大会前の両国の予選
1983年のコパ・アメリカを制し南米王者としてワールドカップ南米予選に臨んだウルグアイはグループBに入り、チリとエクアドルとの争いを制して1974年大会以来、3大会ぶりに本大会出場権を獲得した。
前回大会準優勝の西ドイツは欧州予選グループ2に入り、チェコスロバキア、スウェーデン、ポルトガルの強豪国と同組になったが、2戦を残して早々と本大会出場権を獲得してきた。
そして両国にデンマークとスコットランドを加えた4カ国で本大会最激戦区のグループEを形成することになった。初戦で対戦することになった両国は、ワールドカップ優勝経験国同士ということもあり注目の一戦となった。
試合
試合は意外な展開で始まりキックオフから4分、右サイドハーフェライン付近からマテウスがバックパスしたところをアルサメンディがカットして奪い、そのままドリブルでGKシューマッハーもかわして西ドイツゴールに蹴り込み、ウルグアイが思わぬ形で先制点を挙げた。
らしからぬミスで先制された西ドイツはボールをキープして攻め込み、9分にマテウスのミドルシュート、11分に後方のロングフィードからフェラーがシュートを、15分にはFKからアウゲンターラーがシュートをそれぞれ放ったがゴールにはならなかった。一方のウルグアイも時折カウンターから攻め込み前半16分、フランチェスコリからダ・シルバ、アルサメンディと繋いでシュートを撃ったが枠を外してしまった。
全体的には追いかける西ドイツがペースを握り前半17分、左サイドからのFKをブレーメがウルグアイゴール前にクロスを上げたが、フェルスターとエデルが味方同士で被ってしまいゴールにはならず。さらにブリーゲル、アロフス、ベルトールトが次々にシュートを浴びせるが同点にはならなかった。そして前半は1-0のウルグアイリードで終了して、ハーフタイムに入っていった。
後半に入り西ドイツはブレーメを下げてリトバルスキーを投入して攻撃を強化してきた。西ドイツがボールをキープして攻め込んでいくが、ウルグアイディフェンスも踏ん張りなかなか同点に追いつくことが出来ずにいた後半67分、左サイドからのFKをアロフスが折り返してアウゲンターラーがシュートを撃ったがポストに弾かれてゴールならず。
後半75分にはマテウスを下げて本来のキャプテン・ルンメニゲを投入して猛攻撃を仕掛けていき、81分に左サイドからルンメニゲがクロスを上げ、ベルトールトがヘディングで合わせたがGKアルベスが好セーブで凌いで得点を許さなかった。
なかなか得点を奪えず前回同様に初戦黒星の雰囲気が漂い始めた後半84分、猛攻の末に最後はアロフスが起死回生の同点ゴールを決めて、土壇場で西ドイツが試合を振り出しに戻すことに成功した。そして試合は1-1のまま終了して、両チーム勝点1ずつを挙げて初戦を終えることになった。
その後の両国
あと一歩で白星スタートを逃した南米王者のウルグアイは、第2戦のデンマーク戦で1-6のまさかの大敗を喫してしまう。そして最終戦のスコットランド戦ではキックオフ早々に退場者を出すなど波に乗れずにスコアレスドローで、グループリーグを2分1敗の3位だったが際どいながらも決勝トーナメントに進出した。決勝トーナメント1回戦では同じ南米のアルゼンチンに敗れて準々決勝進出とはならなかった。
危うく黒星スタートとなるとこだった前回大会準優勝の西ドイツは、第2戦のスコットランド戦を勝利し、最終戦のデンマーク戦は敗れたが、1勝1敗1分でグループリーグを2位で通過した。決勝トーナメント1回戦でモロッコを準々決勝で開催国のメキシコを接戦の末に下して準決勝に進出し、前回大会準決勝の再戦となったフランス戦を再び返り討ちにして2大会連続の決勝に進出した。
決勝ではアルゼンチンと対戦し、2点差を追いつく粘りを見せたが最後はエース・マラドーナのアシストによる決勝点を奪われて2-3で敗れ、2大会連続の準優勝に終わった。
出場選手(ウルグアイ)
GK 12 F・アルバス 1986年、1990年のワールドカップに出場。
DF 2 N・グティエレス 1986年、1990年のワールドカップに出場。
DF 3 E・アセベド 1986年のワールドカップに出場。後年J・リーグに上がる前のコンサドーレ札幌に選手として在籍する。
DF 4 V・ディオゴ 1986年のワールドカップに出場。
DF 6 J・バティスタ 1986年のワールドカップに出場。
MF 5 M・ボッシオ 1986年のワールドカップに出場。
MF 8 J・バリオス Ⓒ ▼56分 1986年のワールドカップに出場。
MF 11 S・サンティン 1986年のワールドカップに出場。
MF 10 E・フランチェスコリ 1986年、1990年のワールドカップに出場。1980年代から1990年代のウルグアイを代表する史上最高の選手の一人であり、南米を代表する史上最高の選手の一人。フランスのスーパースター・ジダンが最も憧れた選手である。
FW 9 J・ダ・シルバ 1986年のワールドカップに出場。
FW 7 A・アルサメンディ ▼80分 1986年、1990年のワールドカップに出場。
MF 16 M・サラレギ △56分 1986年のワールドカップに出場。
FW 19 V・ラモス △80分 1986年のワールドカップに出場。
監督 O・ボラス 1986年のワールドカップに監督として出場。
出場選手(西ドイツ)
GK 1 H・シューマッハー Ⓒ 1982年、1986年のワールドカップに出場。1970年代から1980年代の西ドイツを代表する史上最高のゴールキーパーであり、欧州を代表するゴールキーパーの一人。
DF 4 K・H・フェルスター 1982年、1986年のワールドカップに出場。1970年代後半から1980年代の西ドイツを代表する史上最高のストッパーの一人であり、欧州を代表するストッパーの一人。元西ドイツ代表ベルント・フェルスターは実兄である。
DF 6 N・エデル 1986年のワールドカップに出場。
DF 14 T・ベルトールト 1986年、1990年、1994年のワールドカップに出場。
DF 15 K・アウゲンターラー 1986年、1990年のワールドカップに出場。
DF 3 A・ブレーメ ▼46分 1986年、1990年、1994年のワールドカップに出場。1980年代から1990年代のドイツを代表する史上最高の左サイドバックであり、欧州を代表する左サイドバックの一人。
MF 2 H・P・ブリーゲル 1982年、1986年のワールドカップに出場。1970年代から1980年代の西ドイツを代表するディフェンダー。
MF 10 W・F・マガト 1982年、1986年のワールドカップに出場。1970年代から1980年代の西ドイツを代表するゲームメーカー。
MF 8 L・マテウス ▼75分 1982年、1986年、1990年、1994年、1998年のワールドカップに出場。1980年代から1990年代のドイツを代表する史上最高の選手の一人であり、欧州を代表する史上最高の選手の一人。1990年にバロンドール受賞。
FW 19 K・アロフス 1986年のワールドカップに出場。
FW 9 R・フェラー 1986年、1990年、1994年のワールドカップに出場。1980年代から1990年代前半のドイツを代表するストライカー。後年ドイツ代表監督に就任し、2002年のワールドカップに監督として出場して準優勝に導いている。
MF 7 P・リトバルスキー △46分 1982年、1986年、1990年のワールドカップに出場。1980年代から1990年代の西ドイツを代表するドリブラー。後年J・リーグのジェフ市原に選手として在籍し、アビスパ福岡に監督として在籍する。
FW 11 K・H・ルンメニゲ △75分 1978年、1982年、1986年のワールドカップに出場。1970年代から1980年代の西ドイツを代表する史上最高の選手の一人であり、欧州を代表する史上最高の選手の一人。1980年、1981年にバロンドール受賞。J・リーグの浦和レッズでプレーしたミヒャエル・ルンメニゲは実弟である。
監督 F・ベッケンバウアー ドイツ史上最高のスーパースター。1960年代後半から1980年代前半の西ドイツを代表する史上最高の選手であり、欧州を代表する史上最高の選手の一人。1966年、1970年、1974年のワールドカップに選手として出場し、1974年はキャプテンとして優勝に貢献し、1986年、1990年のワールドカップに監督として出場し、1990年は優勝に導いている。1972、1976年にバロンドール受賞。
試合結果
1986年6月4日 エスタディオ・コレヒドーラ(ケレタロ)
ウルグアイ 1-1 西ドイツ
得点 A・アルサメンディ(ウルグアイ) 4分
K・アロフス(西ドイツ) 84分