のオーウェンに浮き球のパスを送るが、ブラジルDFのルシオがカットする。しかし、ボールコントロールを見失ったところをオーウェンが搔っさらってシュートを撃つとゴールに吸い込まれていった。
先制されたブラジルは攻撃にギアを上げるが、イングランドディフェンスは強固で攻めあぐねてしまい、時間だけが経過していった。このまま前半終了かと思われたアディショナルタイムの47分、ロナウジーニョが中央をドリブルで突き進み、フリーのリヴァウドにパスを出し、これをリヴァウドがゴールに蹴り込み同点に追いついた。
イングランドしてみれば、前半ほぼブラジルの攻撃を抑え込んでいただけに痛い失点となってしまった。そして前半は1-1で終了し、勝負の行方は後半にもつれ込んでいった。
後半に入り早々の50分、ブラジルが右サイド35mの位置でFKを獲得した。このFKをロナウジーニョがGKシーマンの頭上を越えて左上の隅に突き刺しブラジルが逆転した。GKシーマンはクロスを予想していたのか、少し前目にポジションを取っていたのを見て、見事に裏を掻いたFKだった。
しかし、その7分後の57分、ロナウジーニョはミルズとルーズボールを競り合った際に、足を踏みつけて一発レッドカードの退場処分を受けてしまった。少し厳し過ぎるきらいはあったが、ブラジルは残り30分ほどを1人少ない10人で闘わなければならなくなった。
チャンスを得たイングランドだったが、強力なディフェンス陣とは裏腹に攻撃は主にベッカムからのクロスかオーウェンのスピードぐらいしかなく、1人多いにもかかわらず攻め手がほとんどなかった。結局、ブラジルが2-1で逃げ切って勝利し、ベスト4に進出した。
その後の両国
ブラジルは準決勝でグループ戦でも対戦したトルコを1-0で下し、決勝ではワールドカップで初対戦となったドイツを2-0で破り、2大会ぶり通算5回目の優勝を飾ることになる。大会前の下馬評はそれほど高くはなかったがロナウド、リヴァウド、ロナウジーニョの3Rを中心とした攻撃陣で、グループリーグから決勝までの試合をすべて90分で勝利し、7戦全勝の完全優勝だった。
イングランドは大会前は優勝候補の一角に数えられていたが、結果はベスト8止まりで終わった。エリクソン監督は引き続き指揮を執り、2004年のEUROポルトガル大会を目指していくことになる。
出場選手(イングランド)
GK 1 D・シーマン 1998年、2002年のワルードカップに出場。1980年代後半から2000年代前半のイングランドを代表するゴールキーパー。
DF 2 D・ミルズ 2002年のワルードカップに出場。
DF 5 R・ファーディナンド 2002年、2006年のワルードカップに出場。2000年代から2010年代前半のイングランドを代表する名ディフェンダー。
DF 6 S・キャンベル 1998年、2002年、2006年のワルードカップに出場。
DF 3 A・コール ▼80分 2002年、2006年、2010年のワルードカップに出場。2000年代から2010年代のイングランドを代表する左サイドバック。
MF 7 D・ベッカム Ⓒ もはや説明不要のスーパースター。
MF 21 N・バット 2002年のワルードカップに出場。
MF 8 P・スコールズ 1998年、2002年のワルードカップに出場。1990年代から2010年代前半のイングランドを代表するオールラウンドミッドフィルダー。
MF 4 T・シンクレア ▼56分 2002年のワルードカップに出場。
FW 10 M・オーウェン ▼79分 1998年、2002年、2006年のワルードカップに出場。1990年代の後半から2000年代のイングランドを代表するストライカー。2001年にバロンドール受賞。
FW 11 E・ヘスキー 2002年のワルードカップに出場。
MF 23 K・ダイアー △56分 2002年のワルードカップに出場。
FW 20 D・ヴァッセル △79分 2002年のワルードカップに出場。
FW 17 T・シェリンガム △80分 1998年、2002年のワルードカップに出場。
監督 S・エリクソン イングランド代表監督に史上初の外国人として就任し、2002年と2006年のワルードカップに出場。
出場選手(ブラジル)
GK 1 マルコス 2002年のワルードカップに出場。
DF 3 ルシオ 2002年、2006年、2010年のワルードカップに出場。2000年代から2010年代のブラジルを代表する名ディフェンダー。
DF 5 エジミウソン 2002年のワルードカップに出場。
DF 4 ロッキ・ジュニオール 2002年のワルードカップに出場。
DF 2 カフー Ⓒ 1994年、1998年、2002年、2006年のワルードカップに出場。1990年代から2000年代のブラジルを代表する史上最高の右サイドバック。ワールドカップの決勝に3度出場した唯一の選手。
DF 6 ロベルト・カルロス 1998年、2002年、2006年のワルードカップに出場。1990年代後半から2000年代のブラジルを代表する史上最高の左サイドバック。
MF 15 クレベルソン 2002年、2010年のワルードカップに出場。
MF 8 ジウベルト・シウバ 2002年、2006年、2010年のワルードカップに出場。
MF 11 ロナウジーニョ 2002年、2006年のワルードカップに出場。2000年代のブラジルを代表する史上最高の選手の一人。2005年にバロンドール受賞。
FW 10 リヴァウド 1998年、2002年のワルードカップに出場。1990年代から2000年代のブラジルを代表するアタッカー。1999年にバロンドール受賞。
FW 9 ロナウド ▼70分 1994年、1998年、2002年、2006年のワルードカップに出場し、2002年は得点王。1990年代から2000年代のブラジルを代表する史上最高のストライカーの一人。1997年、2002年にバロンドール受賞。
FW 20 エジウソン △70分 2002年のワルードカップに出場。J・リーグの柏レイソルに選手として在籍。
監督 ルイス・フェリペ・スコラーリ ブラジルを代表する名将の一人。2002年、2014年に監督としてワルードカップに監督として出場し、2002年は優勝に導いている。J・リーグのジュピロ磐田に監督として在籍。
試合結果
イングランド 1-2 ブラジル
得点 M・オーウェン(イングランド) 23分
リヴァウド(ブラジル) 45分+2分
ロナウジーニョ(ブラジル) 50分