ここまでのグループF
前回大会3位のポーランドは初戦のモロッコ戦をスコアレスのドローで終え、第2戦のポルトガル戦を1-0で競り勝ち最終戦のイングランド戦を迎えることになった。一方のイングランドは初戦のポルトガル戦を落として黒星スタートとなり、第2戦のモロッコ戦はスコアレスのドローに終わってここまで無得点の勝点1と厳しい状況で最終戦のポーランド戦を迎えることになった。
第2戦終了時点でポーランドが勝点3の首位、ポルトガルとモロッコが勝点2で並んでイングランドが勝点1の最下位となっており、最終戦次第でどのチームにも通過の可能性が残されているが、どのチームにも敗退の可能性が残されていた。
そして両国の対戦は、ポーランドはもう一方のポルトガルーモロッコ戦の結果次第では敗れてもグループリーグ通過の可能性があり、イングランドはこの試合は勝利以外はグループリーグ敗退が確定していた。
試合
試合は勝利以外はグループ敗退が決まるイングランドが攻め込んでいき、ポーランドがカウンターで対抗する展開で始まり前半5分、イングランドボールをカットしたスモラレクがドリブルで持ち上がってボニエクにパスを出し、ボニエクがシュートを撃ったがGKシルトンが防いでゴールにはならなかった。
イングランドが攻め込んでいった前半8分、左サイドからリネカーがドリブルで持ち上がってスティーブンに渡し、スティーブンが右サイドオーバーラップしてきたスティーブンスにパスを出し、スティーブンスがポーランドゴール前に低いクロスを上げ、これをリネカーがゴールに押し込み、イングランドが今大会初ゴールとなる先制点を挙げた。
続く前半14分、左サイドからホッジがポーランドゴール前にクロスを上げ、これにリネカーが合わせてゴールに押し込みイングランドが追加点を挙げた。さらに16分右サイドからリードの低いクロスをホッジがポーランドゴールに押し込んだが、これはオフサイドでゴールは無効となった。
劣勢のポーランドはわずかにスモラレクのFKとボニエクのシュートぐらいで、主導権は完全にイングランドになり前半35分、左サイドのCKをスティーブンスがポーランドゴール前に上げると、GKムイナルチクが飛び出したが目測を誤ってしまい、後ろにいたリネカーががら空きのゴールに蹴り込んでハットトリックとなる3点目を挙げてイングランドがリードをさらに広げた。これまでの2試合無得点が嘘のような攻撃で、イングランドが3-0のリードで前半を終了して折り返しを迎えることになった。
後半に入るとイングランドは3点のアドバンテージを生かしてバランスを取りながら試合を進めていき、得失点差を考慮して少しでも縮めておきたいポーランドが攻め込んでいった。後半51分、63分にエース・ボニエクがそれぞれシュートを撃ったがゴールにはならなかった。
後半も中ごろに入ると膠着状態に入っていき、お互い決定的チャンスを作るまでには至らずに終了間際のボニエクのミドルシュートもGKシルトンに防がれ、後半は得点は入らずに試合は3-0のままイングランドの勝利で終了した。
その後の両国
最終戦でようやく初勝利を挙げたイングランドは、1勝1敗1分の2位でグループリーグを通過し、決勝トーナメント1回戦でパラグアイを3-0で下して準々決勝に進出した。準々決勝では優勝候補の一角で今大会最注目のマラドーナ率いるアルゼンチンと対戦し、そのマラドーナの活躍により敗れてベスト8で大会を去ることになった。
最終戦で思わぬ大敗を喫した前回大会3位のポーランドは、1勝1敗1分の3位に順位を落としてグループリーグを通過した。決勝トーナメント1回戦では優勝候補の一角ブラジルと対戦し、0-4の大敗を喫して大会を去ることになった。
出場選手(イングランド)
GK 1 P・シルトン Ⓒ 1982年、1986年、1990年のワールドカップに出場。1970年代から1990年代前半のイングランドを代表する史上最高のゴールキーパーの一人であり、欧州を代表する史上最高のゴールキーパーの一人。
DF 2 G・M・スティーブンス 1986年、1990年のワールドカップに出場。
DF 6 T・ブッチャー 1982年、1986年、1990年のワールドカップに出場。
DF 14 T・フェンウィック 1986年のワールドカップに出場。
DF 3 K・サンソム 1982年、1986年のワールドカップに出場。
MF 17 T・スティーブン 1986年、1990年のワールドカップに出場。
MF 18 S・ホッジ 1986年、1990年のワールドカップに出場。
MF 16 P・リード 1986年のワールドカップに出場。
MF 4 G・ホドル 1982年、1986年のワールドカップに出場。1970年代後半から1990年代前半のイングランドを代表する史上最高ミッドフィルダーの一人であり、欧州を代表するミッドフィルダーの一人。後年イングランド代表監督に就任し、1998年のワールドカップに監督として出場。
FW 20 P・ビアズリー ▼75分 1986年、1990年のワールドカップに出場。1980年代から1990年代のイングランドを代表するセカンドストライカー。
FW 10 G・リネカー ▼86分 1986年、1990年のワールドカップに出場し、1986年は得点王。1980年代から1990年代前半のイングランドを代表するストライカー。後年J・リーグの名古屋グランパスに選手として在籍する。
MF 11 C・ワドル △75分 1986年、1990年のワールドカップに出場。1980年代から1990年代のイングランドを代表するオフェンシブミッドフィルダー。
FW 21 K・ディクソン △86分 1986年のワールドカップに出場。
監督 B・ロブソン イングランドを代表する史上最高の監督の一人。1986年、1990年のワールドカップに監督として出場し、1990年は4位入賞。後年ポルトガルのスポルティング・リスボンの監督時代の通訳が、のちに世界的名将となるJ・モウリーニョである。
出場選手(ポーランド)
GK 1 J・ムイナルチク 1982年、1986年のワールドカップに出場。
DF 18 K・パウラク 1986年のワールドカップに出場。後年ポーランド代表監督に就任する。
DF 5 R・ヴィオイチツキ 1978年、1982年、1986年のワールドカップに出場。
DF 10 S・マジェフスキー 1982年、1986年のワールドカップに出場。
DF 4 M・オトロフスキー 1986年のワールドカップに出場。
MF 6 W・マティシク ▼46分 1982年、1986年のワールドカップに出場。
MF 13 R・コモルニッキ ▼22分 1986年のワールドカップに出場。
MF 20 Z・ボニエク Ⓒ 1978年、1982年、1986年のワールドカップに出場。1970年代から1980年代のポーランドを代表する史上最高の選手の一人であり、欧州を代表する史上最高の選手の一人。後年ポーランド代表監督に就任する。
MF 11 W・スモラレク 1982年、1986年のワールドカップに出場。元ポーランド代表のエウゼビウス・スモラレクは息子である。
FW 21 D・ジェカノフスキー 1986年のワールドカップに出場。
FW 8 J・アーバン 1986年のワールドカップに出場。
MF 9 J・カラシュ △22分 1986年のワールドカップに出場。
MF 15 A・ブンコル △46分 1982年、1986年のワールドカップに出場。
監督 A・ピエチニチェク ポーランドを代表する名将の一人。1982年、1986年のワールドカップに監督として出場し、1982年は3位入賞。
試合結果
1986年6月11日 エスタディオ・ウニベルシタリオ(モンテレー)
イングランド 3-0 ポーランド
得点 G・リネカー(イングランド) 8分
G・リネカー(イングランド) 14分
G・リネカー(イングランド) 35分