ここまでの欧州予選グループ2
2000年のEUROでともに準決勝で敗退しベスト4に終わった両国は、2002年の日韓ワールドカップの本大会出場をかけて争う欧州予選で同組となった。出場権は1位が本大会出場権を獲得し、2位はプレーオフに回ることになる。まずは最低2位以上を目指すことになるわけだが、グループ2は両国にアイルランドを加えた3カ国で激しい争いが展開されることになる。
ポルトガルはEURO以降も好調を維持して、ここまで予選を順調に消化し、第3戦ではアウェーでオランダを破って優位に立っていた。そしてこのホーム・オランダ戦を勝利で乗りきれば、本大会出場が俄然近づいてくることになっていた。
一方、オランダはEURO終了後に長年チームを引っ張てきたエース・ベルカンプが代表を引退し、故障者も続出して調子を落としていた。予選序盤にホームでアイルランドに引き分け、ポルトガルには敗れており完全に出遅れていた。そしてこのポルトガル戦はアウェーとはいえ、オランダにとってはこれ以上取りこぼしは許されない必勝を義務付けられた一戦となっていた。
試合
試合はポルトガルがボールをキープして始まったが、勝利以外は考えていないオランダが前半10分、クライファートのポストプレーからボールをキープしてペナルティエリア内に走り込んだオーフェルマルスにスルーパスを通し、オーフェルマルスがシュートを撃ったがGKキムが防ぎ、さらにその跳ね返りを拾ったハッセルバインクのシュートもGKキムが防いで先制はならなかった。
これ以降はオランダペースになっていったが、ポルトガルも12分にルイ・コスタがドリブル突破で持ち上がって左サイドのフィーゴにパスを出し、フィーゴがオランダゴール前に折り返しところをパウレタが頭で合わすが枠を外れてゴールはならなかった。そして前半18分、F・デ・ブールのロングフィードをオフサイドラインを抜け出したハッセルバインクがGKキムと1対1になり、かわそうとしたところを倒されてPKを獲得した。これをハッセルバインクが蹴り込みオランダが先制点を挙げた。
さらに29分には、クライファートがポストプレーでキープしたボールをハッセルバインクに渡し、そしてハッセルバインクがクライファートとワンツーパスでポルトガルDFのマークを外してシュートを撃ったが、これはGKキムが防いで追加点はならなかった。前半はこのまま1-0でオランダリードでハーフタイムに入っていった。
後半に入った早々の48分、左サイドを突破したオーフェルマルスがペナルティエリア内に折り返し、これをクライファートがポルトガルゴールに押し込み、オランダが待望の追加点を挙げた。ここまで予選を順調に消化してきたポルトガルも、さすがに敗戦だけは避けたいため、ここから猛攻を仕掛けていき、後半50分に右サイドのFKをルイ・コスタがオランダゴール前にクロスを上げ、リトスが頭で折り返したところをコウトがシュートを撃ったが枠を外れてゴールならず。
さらにフィーゴのFKなどでポルトガルが攻め込んでいくが、なかなかゴールを割れずに時間だけが経過していった。そして迎えた後半83分、右サイドでボールを受けたカプーチョがカットインしてパウレタにパスを出し、これをパウレタがノートラップでオランダゴールに突き刺して1点を返した。
1点差に詰め寄られたオランダは後半86分、ダヴィッツが左サイドのオーフェルマルスにパスを出し、オーフェルマルスがポルトガルDFをかわしてポルトガルゴール前に折り返し、これをクライファートがドンピシャで頭で合わせたがGKキムに防がれ、さらにこぼれ球を拾ったマカーイがシュートを撃ったがGKキムが再び防いで得点には至らなかった。
このままオランダが逃げ切るかと思われた試合終了間際の92分、右サイドからルイ・コスタがカットインしてペナルティエリア内にパスを出し、これを受けようとしたパウレタに後ろからF・デ・ブールがチャージに行って倒してしまいPKの判定となった。このPKをフィーゴが落ち着いて決め、土壇場でポルトガルが追いつきスタジアムのボルテージは最高潮になった。
試合はこのまま2-2で終了してポルトガルは勝ちに等しいドローに持ち込むことができ、オランダは勝ち試合を残り7分で追いつかれ負けに等しいドロー決着となった。
その後の両国
大一番のホーム・オランダ戦を土壇場の同点劇で乗りきったポルトガルは、残る難関アウェー・アイルランド戦も引き分けで終え、残る4試合は全て格下との対戦できっちり勝ちきって、グループ2を1位で通過し、晴れて翌年の日韓ワールドカップ本大会出場権を獲得した。しかし、本大会では共催国の韓国と同グループになり、不運な判定もあったが、よもやのグループリーグ敗退となるのである。
一方、勝ち試合を土壇場で引き分けに持ち込まれたオランダはグループ首位通過は絶望となり、2位通過をかけてアウェー・アイルランド戦に臨み、試合の大半を支配したが一発のカウンターにしてやられ、まさかの敗戦を喫してしまい予選敗退がほぼ決まってしまった。
そもそもオランダは2002年日韓ワールドカップ欧州予選に入る前から流れが悪く、2000年自国開催のEUROの準決勝で敗れて優勝を逃して虚無感を残しており、さらにエース・ベルカンプの代表引退、故障者の続出などでスタートダッシュに失敗し、その後も一向にチーム状態が上向くことはなかった。そしてオランダの予選敗退は2002年日韓ワールドカップの各大陸予選で唯一の波乱となった。
出場選手(ポルトガル)
GK 1 キム
DF 2 C・セクレタリオ
DF 3 ルイ・ジョルジ 2002年のワールドカップに出場。
DF 4 リトス
DF 5 F・コウト Ⓒ 2002年のワールドカップに出場。1980年代後半から2000年代のポルトガルを代表するディフェンダー。
MF 6 P・ベント ▼34分 2002年のワールドカップに出場。後にポルトガル代表監督に就任し、2014年のワールドカップに監督として出場。
MF 8 コスティーニャ 2006年のワールドカップに出場。
MF 10 M・ルイ・コスタ 2002年のワールドカップに出場。1990年代から2000年代のポルトガルを代表するオフェンシブミッドフィルダー。
FW 7 ルイス・フィーゴ 2002年、2006年のワールドカップに出場。1990年代から2000年代のポルトガルを代表する史上最高の選手の一人。2000年にバロンドール受賞。
FW 9 P・パウレタ 2002年、2006年のワールドカップに出場。
FW 11 S・コンセイソン ▼58分 2002年のワールドカップに出場。
MF 17 カプーチョ △34分 2002年のワールドカップに出場。
FW 18 N・ゴメス △58分 2002年、2006年のワールドカップに出場。
監督 A・オリヴェイラ 2002年のワールドカップに監督として出場。
出場選手(オランダ)
GK 1 E・ファン・デル・サール 1998年、2006年のワールドカップに出場。1990年代から2010年代前半のオランダを代表する史上最高のゴールキーパー。
DF 2 M・ライツィハー 1998年のワールドカップに出場。1990年代から2000年代前半のオランダを代表するディフェンダー。
DF 3 J・スタム 1998年のワールドカップに出場。1990年代から2000年代のオランダを代表する名ディフェンダー。
DF 4 F・デ・ブール Ⓒ 1994年、1998年のワールドカップに出場。1990年代から2000年代前半のオランダを代表する名ディフェンダー。後にオランダ代表監督に就任。
MF 5 F・コク 1998年、2006年のワールドカップに出場。1990年代から2000年代のオランダを代表するユーティリティープレーヤー。
MF 6 M・ファン・ボメル ▼70分 2006年、2010年のワールドカップに出場。1990年代後半から2010年代前半のオランダを代表するミッドフィルダー。
MF 7 B・ゼンデン ▼73分 1998年のワールドカップに出場。1990年代から2000年代のオランダを代表するユーティリティープレーヤー。
MF 8 E・ダヴィッツ 1998年のワールドカップに出場。1990年代から2000年代のオランダを代表するミッドフィルダー。
FW 9 P・クライファート 1998年のワールドカップに出場。1990年代から2000年代のオランダを代表するストライカー。
FW 10 J・ハッセルバインク ▼80分 1998年のワールドカップに出場。
FW 11 M・オーフェルマルス 1994年、1998年のワールドカップに出場。1990年代から2000年代前半のオランダを代表する名ウインガー。
MF 12 P・ボスフェルト △70分
FW 14 R・マカーイ △73分
FW 17 P・ファン・フーイドンク △80分 1998年のワールドカップに出場。
監督 L・ファン・ハール オランダを代表する名将の一人。2014年、2022年のワールドカップに監督として出場し、2014年は3位に導いている。バルセロナ監督時代にチャビとイニエスタをプロデビューさせている。
試合結果
ポルトガル 2-2 オランダ
得点 J・ハッセルバインク(オランダ) 18分
P・クライファート(オランダ) 48分
P・パウレタ(ポルトガル) 83分
ルイス・フィーゴ(ポルトガル) 90分+2分