ここまでのグループ2
1998年のワールドカップ本大会出場権を巡って争われる欧州予選。その欧州予選にサッカーの母国イングランドとサッカー大国のイタリアが同居したグループ2は、実力からしてこの両国の争いと見られていた。出場権は1位がストレートで本大会行きが決まり、2位はプレーオフに回ることになっている。このイタリアホームの対戦は予選最終戦に組み込まれていた。
イタリアは予選途中に監督がサッキからC・マルディーニに代わり、ゾーンプレスからイタリア伝統の守備的サッカーに戦術が変わっていた。そしてアウェー・イングランド戦を含む4連勝スタートを切ったが、アウェーのポーランド戦とジョージア戦を引き分けて勝点を取りこぼしてしまい、最終戦を前にイングランドに勝点1で後れをとっていた。
一方、イングランドは予選開始前にはホドルが監督に就任しており、3連勝で幸先よくスタートを切ったが、4戦目のホーム・イタリア戦で手痛い敗戦を喫してしまった。しかし、このイタリア戦以外は全勝で乗り切り、最終戦のアウェー・イタリア戦を前に勝点1を上回ることが出来た。
この試合はイングランドは引き分け以上で1位通過が決まり、イタリアは勝利以外は2位通過になることが決まっていた。どちらもどう転ぶかわからないプレーオフを回避するために、激しい戦いが予想されていた。
試合
試合の構図は勝利以外は首位通過が望めないホームのイタリアが攻め込んでいき、引き分け以上で首位通過が確定するアウェーのイングランドが守備を固めて迎え撃った。立ち上がりからP・マルディーニも積極的にオーバーラップを展開し、イングランドゴールに攻め込んでいった。
また1対1の肉弾戦が激しくインスはアルベルティーニと競った際に流血し、マルディーニはインスとの接触で負傷し交代を余儀なくされてしまった。双方守備力は安定しており、決定的チャンスはほとんどなく、イングランドが28分にベッカムからのクロスをシェリンガムが頭で落とし、インスがシュートを撃ったがGKペルッツィの正面でゴールはならなかった…ことぐらいか。
前半20分過ぎ頃から、ピッチ外でもスタジアム内でイタリア機動隊とイングランドサポーターが衝突し、こちらもピッチ同様激しいバトルが行われ、繰り返し映像に流されていた。もはや試合は騒然とした中で行われており、前半はスコアレスのままハーフタイムに入っていった。
後半に入っても展開は変わらず、イタリアはキエーザ、デル・ピエロを投入して打開を図ろうとするが、イングランドディフェンスは固くなかなかゴールを割ることが出来ない。すると後半76分、キャンベルにタックルを仕掛けたディ・リビオが、この日2枚目のイエローカードで貰い累積で退場処分を受けてしまった。
ますます苦しくなったイタリアはその後もほぼ決定的チャンスがないまま試合はスコアレスの0-0で終了し、守り切ったイングランドは2大会ぶりの本大会出場を決めた。一方、最後までイングランドディフェンスを崩せずゴールを割ることが出来なかったイタリアは、無敗のまま2位となりプレーオフに回ることになった。
その後の両国
プレーオフに回ったイタリアはロシアと対戦し、2試合合計2-1で競り勝ち本大会出場権を獲得した。本大会出場メンバーでは予選を牽引したゾーラがC・マルディーニ監督と戦術的意見が合わず代表を離れ、代わってR・バッジョが代表にエントリーされた。本大会ではグループリーグを突破し、決勝トーナメント1回戦でノルウェーを下して準々決勝に進出したが、開催国フランスにスコアレスの延長PK戦の末に敗れベスト8に終わった。
2大会ぶりに本大会に出場したイングランドは、出場選手最終選考でガスコインが体調・精神面の不調により外れることになった。本大会ではグループリーグをルーマニアに競り負けたため2位通過となり、決勝トーナメント1回戦で強豪アルゼンチンと対戦することになった。試合の前半は大会No.1といわれたほどのスペクタクルな好ゲームだったが、後半開始早々にベッカムが退場してしまい、延長PK戦の末に敗退してしまった。
余談だがこの両国はPK戦と相性が悪く、イタリアは1990年、1994年、1998年と3大会連続のPK戦敗退となっている。イングランドも1990年と1998年、そして1996年のEUROとPK戦で敗退している。
出場選手(イタリア)
GK 1 A・ペルッツィ 1980年代後半から2000年代のイタリアを代表するゴールキーパー。
DF 2 A・ネスタ 1998年、2002年、2006年のワールドカップに出場。1990年代から2000年代のイタリアを代表する名ディフェンダー。
DF 3 P・マルディーニ Ⓒ ▼31分 1990年、1994年、1998、2002年のワールドカップに出場。1980年代から2000年代のイタリアを代表する史上最高の選手の一人。
DF 5 F・カンナヴァーロ 1998年、2002年、2006年、2010年のワールドカップに出場。1990年代から2000年代のイタリアを代表する名ディフェンダー。2006年にバロンドール受賞。
DF 6 A・コスタクルタ 1994年、1998年のワールドカップに出場。1980年代後半から2000年代のイタリアを代表するディフェンダー。
MF 4 D・アルベルティーニ 1994年、1998年のワールドカップに出場。1990年代から2000年代前半のイタリアを代表するゲームメーカー。
MF 7 A・ディ・リヴィオ 1998年、2002年のワールドカップに出場。
MF 8 D・バッジョ 1994年、1998年のワールドカップに出場。
MF 10 G・ゾーラ ▼63分 1994年のワールドカップに出場。1980年代後半から2000年代前半のイタリアを代表するファンタジスタ。
FW 9 C・ヴィエリ 1998年、2002年のワールドカップに出場。1990年代から2000年代のイタリアを代表するストライカー。
FW 11 F・インザーギ ▼46分 1998年、2002年、2006年のワールドカップに出場。1990年代から2000年代のイタリアを代表するストライカー。
DF 14 A・ベナリーヴォ △31分 1994年のワールドカップに出場。
FW 18 E・キエーザ △46分 1998年のワールドカップに出場。
FW 17 A・デル・ピエロ △63分 1998年、2002年、2006年のワールドカップに出場。1990年代から2010年代前半のイタリアを代表する史上最高のファンタジスタの一人。
監督 C・マルディーニ 1950年代から1960年代のイタリアを代表する名選手。1962年のワールドカップに選手として出場し、1998年のワールドカップに監督として出場。イタリア代表キャプテンのパオロ・マルディーニは息子である。
出場選手(イングランド)
GK 1 D・シーマン 1998年、2002年のワールドカップに出場。1980年代後半から2000年代前半のイングランドを代表するゴールキーパー。
DF 2 S・キャンベル 1998年、2002年、2006年のワールドカップに出場。
DF 6 G・サウスゲート 1998年のワールドカップに出場。現イングランド代表監督で2018年、2022年のワールドカップに監督として出場し、2018年は4位に導いている。
DF 5 T・アダムズ 1998年のワールドカップに出場。1980年代から1990年代のイングランドを代表するディフェンダー。
MF 3 G・ル・ソー 1998年のワールドカップに出場。
MF 4 P・インス Ⓒ 1998年のワールドカップに出場。
MF 7 D・ベッカム もはや説明不要のスーパースター。
MF 8 P・ガスコイン ▼88分 1990年のワールドカップに出場。1980年代後半から1990年代のイングランドを代表するファンタジスタ。
MF 11 D・バッティ 1998年のワールドカップに出場。
FW 10 T・シェリンガム 1998年、2002年のワールドカップに出場。
FW 9 I・ライト
DF 14 G・ネヴィル △88分 1998年、2006年のワールドカップに出場。1990年代から2000年代のイングランドを代表するサイドバック。
監督 G・ホドル 1982年、1986年のワールドカップに選手として出場し、1998年のワールドカップに監督として出場。
試合結果
イタリア 0-0 イングランド
得点 なし