欧州予選プレーオフ
1986年のメキシコで開催されるワールドカップ本大会出場権を巡って行われている欧州予選プレーオフは、各グループの2位となったオランダとベルギーの隣国同士の顔合わせとなった。その第1戦はベルギーのホームで行われ、ヴェルコーテレンのゴールでホームのベルギーが先勝していた。
そして第2戦はオランダのホームで対戦となり、オランダが勝ち抜くためには無失点での2点差以上での勝利が必要であり、ベルギーが勝ち抜くためには引き分け以上、もしくはアウェーゴールを奪っての1点差負けならベルギーの勝ち抜けとなる。プレーオフも大詰めを迎えておりオランダが勝てば2大会ぶりの本大会出場となり、ベルギーが勝てば2大会連続の出場となる。
試合
試合は一進一退の攻防で始まったがアウェーのベルギーがチャンスを掴み、12分に右からのクロスを受けたクーレマンスが、23分にデスメットがそれぞれシュートを撃ったが枠を外れてしまった。勝ち抜けの為には最低2点が必要なホームのオランダは、26分に右サイドのFKをタハマタがベルギーペナルティエリア内にクロスを上げ、フリットがヘディングシュートで狙ったが、GKパァフが防いでゴールにならず。
その後もお互いにチャンスは作るものの決定機にはならず、ベルギーは2度ほどヴェルコーテレンがシュートを撃ち、オランダはハウトマンがシュートを撃ったが得点にはならず、前半はスコアレスのまま終了して勝負の行方は後半に持ち越されることになった。
後半に入り、オランダはファン・デ・コルプットに代えてヴァン・ローエンを投入して攻撃を、ベルギーはL・ファン・デル・エルストに代えてグルンを投入して守備をそれぞれ強化してきた。後半48分、ベルギーは右サイドからデスメットが中央にパスを出し、クーレマンスがシュートを撃ったが枠を外してしまう。
後半51分にはオランダが左サイドからファルケがベルギーペナルティエリア内にクロスを上げ、ハウトマンが頭で合わせたが枠を外れてしまった。そして迎えた後半60分、ファルケが左サイドにパスを出してデ・ウィットがベルギーゴール前にクロスを上げ、これを角度のないところからヘディングで押し込んでオランダが先制点を挙げて、2試合トータルで1-1のタイスコアに戻した。
さらに後半72分、右サイドからフリットがドリブルで突破して持ち上がり、ベルギーゴール前に低いクロスを入れるとベルギーDFにあたってデ・ウィットの前にボールがいき、デ・ウィットが落ち着いてゴールに押し込んでオランダが追加点を挙げ、2試合トータルでも2-1で逆転に成功した。
2点を奪われこのままではプレーオフ敗退となるベルギーは、F・ファン・デル・エルストに代えてヴェイトを投入して猛攻撃を仕掛けていきクーレマンス、ゲレツがそれぞれシュートを撃ったがゴールにはならなかった。
オランダの本大会出場がチラつき始めた後半85分、ヴァンデレイケンが右サイドのゲレツにパスを出し、ゲレツがオランダゴール前にクロスを上げてグルンが頭でゴールに押し込み、ベルギーが土壇場で得点を挙げた。2試合トータルで2-2のタイスコアに戻し、アウェーゴールを挙げたベルギーが逆に本大会出場にリーチをかけた。
そして残り時間オランダの攻撃を凌いだベルギーがこのまま逃げ切り、この試合は1-2で敗れたが、2試合トータル2-2でアウェーゴールを奪ったベルギーが本大会出場権を獲得した。
その後の両国
本大会出場を残り5分で失ったオランダは、これで2大会連続で本大会出場を逃してしまい、この時期はやや低迷期にあった。その後、ベーンハッカーからオランダ史上最高の監督のミケルスに監督が代わり、1988年のEURO西ドイツ大会の予選に向けて始動していくことになる。
残り5分の劇的アウェーゴールで2大会連続の本大会出場を決めたベルギーは、本大会でも旋風を起こすことになる。チームは1980年のEUROからメジャー大会に出場を続けており、この時期のベルギーは同国の黄金時代を築いていた。
出場選手(オランダ)
GK 1 F・ファン・ブロイケレン 1990年のワールドカップに出場。
DF 4 M・ファン・デ・コルプット ▼46分
DF 5 R・スペルボス
DF 6 F・ライカールト 1990年、1994年のワールドカップに出場。1980年代から1990年代前半のオランダを代表する史上最高の選手の一人であり、欧州を代表する史上最高の選手の一人。後年オランダ代表監督に就任する。バルセロナ監督時代にメッシをプロデビューさせている。
MF 2 B・ワインステカース Ⓒ
MF 3 A・ファン・ティゲレン 1990年のワールドカップに出場。
MF 7 S・タハマタ ▼76分
MF 8 R・フリット 1990年のワールドカップに出場。1980年代から1990年代のオランダを代表する史上最高の選手の一人であり、欧州を代表する史上最高の選手の一人。1987年にバロンドール受賞。
FW 9 P・ハウトマン
FW 10 M・ファルケ
FW 11 R・デ・ウィット
FW 15 J・ヴァン・ローエン △46分 1990年のワールドカップに出場。
DF 12 S・シローイ △76分
監督 L・ベーンハッカー 1990年のワールドカップに監督として出場。
出場選手(ベルギー)
GK 1 J・M・パァフ 1982年、1986年のワールドカップに出場。1970年代から1980年代のベルギーを代表する史上最高のゴールキーパーであり、欧州を代表するゴールキーパーの一人。
DF 2 E・ゲレツ 1982年、1986年、1990年のワールドカップに出場。1970年代から1990年代前半のベルギーを代表する右サイドバック。
DF 3 H・H・ブロース 1986年のワールドカップに出場。
DF 4 F・ファン・デル・エルスト ▼73分 1986年、1990年、1994年、1998年のワールドカップに出場。1980年代から1990年代のベルギーを代表するディフェンダー。
DF 5 M・デ・ヴォルフ 1986年、1990年、1994年のワールドカップに出場。
MF 6 F・ヴェルコーテレン 1982年、1986年のワールドカップに出場。1970年代から1980年代のベルギーを代表するウインガー。後年ベルギー代表監督に就任する。
MF 7 R・ヴァンデレイケン 1986年のワールドカップに出場。後年ベルギー代表監督に就任する。
MF 8 L・ファン・デル・エルスト ▼46分 1986年のワールドカップに出場。元ベルギー代表のフランソワ・ファン・デル・エルストは実兄である。
MF 10 P・デスメット 1986年のワールドカップに出場。
FW 9 L・クライステルス 1986年、1990年のワールドカップに出場。元テニスプレーヤーで全豪・全米オープン優勝のキム・クライステルスは娘である。
FW 11 J・クーレマンス Ⓒ 1982年、1986年、1990年のワールドカップに出場。1970年代から1980年代のベルギーを代表する史上最高の選手の一人。
DF 15 G・グルン △46分 1986年、1990年、1994年のワールドカップに出場。1980年代から1990年代のベルギーを代表するディフェンダー。
FW 16 D・ヴェイト △73分 1986年のワールドカップに出場。
監督 G・タイス ベルギーを代表する史上最高の監督。1982年、1986年、1990年のワールドカップに監督として出場し、1986年は4位入賞。
試合結果
1985年11月20日 デ・カイプ(ロッテルダム)
オランダ 2-1 ベルギー
得点 P・ハウトマン(オランダ) 60分
R・デ・ウィット(オランダ) 72分
G・グルン(ベルギー) 85分