両国のグループリーグ戦
優勝候補の一角であり16年ぶりの優勝を目指すブラジルはグループDに入り、スペイン、アルジェリア、北アイルランドと同組になり、3戦全勝でグループリーグを首位で通過して決勝トーナメントに進出してきた。一方、前回大会3位のポーランドはグループFに入り、イングランド、モロッコ、ポルトガルと同組になり、1勝1敗1分の3位でグループリーグを通過し、決勝トーナメントに進出してきた。
そして両国は決勝トーナメント1回戦で対戦することになり、勝った方がディフェンディングチャンピオンのイタリアと欧州王者のフランスの勝者と準々決勝で対戦することになる。
試合
試合は開始1分にポーランドが攻め込み、ペナルティエリア外からタラシェヴィチがブラジルゴール前にクロスを入れると、そのまま素通りしてポストにあたりブラジルは一瞬ヒヤリとした。その後しばらくは一進一退の攻防が続いていったが、次第にブラジルがチャンスを作っていき25分にミューレルがドリブルで持ち込んでシュートを放ち、26分には左サイドからブランコがシュートを撃ったがゴールにはならなかった。
すると前半28分、ペナルティエリア内でパスを受けたカレカが後ろからタラシェヴィチに倒されてPKを獲得した。これをソクラテスがきっちりと決めてブラジルが先制点を挙げた。前半34分、ブラジルの左サイドからのCKの時に両チーム入り乱れての揉み合いになり、このとき端の方でカレカとマジェフスキーが言い合いになり、カレカがマジェフスキーに唾を吐きかけていた。そしてCKのポジション取りの時にはマジェフスキーがカレカの腹部にパンチを入れていた。
その後両チーム落ち着きを取り戻してゲーム再開となり、前半40分頃からポーランドがカラシュ、オストロフスキーがミドルシュートを放ち、ブラジルゴール前でアーバンがシュートを撃ったがゴールにはならず、前半は1-0のブラジルリードでハーフタイムに入っていった。
後半に入るとブラジルがボールをキープして攻め込み、ポーランドがカウンターで応酬する展開で始まっていき後半54分、ブラジルが右サイドからのFKをジュニオールが直接狙うが壁にあたって跳ね返り、こぼれ球からジョジマールがドリブルで侵入してポーランドDFを2人かわしてシュートを撃ち、GKムイナルチクの頭上を越えてゴールに突き刺さりブラジルが追加点を挙げた。
2点差にされたポーランドは攻撃のギアを上げて攻め込み、60分にFKをタラシェヴィチが直接狙い、67分にはボニエクが右サイドからのクロスをオーバーヘッドでそれぞれシュートを撃ったがゴールにはならなかった。
すると後半78分、ブラジルがカウンターから左サイドをカレカがドリブルでポーランドペナルティエリア内に持ち上がってヒールパスでエジーニョに渡し、エジーニョがGKムイナルチクをかわしてゴールに押し込み、ブラジルが試合を決める3点目を挙げた。さらに81分にもカウンターからジーコがペナルティエリア内で倒されてPKを獲得し、これをカレカが決めてダメ押しの4点目を挙げた。
そして時間はこのまま経過して終了し、ブラジルが4-0でポーランドを下して準々決勝に進出を決めた。
その後の両国
16年ぶりの優勝に向けて順調に歩を進めてきたブラジルは、準々決勝で優勝候補の一角の欧州王者フランスと対戦することになった。この一戦は優勝を占う上でも今大会のハイライトとなり、後世に語り継がれる名勝負となった。この名勝負でブラジルは1-1の延長PK戦の末に敗れて大会を去ることになった。
ブラジルに大敗を喫して大会を去ることになったポーランドは、この敗戦により1970年代から続いた黄金時代は終焉を迎えることになった。1972年の五輪金メダルから始まり、1974年のワールドカップ3位入賞、1976年の五輪銀メダル、1982年のワールドカップ3位入賞と輝かしい戦績を残してきた。そしてこの大会以降、国際舞台から遠ざかることになり、長らく低迷期に入っていくことになる。
出場選手(ブラジル)
GK 1 カルロス 1986年のワールドカップに出場。
DF 13 ジョジマール 1986年のワールドカップに出場。1980年代のブラジルを代表する史上最高の右サイドバックの一人。
DF エジーニョ Ⓒ 1978年、1982年、1986年のワールドカップに出場。
DF 14 ジュリオ・セザール 1986年のワールドカップに出場。1980年代から1990年代のブラジルを代表する史上最高のセンターバックの一人。
DF 17 ブランコ 1986年、1990年、1994年のワールドカップに出場。1980年代から1990年代のブラジルを代表する史上最高の左サイドバックの一人。
MF 15 アレマン 1986年、1990年のワールドカップに出場。
MF 19 エルゾ 1986年のワールドカップに出場。
MF 6 ジュニオール 1982年、1986年のワールドカップに出場。1970年代から1980年代のブラジルを代表する左サイドバック。
MF 18 ソクラテス ▼69分 1982年、1986年のワールドカップに出場。1970年代から1980年代のブラジルを代表する史上最高のオフェンシブミッドフィルダーの一人。元ブラジル代表キャプテン・ライーは実弟である。
FW 7 ミューレル ▼73分 1986年、1990年、1994年のワールドカップに出場。1980年代後半から1990年代のブラジルを代表するストライカー。後年J・リーグの柏レイソルに選手として在籍する。
FW 9 カレカ 1986年、1990年のワールドカップに出場。1980年代から1990年代のブラジルを代表する史上最高のストライカーの一人であり、南米を代表するストライカーの一人。後年J・リーグの柏レイソルに選手として在籍する。
MF 10 ジーコ △69分 1978年、1982年、1986年のワールドカップに出場。1970年代から1980年代のブラジルを代表する史上最高の選手の一人であり、南米を代表する史上最高の選手の一人。後年J・リーグの鹿島アントラーズに選手として在籍し、日本代表監督に就任して2006年のワールドカップに監督として出場。元ブラジル代表監督のエドゥは実兄である。
MF 20 シーラス △73分 1986年、1990年のワールドカップに出場。後年J・リーグの京都パープルサンガに選手として在籍する。
監督 T・サンターナ ブラジルを代表する史上最高の監督の一人。1982、1986年のワールドカップに監督として出場。
出場選手(ポーランド)
GK 1 J・ムイナルチク 1982年、1986年のワールドカップに出場。
DF 2 K・プシビェシュ ▼59分 1986年のワールドカップに出場。
DF 5 R・ヴィオイチツキ 1978年、1982年、1986年のワールドカップに出場。
DF 10 S・マジェフスキー 1982年、1986年のワールドカップに出場。
DF 4 M・オトロフスキー 1986年のワールドカップに出場。
MF 7 R・タラシェヴィチ 1986年のワールドカップに出場。
MF 9 J・カラシュ 1986年のワールドカップに出場。
MF 11 W・スモラレク 1982、1986年のワールドカップに出場。元ポーランド代表のエウゼビウス・スモラレクは息子である。
MF 20 Z・ボニエク Ⓒ 1978年、1982年、1986年のワールドカップに出場。1970年代から1980年代のポーランドを代表する史上最高の選手の一人であり、欧州を代表する史上最高の選手の一人。後年ポーランド代表監督に就任する。
FW 21 D・ジェカノフスキー 1986年のワールドカップに出場。
FW 8 J・アーバン ▼83分 1986年のワールドカップに出場。
FW 22 J・フルトク △59分 1986年のワールドカップに出場。
DF 3 V・ズムダ △83分 1974年、1978年、1982年、1986年のワールドカップに出場。1970年代から1980年代のポーランドを代表するディフェンダー。
監督 A・ピエチニチェク ポーランドを代表する名将の一人。1982、1986年のワールドカップに監督として出場し、1982年は3位入賞。
試合結果
1986年6月16日 エスタディオ・ハリスコ(グアダラハラ)
ブラジル 4-0 ポーランド
得点 ソクラテス(ブラジル) 30分
ジョジマール(ブラジル) 54分
エジーニョ(ブラジル) 78分
カレカ(ブラジル) 83分