1986FIFAワールドカップ決勝トーナメント1回戦 ソ連VSベルギー

両国のグループリーグ戦

 2大会連続出場のソ連はグループCに入り、優勝候補の一角フランスと同グループだったが2勝1分で得失点差でフランスを上回り、グループCを1位で通過して決勝トーナメントに進出してきた。一方のベルギーも2大会連続で出場し、開催国のメキシコと同じグループBを1勝1敗1分の3位で通過して決勝トーナメントに進出してきた。

 そして決勝トーナメント1回戦で対戦することになった両国は、前回大会の2次リーグでも対戦しており、その時はソ連が1-0でベルギーを下していた。ベルギーとしては4年前のリベンジを果たしたいところであり、ソ連は再び返り討ちにしたい一戦である。

試合

 試合はソ連ペースで始まり、5分にバルがドリブルでベルギーペナルティエリア内に入ってベラノフに折り返し、ベラノフがシュートを撃ったが枠を外してしまう。6分にはヤコヴェンコがミドルシュートを放ったがGKパァフにセーブされてしまった。ベルギーは15分頃から前に運べるようになり、右サイドからヴェイトがソ連ゴール前にクロスを上げ、ヴェルコーテレンが頭で合わせたが枠を外れてしまった。

 迎えた前半27分、ベルギーペナルティエリア外でボールを受けたベラノフが強烈なミドルシュートを放つと、名手パァフが一歩も動けずにゴールに突き刺してソ連が先制点を挙げた。直後の29分にはヤレムチュクがミドルシュートを撃ったが枠を外れて追加点にはならなかった。

 前半30分過ぎからはベルギーがペースを掴み前半33分、ヴェルコーテレンの浮き球のパスをヴェルフォートがノートラップボレーで狙ったが枠を外してしまう。その後もクーレマンス、ゲレツ、シーフォがそれぞれミドルシュートを放ったが枠を外れてゴールにはならなかった。そして前半は1-0のソ連リードでハーフタイムに入っていった。

 後半に入ると再びソ連がペースを握り後半53分、左サイドからのクロスにベラノフがヘディングで合わせたがポストにあたって跳ね返り、これをザヴァロフがシュートを撃ったがベルギーDFにクリアされてゴールにはならなかった。すると後半56分、ベルギーが左サイドからヴェルコーテレンがソ連ゴール前にクロスを上げ、シーフォがワントラップシュートでゴールに流し込みベルギーが同点に追いついた。

 同点に追いつかれたソ連はさらに攻め込んでいき後半70分、クーレマンスが自陣エリアでボールを奪われてしまい、これを拾ったザヴァロフが持ち込んでベラノフにパスを出し、これをベラノフがGKパァフの位置をよく見てベルギーゴールに蹴り込んでソ連が勝ち越し点を挙げた。

 再びリードを許したベルギーは後半76分、ハーフェライン付近からヴェルフォートがロングパスを送り、オフサイドラインを抜け出したクーレマンスがキープしてシュートを決めてベルギーが再び同点に追いついた。ペースを握りながら再び同点に追いつかれたソ連は後半81分、ベルギーゴール前の混戦からヤレムチュクがシュートを放ったがクロスバーに直撃してゴールにはならず。

 試合終了間際の88分、ベルギーが左サイドからヴェイトがソ連ゴール前にクロスを上げ、シーフォが角度のないところからヘディングで狙ったが、GKダサエフがポストと挟まれながらもセーブしてゴールを死守した。そして前後半90分が終了して2-2のまま決着がつかず、15分ハーフの延長戦に突入することになった。

 延長に入り95分、デモルのロングフィードからのパスをクレーセンがキープしてシュートを撃ったが枠を外してしまう。直後の96分にはソ連が右サイドからのクロスをベラノフが頭で合わせたが枠を外れてしまった。

 そして延長前半102分、右サイドからのCKをヴェルコーテレンがショートコーナーでゲレツに渡し、ゲレツがソ連ゴール前に上げたクロスをデモルがヘディングでゴールに押し込み、この試合ベルギーが始めてリードを奪った。ソ連はこの時にペナルティエリア内に8人で守っていたが、ゲレツが上げたクロスの時は全員が集中力を欠いてボールウォッチャーになってしまった。

 さらに延長後半109分、右サイドのCKをヴェルコーテレンが低いクロスをソ連ゴール前に上げると、ソ連DFが空振りでクリアミスをしてしまい、こぼれ球を拾ったクーレマンスが粘ってキープし、最後はクレーセンがゴールに蹴り込んで4-2としてベルギーがさらにリードを広げた。

 延長に入ってからDFの集中力の欠如から2失点したソ連は、直後の延長後半110分にPKを獲得してベラノフがハットトリックとなる3点目を決めて1点差に詰め寄った。しかし、試合は4-3のままベルギーが逃げ切って死闘を制し、初のベスト8進出を決めることになった。

その後の両国

 前後半90分間はほぼ主導権を握っていたが、延長戦でディフェンスのミスから崩れて敗れたソ連は、グループリーグから素晴らしいゲームをしていただけに残念な結果に終わってしまった。そしてロバノフスキー監督の元、今大会のメンバーを中心に次なるメジャー大会となるEURO1988西ドイツ大会の予選に向けて始動していくことになる。

 延長の末に強敵ソ連を下したベルギーは、準々決勝でも強豪スペインを1-1の延長PK戦の末に下して準決勝に進出した。準決勝では優勝候補の一角アルゼンチンと対戦し、マラドーナの2ゴールで敗れて決勝進出とはならなかった。しかし、今大会は同国初のベスト4となり、1980年代の同国の黄金時代の集大成となった大会であった。

出場選手(ソ連)

 GK 1 R・ダサエフ                                                                                                                1982年、1986年、1990年のワールドカップに出場。1970年代後半から1990年代前半のソ連を代表する史上最高のゴールキーパーの一人であり、欧州を代表する史上最高のゴールキーパーの一人。

 DF 2 V・ベゾノフ                                                                                                                   1982年、1986年、1990年のワールドカップに出場。元新体操選手の世界女王アンナ・ベッソノワは娘である。

 DF 5 A・デミネンコ Ⓒ                                                                                                         1982年、1986年、1990年のワールドカップに出場。1970年代後半から1990年代前半のソ連を代表する左サイドバック。

 DF 10 O・クズネツォフ                                                                                                              1986年、1990年のワールドカップに出場。

 DF 21 V・ラッツ                                                                                                            1986年、1990年のワールドカップに出場。

 MF 12 A・バル                                                                                                          1982年、1986年のワールドカップに出場。

 MF 7 I・ヤレムチュク                                                                                                           1986年、1990年のワールドカップに出場。

 MF 8 P・ヤコヴェンコ ▼79分                                                                                               1986年のワールドカップに出場。

 MF 9 O・ザヴァロフ ▼72分                                                                                                     1986年、1990年のワールドカップに出場。1970年代後半から1980年代前半のソ連を代表する史上最高のオフェンシブミッドフィルダーの一人。

 MF 20 S・アレイニコフ                                                                                                         1986年、1990年のワールドカップに出場。後年J・リーグのガンバ大阪に選手として在籍する。

 FW 19 I・ベラノフ                                                                                                           1986年のワールドカップに出場。1980年代から1990年代前半のソ連を代表するストライカー。1986年にバロンドール受賞。

 FW 14 S・ロディオノフ △72分                                                                                                   1982年、1986年のワールドカップに出場。

 MF 17 V・エフトシェンコ △79分                                                                                               1982年、1986年のワールドカップに出場。

 監督 V・ロバノフスキー                                                                                                             ソ連・ウクライナを代表する史上最高の監督。1986年、1990年のワールドカップに監督として出場。

出場選手(ベルギー)

 GK 1 J・M・パァフ                                                                                                              1982年、1986年のワールドカップに出場。1970年代から1980年代のベルギーを代表する史上最高のゴールキーパーであり、欧州を代表するゴールキーパーの一人。

 DF 2 E・ゲレツ ▼112分                                                                                                       1982年、1986年、1990年のワールドカップに出場。1970年代から1990年代前半のベルギーを代表する右サイドバック。

 DF 5 M・レンカン                                                                                                                 1982年、1986年のワールドカップに出場。

 DF 13 G・グルン ▼99分                                                                                                         1986年、1990年、1994年のワールドカップに出場。1980年代から1990年代のベルギーを代表するディフェンダー。

 DF 22 P・ヴェルフォート                                                                                                         1986年、1990年のワールドカップに出場。

 MF 21 S・デモル                                                                                                                    1986年、1990年のワールドカップに出場。

 MF 6 F・ヴェルコーテレン                                                                                                     1982年、1986年のワールドカップに出場。1970年代から1980年代のベルギーを代表するウインガー。後年ベルギー代表監督に就任する。

 MF 8 E・シーフォ                                                                                                                   1986年、1990年、1994年、1998年のワールドカップに出場。1980年代から1990年代のベルギーを代表する史上最高の選手の一人であり、欧州を代表するプレーメーカーの一人。

 MF 11 J・クーレマンス Ⓒ                                                                                                         1982年、1986年、1990年のワールドカップに出場。1970年代から1980年代のベルギーを代表する史上最高の選手の一人。

 FW 18 D・ヴェイト                                                                                                           1986年のワールドカップに出場。

 FW 16 N・クレーセン                                                                                                                                 1986年、1990年のワールドカップに出場。

 DF 14 L・クライステルス △99分                                                                                                    1986年、1990年のワールドカップに出場。元テニスプレーヤーで全豪・全米オープン優勝のキム・クライステルスは娘である。

 DF 15 L・ファン・デル・エルスト △112分                                                                                          1986年のワールドカップに出場。元ベルギー代表のフランソワ・ファン・デル・エルストは実兄である。

 監督 G・タイス                                                                                                                   ベルギーを代表する史上最高の監督。1982年、1986年、1990年のワールドカップに監督として出場し、1986年は4位入賞。

試合結果

1986年6月15日 エスタディオ・レオン(レオン)

   ソ連 3-4 ベルギー

得点 I・ベラノフ(ソ連)    27分

   E・シーフォ(ベルギー)  56分

   I・ベラノフ(ソ連)    70分

   J・クーレマンス(ベルギー) 76分

   S・デモル(ベルギー)   102分

   N・クレーセン(ベルギー) 109分

   I・ベラノフ(ソ連)    111分

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