両チームの勝ち上がり状況
アルゼンチンはグループAを2勝1分で1位通過し、決勝トーナメント1回戦ではウルグアイを下してベスト8に進出した。一方、イングランドはグループFの初戦でポルトガルに敗れ、2戦目のモロッコ戦もスコアレスドローに終わりグループリーグ敗退の危機だったが、3戦目はリネカーのハットトリックでポーランドを退けて2位通過を決める。決勝トーナメント1回戦ではパラグアイを3-0で下してベスト8に進出した。
試合
立ち上がりは静かな展開で始まったが、次第にアルゼンチンがボールをキープしてペースを掴みイングランドゴールを脅かしたが、前半はスコアレスで終了した。試合が動いたのは後半立ち上がりの51分、マラドーナが中央を突破してヴァルダーノとワンツーを狙ったがパスがそれて、ディフェンスに戻っていたホッジがクリアを試みるもGKの前に浮き上がり、マラドーナとシルトンが競り合った結果、ボールがゴールに吸い込まれていった。競り合った際にマラドーナが「手を使った」とイングランド側は猛抗議したがゴールは認められ、アルゼンチンが先制した。これがかの有名な神の手ゴールである。
さらにその3分後の54分、ハーフェーラインの自陣手前からパスを受けたマラドーナはイングランドDFを次々と抜き去り、GKもかわして追加点を挙げる。これもかの有名な5人抜きのスーパーゴールである。
2点差にされたイングランドはワドル、バーンズを交代投入して猛攻をしかけるが、80分にバーンズからのクロスをリネカーがヘディングで押し込んで1点を返すのが精一杯でタイムアップ。アルゼンチンが2ー1でイングランドを下してベスト4に進出した。
その後の両チーム
アルゼンチンは準決勝でベルギー、決勝で西ドイツを破りこの大会を優勝する。原動力はもちろんマラドーナであり、後にこの大会は「マラドーナのマラドーナによるマラドーナのための大会」と呼ばれることになる。
イングランドではこの試合で得点したリネカーが通算6得点を挙げ得点王になった。また今大会の大半がメンバーに残り、4年後のイタリア大会ではベスト4まで進出することになる。
出場選手(アルゼンチン)
GK 18 N・プンピード 1986年、1990年のワルードカップに出場。
DF 9 J・クシューフォ 1986年のワルードカップに出場。
DF 5 J・ブラウン 1986年のワルードカップに出場。
DF 19 O・ルジェリ 1986年、1990年、1994年のワルードカップに出場。1980年代から1990年代のアルゼンチンを代表するセンターバック。
MF 16 J・オラルティコエチェア 1986年、1990年のワルードカップに出場。
MF 14 R・ジュスティ 1986年、1990年のワルードカップに出場。
MF 2 S・バティスタ 1986年、1990年のワルードカップに出場。後にアルゼンチン代表監督に就任。
MF 7 J・ブルチャガ ▼75分 1986年、1990年のワルードカップに出場。
MF 12 H・エンリケ 1986年のワルードカップに出場。
FW 10 D・マラドーナ Ⓒ もはや説明不要の超ド級のスーパースター。
FW 11 J・ヴァルダーノ 1982年、1986年のワルードカップに出場。1970年代から1980年代のアルゼンチンを代表するストライカー。レアル・マドリードの監督時代にレアルの至宝ラウールをプロデビューさせている。
MF 21 C・タピア △75分 1986年のワルードカップに出場。
監督 C・ビラルド アルゼンチンを代表する名将。1986年、1990年のワルードカップに監督として出場し、1986年は優勝に導いている。
出場選手(イングランド)
GK 1 P・シルトン Ⓒ 1982年、1986年、1990年のワルードカップに出場。1970年代から1990年代前半のイングランドを代表するゴールキーパー。
DF 2 G・スティーヴンス 1986年、1990年のワルードカップに出場。
DF 3 K・サンソム 1982年、1986年のワルードカップに出場。
DF 14 T・フェンウィック 1986年のワルードカップに出場。
DF 6 T・ブッチャー 1982年、1986年、1990年のワルードカップに出場。
MF 17 T・スティーヴン ▼74分 1986年、1990年のワルードカップに出場。
MF 4 G・ホドル 1982年、1986年のワルードカップに出場。後にイングランド代表監督に就任し、1998年のワルードカップに監督として出場。
MF 16 P・リード ▼64分 1986年のワルードカップに出場。
MF 18 S・ホッジ 1986年のワルードカップに出場。この試合後にマラドーナとユニフォームを交換している。
FW 20 P・ベアズリー 1986年、1990年のワルードカップに出場。
FW 10 G・リネカー 1986年、1990年のワルードカップに出場し、1986年は得点王。1980年代から1990年代前半のイングランドを代表するストライカー。後にJ・リーグの名古屋グランパスで選手として在籍。
FW 11 C・ワドル △64分 1986年、1990年のワルードカップに出場。1980年代から1990年代前半のイングランドを代表するオフェンシブミッドフィルダー。
FW 19 J・バーンズ △74分 1986年、1990年のワルードカップに出場。
監督 B・ロブソン イングランドを代表する名将。1986年、1990年のワルードカップに監督として出場し、1990年はベスト4に導いている。1992年に就任したポルトガルのスポルティング・リスボンの監督時の通訳が、のちに世界的名将となるJ・モウリーニョである。その後FCポルト、バルセロナの監督時にもモウリーニョをアシスタントコーチとして呼んでいる。
試合結果
アルゼンチン 2-1 イングランド
得点 D・マラドーナ(アルゼンチン) 51分
D・マラドーナ(アルゼンチン) 54分
G・リネカー(イングランド) 80分