両国のグループリーグ戦
デンマークはグループEに入り、強豪西ドイツと同組だったが3戦全勝の1位通過で決勝トーナメントに進出した。大会前からダークホース的存在で臨んできたが、グループ第2戦のウルグアイ戦を6-1で粉砕するなど、デニッシュ・ダイナマイトと呼ばれるトータルフットボールで旋風を巻き起こしていた。
スペインはグループDに入って優勝候補のブラジルと同組になり、2勝1敗の2位での通過となった。決勝トーナメント1回戦で対戦するデンマークとは、2年前のEURO1984の準決勝でも対戦しており、その時はスペインが延長PK戦で競り勝っていた。デンマークがリベンジをするのかスペインが返り討ちにするのか、決勝トーナメント1回戦注目の対戦となった。
試合
試合はデンマークペースで始まり丁寧にボールを繋いで攻め込んでいたが、15分過ぎ頃からスペインも持ち前のテクニックでボールキープして盛り返していき、互角の攻防になっていった。前半32分、ベアグリーンがE・ラーセンにボールを預けて折り返してもらい、ドリブルでペナルティエリア内に侵入したところをガジェゴに倒されてPKを獲得した。これをJ・オルセンが落ち着いて決め、デンマークが先制した。
先制されたスペインは攻撃のギアを上げて攻め込むが、なかなかゴールを割ることが出来ない。しかし、前半終了間際の43分に思わぬ形で同点劇が転がり込んできた。GKのラース・ホーがJ・オルセンにパスを出し、J・オルセンがGKに返そうとしたボールをブトラゲーニョが搔っさらって無人のゴールに流し込んだ。デンマークにとっては痛恨の失点になってしまった。そして前半は1-1で終了した。
後半に入るとスペインがボールをキープしてゲームを支配していき、デンマークはわずかにカウンターからE・ラーセンが2度ほどシュートを撃つに留まった。そして後半56分、スペインが右サイドのCKをビクトルが上げ、カマーチョのヘディングをブトラゲーニョがさらにヘディングでゴールに押し込みスペインが逆転に成功する。さらに68分、エロイからの縦パスに反応したブトラゲーニョがペナルティエリア内でバスクに倒されてPKを獲得し、これをゴイコエチェアが決めて2点差とした。
2点差にされたデンマークは焦りからか攻撃に連携がなくなり、E・ラーセンやラウドルップの個人プレーになってしまった。スペインは余裕が出てきたのかゲームをコントロールしていき、後半80分にミッチェルのスルーパスからエロイがブトラゲーニョに折り返して、ブトラゲーニョがハットトリックとなる3点目を決めて4-1とし、ほぼこの試合を決定づけた。88分にもブトラゲーニョが4点目となるPKを決めてトータル5-1として試合は終了した。
注目された一戦は思わぬ大差がついた試合となり、勝ったスペインはベルギーが待つ準々決勝へと進出した。
その後の両国
スペインは準々決勝でベルギーと対戦し、1-1のまま90分が終了して延長PK戦の末に競り負けて惜しくもベスト4は逃してしまった。2年前のEURO1984の準優勝からチームのベースは変わらず、M・ムニョス監督が引き続き指揮を執り、2年後の1988年のEURO西ドイツ大会に挑むことになる。
この試合で大敗したデンマークは猛暑の為か、後半は足が止まってしまいグループ戦の時のようなゲームが出来なかった。ただ、E・ラーセンのパワー溢れる力強さとM・ラウドルップのテクニカルな好対照なツートップは魅力たっぷりだった。こちらもこのチームをベースに、引き続きピオンテック監督が指揮を執り、2年後のEUROに臨むことになる。
出場選手(デンマーク)
GK 22 ラース・ホー 1986年のワールドカップに出場。
DF 3 S・バスク 1986年のワールドカップに出場。
DF 4 M・オルセン Ⓒ 1986年のワールドカップに出場。1970年代から1980年代のデンマークを代表する名リベロ。後にデンマーク代表監督に就任し、2002年と2010年のワルードカップに監督として出場。
DF 5 I・ニールセン 1986年のワルードカップに出場。
DF 21 H・アンデルセン ▼60分 1986年のワルードカップに出場。
DF 12 J・ベルテルセン 1986年のワルードカップに出場。
MF 8 J・オルセン ▼71分 1986年のワルードカップに出場。
MF 6 S・レアビー 1986年のワルードカップに出場。
MF 11 M・ラウドルップ 1986年、1998年のワルードカップに出場。1980年代から1990年代のデンマークを代表する史上最高の選手。後にJ・リーグのヴィッセル神戸に選手として在籍。実弟はデンマークを代表するアタッカーのブライアン・ラウドルップである。
FW 9 K・ベアグリーン 1986年のワルードカップに出場。
FW 10 E・ラーセン 1986年のワルードカップに出場。1970年代後半から1980年代のデンマークを代表するアタッカー。
FW 19 J・エリクセン △60分 1986年のワルードカップに出場。
MF 7 J・メルビー △71分 1986年のワルードカップに出場。
監督 Z・ピオンテック 11年間デンマーク代表監督を務めたドイツ人監督で、デンマークにおいて有数の名将の一人。1986年のワルードカップにデンマーク代表監督として出場。
出場選手(スペイン)
GK 1 A・スビサレータ 1986年、1990年、1994年、1998年のワルードカップに出場。1980年代から1990年代のスペインを代表するゴールキーパー。
DF 2 トマス 1986年のワルードカップに出場。
DF 3 J・カマーチョ Ⓒ 1982年、1986年のワルードカップに出場。1970年代から1980年代のスペインを代表する左サイドバック。後にスペイン代表監督に就任し、2002年のワルードカップに監督として出場。
DF 5 ビクトル 1986年のワルードカップに出場。
DF 8 A・ゴイコエチェア 1986年のワルードカップに出場。マラドーナに重症を負わせたことでも有名な選手。
MF 14 R・ガジェゴ 1982年、1986年のワルードカップに出場。
MF 11 フリオ・アルベルト 1986年のワルードカップに出場。
MF 18 R・カルデレ 1986年のワルードカップに出場。
MF 21 ミッチェル ▼83分 1986年、1990年のワルードカップに出場。1980年代から1990年代のスペインを代表するミッドフィルダー。
FW 19 フリオ・サリナス ▼46分 1986年、1990年、1994年のワルードカップに出場。1980年代から1990年代のスペインを代表するフォワード。後にJ・リーグの横浜マリノスに選手として在籍。
FW 9 E・ブトラゲーニョ 1986年、1990年のワルードカップに出場。1980年代から1990年代のスペインを代表する史上最高のストライカーの一人。
FW 20 エロイ △46分 1986年のワルードカップに出場。
MF 17 フランシスコ △83分 1986年のワルードカップに出場。
監督 M・ムニョス スペインを代表する名将の一人。1986年のワルードカップに監督として出場。
試合結果
デンマーク 1-5 スペイン
得点 J・オルセン(デンマーク) 33分
E・ブトラゲーニョ(スペイン) 43分
E・ブトラゲーニョ(スペイン) 56分
A・ゴイコエチェア(スペイン) 68分
E・ブトラゲーニョ(スペイン) 80分
E・ブトラゲーニョ(スペイン) 88分