ここまでの欧州予選グループ2
1982年にスペインで開催されるワールドカップ本大会出場権を巡って行われる欧州予選は、各組上位2カ国に出場権が与えられることになっている。そしてグループ2に入ったのは前回大会準優勝のオランダ、フランス、EURO1980準優勝のベルギー、アイルランド、キプロスの5カ国で、出場権2枠を争うことになった。
フランスはここまで消化試合が少なく、2勝1敗の勝点4でホームにベルギーを迎えることになった。一方のベルギーは、EURO1980準優勝の調子を維持して、4勝1分の勝点9でアウェーのフランスに乗り込んできた。フランスにとっては消化試合が少ないとはいえ、このホーム・ベルギー戦を落とすと出場権獲得に向けて黄信号が灯ってしまうため、敗けられない一戦となった。
試合
試合は開始早々の5分、アウェーのベルギーが左サイドからヴェルコーテレンがロングフィードで前線にパスを送り、ヴァンデンベルグがキープしてシュートを決めてベルギーが先制点を挙げた。思わぬ先制パンチをもらったフランスだがジレスを起点に攻め込んでいき、14分にペナルティエリア外やや右寄りの位置からのFKをジャンジニが直接狙うとクロスバーに直撃して跳ね返り、そのボールをソレールがゴールに押し込んでフランスがすかさず同点に追いついた。
さらに前半26分、ベルギー陣内でルーズボールを拾ったティガナが右サイドに流れたロシュトーにスルーパスを出し、ロシュトーがゴール前に折り返してシクスがベルギーゴールに押し込み、フランスが逆転に成功した。
フランスの勢いは止まらずに前半31分、中盤でジレスからボールを受けたティガナがドリブルで持ち込んで左サイドのソレールにパスを出し、ソレールがそのままシュートを放つとGKプロドームの脇下をすり抜けてゴールに転がり込んでいき、フランスがさらに追加点を挙げてベルギーを突き放していった。
立て続けに失点を喫したベルギーはベテランのヴァン・ムーアを起点に攻め込んでいってクーレマンス、クライステルスがシュートを撃ち、ミューズが自陣エリアから持ち込んでミドルシュートを撃ったが、いずれもゴールを割ることは出来なかった。そして前半は3-1のままフランスリードで終了してハーフタイムに入っていった。
後半に入るとビハインドを背負うアウェーのベルギーが攻め込んでいき、早々の52分にフランスペナルティエリア外中央からヴァン・ムーアが浮き球のパスをゴール前に出し、クーレマンスが胸トラップからのボレーシュートをフランスゴールに叩き込んでベルギーが1点差に詰め寄った。
さらに後半56分、フランスのビルドアップをカットしたヴェルコーテレンが持ち込んでシュートを撃ったが、これはGKドロプシーがセーブして防いだ。ここからフランスがボールをキープして主導権を握っていき、前半同様ジレスを起点にシクスが2度ほどシュートを撃ったがゴールにはならなかった。
そしてフランスの絶好機が後半68分、自陣エリアからジレスの出したパスでロシュトーが完全に抜け出し、そのまま持ち込んでベルギーゴール前のシクスに折り返したが、ゲレツが必死のクリアで得点にはならなかった。その後もフランスが攻め続けてベルギーは防戦一方となってしまい、結局試合はこのまま3-2でフランスの勝利でタイムアップを迎えた。
その後の両国
ホームのベルギー戦を勝利してベルギーの無敗を止めたフランスだったが、この後のアウェーのベルギー戦とアイルランド戦を連敗して窮地に陥ったが、残るホームのオランダ戦とキプロス戦を連勝で決めて2位に滑り込み、2大会連続の本大会出場権を獲得した。
アウェーのフランス戦を落として無敗が止まったベルギーだったが、ホームのフランス戦ではきっちりとリベンジして勝利し、3大会ぶりに本大会出場権を獲得した。ライバルのオランダの不調にも助けられた面はあったが、ポットCから見事に予選グループを首位で通過を果たすことになった。
出場選手(フランス)
GK 1 D・ドロプシー 1978年のワールドカップに出場。
DF 2 G・ジャンヴィオン 1978年、1982年のワールドカップに出場。
DF 3 M・ボシス 1978年、1982年、1986年のワールドカップに出場。1970年代から1980年代のフランスを代表するディフェンダー。
DF 4 C・ロペス Ⓒ 1978年、1982年のワールドカップに出場。
DF 5 M・トレゾール 1978年、1982年のワールドカップに出場。1970年代から1980年代前半のフランスを代表するディフェンダー。
MF 6 J・ティガナ 1982年、1986年のワールドカップに出場。1970年代から1980年代のフランスを代表する史上最高のミッドフィルダーの一人であり、欧州を代表するミッドフィルダーの一人。
MF 7 J・ソレール ▼71分 1982年のワールドカップに出場。
MF 8 A・ジレス 1982年、1986年のワールドカップに出場。1970年代から1980年代のフランスを代表するミッドフィルダー。
MF 10 B・ジャンジニ 1982年、1986年のワールドカップに出場。1970年代後半から1980年代のフランスを代表するセンターハーフ。
FW 9 D・ロシュトー 1978年、1982年、1986年のワールドカップに出場。
FW 11 D・シクス 1978年、1982年のワールドカップに出場。
FW 15 J・ジマコ △71分
監督 M・イダルゴ フランスを代表する史上最高の監督の一人。1978年、1982年のワールドカップに監督として出場し、1982年は4位入賞。
出場選手(ベルギー)
GK 1 M・プロドーム 1990年、1994年のワールドカップに出場。1970年代後半から1990年代のベルギーを代表する史上最高のゴールキーパーの一人であり、欧州を代表するゴールキーパーの一人。
DF 2 E・ゲレツ 1982年、1986年、1990年のワールドカップに出場。1970年代から1990年代前半のベルギーを代表する右サイドバック。
DF 3 L・ミルカンプ ▼17分 1982年のワールドカップに出場。
DF 4 W・ミューズ 1982年のワールドカップに出場。後年ベルギー代表監督に就任する。
DF 5 M・レンカン 1982年、1986年のワールドカップに出場。
MF 6 F・ヴェルコーテレン ▼63分 1982年、1986年のワールドカップに出場。1970年代から1980年代のベルギーを代表するウインガー。後年ベルギー代表監督に就任する。
MF 7 R・ヴァンデレイケン 1986年のワールドカップに出場。後年ベルギー代表監督に就任する。
MF 8 W・ヴァン・ムーア Ⓒ 1970年、1982年のワールドカップに出場。1960年代から1980年代前半のベルギーを代表する史上最高の選手の一人。後年ベルギー代表監督に就任する。
MF 9 L・クライステルス 1986年、1990年のワールドカップに出場。元テニスプレーヤーで全豪・全米オープン優勝のキム・クライステルスは娘である。
FW 10 E・ヴァンデンベルグ 1982年、1986年のワールドカップに出場。
FW 11 J・クーレマンス 1982年、1986年、1990年のワールドカップに出場。1970年代から1990年代前半のベルギーを代表する史上最高の選手の一人。
DF 13 M・デ・ヴォルフ △17分 1986年、1990年、1994年のワールドカップに出場。
MF 14 R・フェルヘイエン △63分 1982年のワールドカップに出場。
監督 G・タイス ベルギーを代表する史上最高の監督。1982年、1986年、1990年のワールドカップに監督として出場し、1986年は4位入賞。
試合結果
1981年4月29日 パルク・デ・プランス(パリ)
フランス 3-2 ベルギー
得点 E・ヴァンデンベルグ(ベルギー) 5分
J・ソレール(フランス) 14分
D・シクス(フランス) 26分
J・ソレール(フランス) 31分
J・クーレマンス(ベルギー) 52分