ここまでのグループE
EURO1984でベスト4まで勝ち上がりワールドカップ本大会初出場のデンマークは、初戦のスコットランド戦を1-0で勝利し、第2戦のウルグアイ戦は6-1と粉砕して早々とグループリーグを通過していた。一方、前回大会準優勝の西ドイツは初戦のウルグアイ戦を1-1で引き分け、第2戦のスコットランド戦を2-1で競り勝ち、1勝1分の2位につけていた。
そして最終戦で両国は対戦することになり、デンマークは引き分け以上でグループリーグを首位で通過でき、西ドイツは勝利以外は大敗しない限りは2位通過となる。
試合
試合は静かな立ち上がりとなり、徐々にデンマークがボールをキープしていき前半7分、西ドイツペナルティエリア内のスルーパスに反応したシヴェベークが、GKシューマッハーをかわしてシュートを撃ったが西ドイツDFが間一髪クリアされてゴールにはならず、8分にはレアビーがミドルシュートを撃ったがGKシューマッハーがセーブしてゴールにはならなかった。
前半18分、西ドイツは中盤でフェラーがボールをカットしてそのまま持ち上がり、アロフスにパスを出してシュートを撃ったがGKラース・ホーにセーブされ、こぼれ球をフェラーが詰めたが枠を外れてしまう。23分にはベルトールトがワンツーからシュートを撃ったがGKラース・ホーにセーブされてゴールにならず。前半28分、ブレーメがカットインして強烈なミドルシュートを放ったがクロスバーを直撃してゴールにはならなかった。
その後も一進一退の攻防が続き、32分にデンマークのFKをエルケーア・ラーセンが、38分には西ドイツがフェラーの折り返しをマテウスがそれぞれシュートを撃ったがゴールにはならず。そしてこのまま無得点で前半終了かと思われた43分、バスクがドリブルで持ち込み西ドイツペナルティエリア内でロルフに倒されて、デンマークがPKを獲得した。
このPKをJ・オルセンがきっちりと決めてデンマークが先制点を挙げた。ここで前半が終了して1-0のデンマークリードで折り返しを迎えることになった。
後半に入り西ドイツはリトバルスキーをデンマークはエリクセンをそれぞれ交代で投入し、後半56分に右サイドからベルトールトのクロスを、リトバルスキーが角度のないところからシュートを撃ったがポストにあたってゴールならず。58分には左サイドからブレーメのスルーパスからアロフスがシュートを撃ったがGKラース・ホーが防いでゴールにはならなかった。
後半62分、デンマークがカウンターから攻め込み右サイドからの折り返しをエリクセンが合わせて西ドイツゴールに押し込み、デンマークが追加点を挙げた。後半71分に西ドイツはルンメニゲ、デンマークはシモンセンのバロンドーラーを交代でピッチに送り込んできた。
しかし、あまり効果的な交代とはならずリトバルスキー、ルンメニゲがそれぞれシュートを撃ったがゴールにはならなかった。また終了間際の88分にはアーネセンがマテウスに後ろからタックルをされ、報復にケリを入れてしまいこの日2枚目のイエローを貰って退場処分になってしまった。
そして試合は2-0ままデンマークが逃げ切ってグループ1位通過を決め、敗れた西ドイツはグループ2位通過となった。
その後の両国
ワールドカップ本大会初出場のデンマークは、最激戦区のグループEを3戦全勝の1位で通過し、EURO1984のベスト4がフロックではなかったことを証明した。しかし、決勝トーナメント1回戦ではスペインに1-5の大敗を喫して大会を去ることになった。
前回大会準優勝で今大会も優勝候補の一角として出場した西ドイツは、グループリーグを1勝1敗1分の2位で通過することになった。そして決勝トーナメントでモロッコ、開催国のメキシコを下して準決勝に進出し、準決勝では前回大会で死闘を演じたフランスとの再戦となり、再び返り討ちにして2大会連続の決勝に進出を決めた。
決勝ではアルゼンチンと対戦し、2点差を追いつく粘りを見せたが最後はエース・マラドーナのアシストによる決勝点を奪われて2-3で敗れ、2大会連続の準優勝に終わった。
出場選手(デンマーク)
GK 22 ラース・ホー 1986年のワールドカップに出場。
DF 2 J・シヴェベーク 1986年のワールドカップに出場。
DF 3 S・バスク 1986年のワールドカップに出場。
DF 4 M・オルセン Ⓒ 1986年のワールドカップに出場。1970年代から1980年代のデンマークを代表する史上最高の選手の一人。後年デンマーク代表監督に就任し、2002年、2010年のワールドカップに監督として出場。
DF 21 H・アンデルセン 1986年のワールドカップに出場。
MF 15 F・アーネセン 1986年のワールドカップに出場。
MF 7 J・モルビー 1986年のワールドカップに出場。
MF 8 J・オルセン ▼71分 1986年のワールドカップに出場。
MF 6 S・レアビー 1986年のワールドカップに出場。
FW 11 M・ラウドルップ 1986年、1998年のワールドカップに出場。1980年代から1990年代のデンマークを代表する史上最高の選手であり、欧州を代表するオフェンシブミッドフィルダーの一人。後年J・リーグのヴィッセル神戸に選手として在籍する。元デンマーク代表ブライアン・ラウドルップは実弟である。
FW 10 P・エルケーア・ラーセン ▼46分 1986年のワールドカップに出場。1970年代後半から1980年代のデンマークを代表する史上最高のストライカーの一人であり、欧州を代表するストライカーの一人。
FW 19 J・エリクセン △46分 1986年のワールドカップに出場。
FW 14 A・R・シモンセン △71分 1986年のワールドカップに出場。1970年代から1980年代のデンマークを代表する史上最高の選手の一人であり、欧州を代表するストライカーの一人。1977年にバロンドール受賞。
監督 S・ピオンテック ドイツ人でデンマークを代表する史上最高の監督。1986年のワールドカップに監督として出場。
出場選手(西ドイツ)
GK 1 H・シューマッハー Ⓒ 1982年、1986年のワールドカップに出場。1970年代から1980年代の西ドイツを代表する史上最高のゴールキーパーであり、欧州を代表するゴールキーパーの一人。
DF 5 M・エルゲット 1986年のワールドカップに出場。
DF 6 N・エデル 1986年のワールドカップに出場。
DF 14 T・ベルトールト 1986年、1990年、1994年のワールドカップに出場。
DF 17 D・ヤコブス 1986年のワールドカップに出場。
DF 3 A・ブレーメ 1986年、1990年、1994年のワールドカップに出場。1980年代から1990年代のドイツを代表する史上最高の左サイドバックであり、欧州を代表する左サイドバックの一人。
MF 4 K・H・フェルスター ▼71分 1982年、1986年のワールドカップに出場。1970年代後半から1980年代の西ドイツを代表する史上最高のストッパーの一人であり、欧州を代表するストッパーの一人。元西ドイツ代表ベルント・フェルスターは実兄である。
MF 21 W・ロルフ ▼46分 1986年のワールドカップに出場。
MF 8 L・マテウス 1982年、1986年、1990年、1994年、1998年のワールドカップに出場。1980年代から1990年代のドイツを代表する史上最高の選手の一人であり、欧州を代表する史上最高の選手の一人。1990年にバロンドール受賞。
FW 19 K・アロフス 1986年のワールドカップに出場。
FW 9 R・フェラー 1986年、1990年、1994年のワールドカップに出場。1980年代から1990年代前半のドイツを代表するストライカー。後年ドイツ代表監督に就任し、2002年のワールドカップに監督として出場して準優勝に導いている。
MF 7 P・リトバルスキー △46分 1982年、1986年、1990年のワールドカップに出場。1980年代から1990年代の西ドイツを代表するドリブラー。後年J・リーグのジェフ市原に選手として在籍し、アビスパ福岡に監督として在籍する。
FW 11 K・H・ルンメニゲ △71分 1978年、1982年、1986年のワールドカップに出場。1970年代から1980年代の西ドイツを代表する史上最高の選手の一人であり、欧州を代表する史上最高の選手の一人。1980年、1981年にバロンドール受賞。J・リーグの浦和レッズでプレーしたミヒャエル・ルンメニゲは実弟である。
監督 F・ベッケンバウアー ドイツ史上最高のスーパースター。1960年代後半から1980年代前半の西ドイツを代表する史上最高の選手であり、欧州を代表する史上最高の選手の一人。1966年、1970年、1974年のワールドカップに選手として出場し、1974年はキャプテンとして優勝に貢献し、1986年、1990年のワールドカップに監督として出場し、1990年は優勝に導いている。1972年、1976年にバロンドール受賞。
試合結果
1986年6月13日 エスタディオ・コレヒドーラ(ケレタロ)
デンマーク 2-0 西ドイツ
得点 J・オルセン(デンマーク) 43分
J・エリクセン(デンマーク) 62分