1982FIFAワールドカップ2次リーグ・グループC イタリアVSアルゼンチン

両国の1次リーグ

 イタリアは1次リーグ・グループ1に入り、3戦3引き分けと際どい2位で通過して2次リーグに進出してきた。何しろ同グループのカメルーンとは同じ3引き分けで、総得点の差でかろうじての1次リーグ突破であった。

 ディフェンディングチャンピオンのアルゼンチンは1次リーグ・グループ3に入り、今大会の開幕戦となったベルギー戦を落とし黒星スタートとなった。残る2戦は新星マラドーナの活躍もあり、連勝して2勝1敗の2位で1次リーグを通過して2次リーグに進出してきた。

 こうして2次リーグのグループCは、両国に優勝候補の筆頭ブラジルを加えた3カ国で準決勝進出を争う最激戦区のグループとなった。そして両国が2次リーグ・グループCの初戦で激突することになり、このカードは3大会連続の対戦となった。

試合

 試合はパサレラのFKで始まり、アルゼンチンがボールをキープしてイタリアがカウンターで応酬する展開で進んでいき、注目のマラドーナにはジェンティーレがマンツーマンでピタリとマークについていた。立ち上がりはアルゼンチンペースで進んでいった8分、ディアスがペナルティエリア内でマラドーナからボールを貰い、切り返してシュートを撃ったがGKゾフに阻まれてしまう。続く11分には右サイドのFKからオルギンがペナルティエリア内にクロスを入れ、マラドーナがオーバーヘッドキックで狙ったが枠を外れてしまった。

 さらに前半13分、左サイドからのFKをケンペスがイタリアゴールエリアにクロスを上げ、パサレラが頭で合わせたが枠の外に外れてしまった。その後もアルゼンチンペースで進み、イタリアは開始間もなくのアントニョーニのFKぐらいしかチャンスを作れなかった。前半はこのままスコアレスで終了して折り返しを迎えることになった。

 後半に入ると一転、イタリアがペースを握りアルゼンチンはボールを前に運べなくなっていった。後半開始早々の47分にロッシ、タルデリと繋いでグラツィアーニがシュートを撃ったが枠を外れてゴールならず。さらにタルデリ、オリアーリがミドルシュートを放ちアルゼンチンゴールを脅かしていった。迎えた後半57分、カウンターからコンティが持ち込んで左サイドのアントニョーニにパスを出し、アントニョーニがさらに左を駆け抜けたタルデリにボールを渡し、これをタルデリがアルゼンチンゴールに突き刺してイタリアが先制点を挙げた。

 先制されたアルゼンチンはケンペスとディアスを下げて、カルデロンとバレンシアを投入して打開を図り、後半58分にハーフェライン付近からのFKをオルギンがイタリアゴールエリアに放り込み、パサレラが頭で折り返してベルトーニがヘディングシュートを撃ったがGKゾフの正面でゴールならず。さらに60分のパサレラのFKもGKゾフにセーブされ、63分のマラドーナのFKはポストに直撃して惜しくもゴールにならなかった。

 アルゼンチンの猛攻が続いた後半67分、イタリアが再びカウンターからオフサイドラインを抜け出したロッシにパスが通り、ロッシの撃ったシュートはGKフィジョールが防いだが、そのこぼれ球をコンティが拾って繋ぎ、最後はカブリーニがゴールに突き刺してイタリアが2点目を挙げてリードを広げた。

 追い込まれたアルゼンチンは後半83分、パサレラがペナルティエリア外正面の位置からのFKを直接イタリアゴールに叩き込み、ようやく1点を返して反撃の狼煙を上げた。しかし、その直後にガジェゴがタルデリに体ごとチャージにいって、一発レッドカードの退場処分になってしまい、せっかくの追撃ムードに水を差してしまう形になった。

 そして試合はこのまま2-1で終了し、イタリアが2次リーグ初戦を白星でスタートすることになった。敗れたアルゼンチンは次戦のブラジル戦は必勝が義務付けられることになった。

その後の両国

 2次リーグ初戦でディフェンディングチャンピオンのアルゼンチンを破って今大会初勝利を挙げたイタリアは、2次リーグ最終戦のブラジル戦をロッシのハットトリックで歴史に残る名勝負を制して準決勝に進出した。優勝候補のアルゼンチン、ブラジルを連破して勢いに乗ったイタリアは、準決勝で1次リーグの再戦となったポーランドを、決勝で西ドイツを下して通算3回目の優勝を達成した。

 2次リーグ初戦を落としたディフェンディングチャンピオンのアルゼンチンは、次戦のブラジル戦も敗れて連敗となり2次リーグ敗退となった。大会前の下馬評では前回大会の優勝メンバーをほぼ揃え、新星マラドーナも加わって連覇も視野に入れて臨んだが、組み合わせの不運もあり不本意な大会となった。

出場選手(イタリア)

 GK 1 D・ゾフ Ⓒ                                                                                                            1974年、1978年、1982年のワールドカップに出場。1960年代から1980年代前半のイタリアを代表する史上最高のゴールキーパーであり、欧州を代表する史上最高のゴールキーパーの一人。後年イタリア代表監督に就任する。

 DF 7 G・シレア                                                                                                                1978年、1982年、1986年のワールドカップに出場。1970年代から1980年代のイタリアを代表する史上最高の選手の一人であり、欧州を代表する史上最高の選手の一人。

 DF 6 C・ジェンティーレ                                                                                                                                                                         1978年、1982年のワールドカップに出場。1970年代から1980年代のイタリアを代表する史上最高のディフェンダーの一人であり、欧州を代表するディフェンダーの一人。

 DF 5 F・コロヴァティ                                                                                                               1982年、1986年のワールドカップに出場。1970年代後半から1980年代のイタリアを代表する史上最高のディフェンダーの一人であり、欧州を代表するディフェンダーの一人。

 DF 4 A・カブリーニ                                                                                                                         1978年、1982年、1986年のワールドカップに出場。1970年代から1980年代のイタリアを代表する史上最高の左サイドバックであり、欧州を代表する左サイドバックの一人。

 MF 13 G・オリアーリ ▼75分                                                                                             1982年のワールドカップに出場。

 MF 9 G・アントニョーニ                                                                                                      1978年、1982年のワールドカップに出場。1970年代から1980年代のイタリアを代表する史上最高のファンタジスタの一人であり、欧州を代表するファンタジスタの一人。

 MF 14 M・タルデリ                                                                                                              1978年、1982年、1986年のワールドカップに出場。1970年代から1980年代のイタリアを代表する史上最高の選手の一人であり、欧州を代表するディフェンシブミッドフィルダーの一人。

 MF 16 B・コンティ                                                                                                            1982年、1986年のワールドカップに出場。1970年代から1980年代のイタリアを代表する史上最高のウインガーの一人であり、欧州を代表するウインガーの一人。

 FW 20 P・ロッシ ▼80分                                                                                                                                                               1978年、1982年のワールドカップに出場し、1982年は得点王。1970年代から1980年代のイタリアを代表する史上最高のストライカーの一人であり、欧州を代表するストライカーの一人。1982年にバロンドール受賞。

 FW 19 F・グラツィアーニ                                                                                                          1978年、1982年のワールドカップに出場。

 MF 11 G・マリーニ △75分                                                                                               1982年のワールドカップに出場。

 FW 18 A・アルトベッリ △80分                                                                                                    1982年、1986年のワールドカップに出場。1970年代から1980年代のイタリアを代表するストライカー。

 監督 E・ベアルツォット                                                                                                                             イタリアを代表する史上最高の監督の一人。1978年、1982年、1986年のワールドカップに監督として出場し、1982年は優勝に導いている。

出場選手(アルゼンチン)

 GK 7 U・フィジョール                                                                                                            1974年、1978年、1982年のワールドカップに出場。1970年代から1980年代のアルゼンチンを代表する史上最高のゴールキーパー。

 DF 15 D・パサレラ Ⓒ                                                                                                                                                                       1978年、1982年のワールドカップに出場。1970年代から1980年代のアルゼンチンを代表する史上最高の選手の一人であり、南米を代表する史上最高の選手の一人。後年アルゼンチン代表監督に就任し、1998年のワールドカップに監督として出場。

 DF 14 J・オルギン                                                                                                                                                                  1978年、1982年のワールドカップに出場。後年J・リーグのアビスパ福岡に監督として在籍する。

 DF 8 L・ガルバン                                                                                                                                                                                1978年、1982年のワールドカップに出場。

 DF 18 A・タランティーニ                                                                                                                             1978年、1982年のワールドカップに出場。

 MF 1 O・アルディレス                                                                                                                                                                                 1978年、1982年のワールドカップに出場。後年J・リーグの清水エスパルス、横浜F・マリノス、東京ヴェルディに監督として在籍する。

 MF 9 A・ガジェゴ                                                                                                                 1978年、1982年のワールドカップに出場。

 MF 10 D・マラドーナ                                                                                                                   もはや説明不要の超ド級のスーパースター。

 MF 11 M・ケンペス ▼58分                                                                                                      1974年、1978年、1982年のワールドカップに出場し、1978年は得点王。1970年代から1980年代のアルゼンチンを代表するストライカーであり、南米を代表するストライカーの一人。

 FW 4 D・ベルトーニ                                                                                                                       1978年、1982年のワールドカップに出場。

 FW 6 R・ディアス ▼58分                                                                                                                 1982年のワールドカップに出場。1970年代後半から1990年代前半のアルゼンチンを代表するストライカー。後年J・リーグの横浜マリノスに選手として在籍し、J・リーグ初代の得点王。

 MF 5 G・カルデロン △58分                                                                                                             1982年、1990年のワールドカップに出場。

 MF 21 J・D・バレンシア △58分                                                                                                     1978年、1982年のワールドカップに出場。

 監督 C・L・メノッティ                                                                                                                     アルゼンチンを代表する史上最高の監督。1978年、1982年のワールドカップに監督として出場し、1978年は優勝に導いている。

試合結果

1982年6月29日 サリア(バルセロナ)

   イタリア 2-1 アルゼンチン

得点 M・タルデリ(イタリア)  57分

   A・カブリーニ(イタリア)  67分

   D・パサレラ(アルゼンチン) 83分

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