ここまでの欧州予選グループ3
1986年にメキシコで開催されるワールドカップ本大会出場権を巡って行われている欧州予選グループ3は、2大会連続出場を目指すイングランドと北アイルランドの英国勢に、EURO1984の本大会に出場したルーマニア、そしてトルコとフィンランドの5カ国で2つの出場枠を争うことになった。
イングランドはここまで3勝2分の無敗で勝点8の首位でホームにルーマニアを迎えることになった。一方のルーマニアは2勝1敗2分の勝点5で3位につけており、首位のイングランドと2位の北アイルランドを追いかけていた。特にルーマニアはこのアウェー・イングランド戦の次にホームで北アイルランド戦を控えており、この2連戦が出場権獲得に向けて大きな正念場となっていた。
試合
4カ月前のルーマニアホームの時はスコアレスのドローで終わっていたこの対戦は、前半7分にハジが強烈なミドルシュートを放ったがクロスバーに直撃してしまいゴールにはならなかった。さらに13分にステファネスク、14分にカマタルがそれぞれミドルシュートを撃ったがゴールにはならなかった。
イングランドは前半19分にゴール正面25mの位置でFKを獲得し、直接狙わずにトリックプレーを使いライトが頭で合わせてルーマニアゴールを割ったが、オフサイドでゴール無効の判定となった。しかし前半25分、左サイドのFKをニアサイドのホドルにパスを出した時、ルーマニアディフェンスがオフサイドラインを上げたがルーマニアDFが残ってしまい、ホドルがフリーでシュートを決めてホームのイングランドが先制点を挙げた。
ディフェンスラインの連係ミスで痛い失点を喫してしまったルーマニアは、なかなかボールを前に運べずにいたが、前半終了間際に左サイドでボールをキープしたコラシュがハジにスルーパスを出し、ハジがGKシルトンの上を超すループシュートを狙ったが、ポストにあたってしまいゴールにはならなかった。そしてここで前半終了のホイッスルが鳴り、1-0でホームのイングランドがリードでハーフタイムに入っていった。
後半に入るとホームのイングランドがボールをキープして攻め込んでいくが、決定的なチャンスを作ることが出来ずにいた後半60分、ルーマニアが中央でパス交換をしてウングレアヌがカマタルにパスを通し、カマタルがドリブルで持ち込んでそのままシュートを決めてルーマニアが同点に追いついた。
追いつかれたイングランドは63分、中央からリードがルーマニアペナルティエリア内にクロスを上げ、ロブソンが頭で落としてリネカーがスティーブンスに渡し、スティーブンスがシュートを撃ったが枠を外してゴールならず。さらに67分、サンソムが左サイドを突破してリネカーにパスを出し、リネカーがシュートを撃ったがGKラングに防がれてしまった。
その後はお互い2人の交代枠を使って打開を図るが決定打にはならずに時間が経過して、試合は1-1のまま終了してお互いに勝点1ずつを加えるにとどまった。
その後の両国
ホームでルーマニアと引き分けてしまったイングランドだったが、予選通過に向けて順調に航海を続けており、次戦のホーム・トルコ戦を5-0で大勝し、最終戦を残して2大会連続の本大会出場権を獲得した。2年前のEURO1984の予選で敗退し、ロブソン監督の進退問題まで取りざたされたが、この予選は無敗のまま予選グループ3を1位で通過することが出来た。
アウェー・イングランド戦を引き分けたルーマニアは、次戦のホーム・北アイルランド戦でまさかの敗戦を喫してしまい、自力突破の可能性が消えて一気に窮地に追い込まれることになった。そして最終戦でアウェー・トルコ戦に勝ったものの北アイルランドとイングランドの対戦を引き分けに終わり、北アイルランドに勝点1及ばず予選敗退となった。
出場選手(イングランド)
GK 1 P・シルトン 1982年、1986年、1990年のワールドカップに出場。1970年代から1990年代前半のイングランドを代表する史上最高のゴールキーパーの一人であり、欧州を代表する史上最高のゴールキーパーの一人。
DF 2 G・M・スティーブンス 1986年、1990年のワールドカップに出場。
DF 3 K・サンソム 1982年、1986年のワールドカップに出場。
DF 5 T・フェンウィック 1986年のワールドカップに出場。
DF 6 M・ライト 1990年のワールドカップに出場。1980年代から1990年代のイングランドを代表するディフェンダー。
MF 4 P・リード 1986年のワールドカップに出場。
MF 7 B・ロブソン Ⓒ 1982年、1986年、1990年のワールドカップに出場。1970年代後半から1990年代前半のイングランドを代表するミッドフィルダー。
MF 8 G・ホドル 1982年、1986年のワールドカップに出場。1970年代後半から1990年代前半のイングランドを代表する史上最高のミッドフィルダーの一人であり、欧州を代表するミッドフィルダーの一人。後年イングランド代表監督に就任し、1998年のワールドカップに監督として出場。
MF 11 C・ワドル ▼69分 1986年、1990年のワールドカップに出場。1980年代から1990年代のイングランドを代表するオフェンシブミッドフィルダー。
FW 9 M・ヘイトリー 1986年のワールドカップに出場。
FW 10 G・リネカー ▼76分 1986年、1990年のワールドカップに出場し、1986年は得点王。1980年代から1990年代前半のイングランドを代表するストライカー。後年J・リーグの名古屋グランパスに選手として在籍する。
MF 16 J・バーンズ △69分 1986年、1990年のワールドカップに出場。
FW 15 T・ウッドコック △76分 1982年のワールドカップに出場。
監督 B・ロブソン イングランドを代表する史上最高の監督の一人。1986年、1990年のワールドカップに監督として出場し、1990年は4位入賞。後年ポルトガルのスポルティング・リスボンの監督時代の通訳が、のちに世界的名将となるJ・モウリーニョである。
出場選手(ルーマニア)
GK 1 S・ラング 1990年のワールドカップに出場。後年J・リーグの名古屋グランパスにGKコーチとして在籍する。元ルーマニア代表シルヴィウ・ラング・ジュニアは息子である。
DF 2 N・ネグリラ
DF 3 C・ステファネスク Ⓒ
DF 4 S・ロバン
DF 5 M・レドニック 1990年のワールドカップに出場。
DF 6 N・ウングレアヌ
MF 7 M・コラシュ ▼82分
MF 8 M・クライン ▼87分 1990年のワールドカップに出場。
MF 10 L・ボローニ 1970年代から1980年代のルーマニアを代表する史上最高の選手の一人。後年ルーマニア代表監督に就任する。
MF 11 G・ハジ 1990年、1994年、1998年のワールドカップに出場。1980年代から2000年代前半のルーマニアを代表する史上最高の選手であり、欧州を代表する史上最高の選手の一人。後年ルーマニア代表監督に就任する。
FW 9 R・カマタル 1990年のワールドカップに出場。
FW 15 R・ガボール △82分
MF 16 D・マテウ △87分 1990年のワールドカップに出場。
監督 M・ルチェスク ルーマニアを代表する史上最高の監督。1960年代から1970年代のルーマニアを代表する史上最高の選手。1970年のワールドカップに選手として出場。
試合結果
1985年9月11日 ウェンブリー・スタジアム(ロンドン)
イングランド 1-1 ルーマニア
得点 G・ホドル(イングランド) 25分
R・カマタル(ルーマニア) 60分