両国のグループリーグ戦
前回大会準優勝の西ドイツはグループ4に入り、初戦のモロッコ戦は先制されたものの後半に逆転して2-1で勝利し、白星で大会のスタートを切った。第2戦のブルガリア戦はミュラーのハットトリックを含む5-2で大勝し、2連勝で早々にグループリーグ通過を決めた。そしてグループリーグ首位通過をかけた最終戦のペルー戦も、ミュラーの2試合連続のハットトリックで3-1で勝利し、グループリーグを3戦全勝の首位通過で準々決勝に進出した。
一方のディフェンディングチャンピオンのイングランドはグループ3に入り、初戦のルーマニア戦は1-0で勝利したが、第2戦のブラジル戦は0-1で敗れて1勝1敗となり、グループ首位通過は厳しい状況となった。そして最終戦のチェコスロヴァキア戦を1-0で勝利し、グループリーグを2勝1敗の2位で通過して準々決勝進出を決めた。
こうして準々決勝のカードは西ドイツ対イングランドの顔合わせとなり、前回大会決勝の再戦が実現することになった。
試合(前半)
10分 イングランドが右サイドのFKからチャールトンが西ドイツペナルティエリア内にクロスを入れ、ハーストがヘディングで合わせたがGKマイヤーがキャッチしてゴールならず。しかし、マイヤーのキャッチ後にリーがマイヤーと接触してしまいイエローカードを貰う。
17分 西ドイツのミュラーがボールに後方からタックルを仕掛けてイエローカードを貰う。
22分 西ドイツのシュネリンガーがミドルシュートを打ったが枠を外してゴールならず。
26分 西ドイツのベッケンバウアーがミドルシュートを打ったが枠を外してゴールならず。
31分 イングランドのマレリーが中盤で右サイドのニュートンにサイドチェンジのパスを出し、ニュートンがそのまま右サイドから持ち上がって西ドイツゴール前に低いパスを出し、これをマレリーが西ドイツDFと競り合いながらゴールに押し込んでイングランドが先制点を挙げた。(西ドイツ0-1イングランド)
43分 西ドイツのベッケンバウアーがミドルシュートを打ったが枠を外してゴールならず。
44分 西ドイツのレーアがミドルシュートを打ったが枠を外してゴールならず。
前回大会決勝の再戦となった準々決勝の試合は、西ドイツがボールをキープしていく展開となったが、お互いにペナルティエリア内には入り込めずに時間が経過していった。そして31分にイングランドがマレリーのゴールで先制点を挙げた。前半の西ドイツはシュネリンガー、ベッケンバウアー、レーアがミドルシュートを打つぐらいしかチャンスを掴めず、前半は1-0のままイングランドリードで折り返しに入っていった。
試合(後半)
46分 西ドイツがヘットゲスを下げてシュルツを投入。
49分 イングランドのハーストが右サイドをオーバーラップしてきたニュートンにスルーパスを出し、ニュートンがワンタッチで西ドイツゴール前に低いクロスを入れ、ピータースが合わせてゴールに押し込みイングランドが追加点を挙げる。(西ドイツ0-2イングランド)
56分 西ドイツのベッケンバウアーがミドルシュートを打ったが枠を外してゴールならず。
57分 西ドイツがリブダ下げてグラボウスキーを投入。
68分 西ドイツのベッケンバウアーがマレリーをかわしてシュートを決めて反撃の狼煙を上げる。(西ドイツ1-2)
70分 イングランドがチャールトンを下げてベルを投入。
76分 イングランドのリーが左サイドからドリブルでカットインしてミドルシュートを打ったが枠を外してゴールならず。
77分 イングランドのベルがシュートを打ったがGKマイヤーの正面でゴールならず。
78分 イングランドのベルが右サイドから西ドイツゴール前にクロスを上げ、ハーストが頭で合わせたが僅かに枠を外れてゴールならず。
79分 西ドイツのレーアがミュラーにパスを出し、ミュラーがイングランドDFをかわしてシュートを打ったがGKボネッティの正面でゴールならず。
80分 イングランドがピーターズを下げてハンターを投入。
81分 西ドイツのシュネリンガーからのロングパスをゼーラーがバックヘッドでイングランドゴールに押し込んで西ドイツが同点に追いつく。(西ドイツ2-2イングランド)
83分 西ドイツのベッケンバウアーが中央からドリブルで持ち上がり、ミュラーとのワンツーからシュートを打ったが枠を外れてゴールならず。
85分 西ドイツが左サイド奥からのFKをオヴェラートがイングランドゴール前にクロスを上げ、レーアが頭で合わすが枠を外れてゴールならず。
後半に入ると早々の49分にピーターズがゴールを決めてイングランドが追加点を挙げた。ここから試合は激しい展開となっていき、68分にベッケンバウアーが強烈なシュートをイングランドゴールに叩き込んで1点を返して反撃の狼煙を上げた。そして81分に西ドイツのキャプテン・ゼーラーがバックヘッドでイングランドゴールに押し込み、西ドイツが試合を振り出しに戻して90分終了のホイッスルが鳴り響き、前回大会の決勝同様に勝負の行方は延長戦へと持ち込まれていった。
試合(延長戦)
95分 西ドイツのベッケンバウアーがミドルシュートを打ったが枠を外してゴールならず。
108分 西ドイツが右サイドからグラボウスキーがクロスを上げ、レーアがが頭で折り返したところをミュラーがボレーでイングランドゴールに叩き込み、西ドイツが逆転に成功する。(西ドイツ3-2イングランド)
115分 イングランドのマレリーがシュートを打ったが枠を外れてゴールならず。
120分 イングランドのニュートンがシュートを打ったが枠を外れてゴールならず。
延長戦に入ると両チームとも消耗戦になっていき、オープンな展開になっていった。そして延長後半108分にミュラーがレーアの折り返しをボレーでイングランドゴールに叩き込んで逆転に成功して激闘に決着を着けた。こうして前回大会決勝のリベンジを果たした西ドイツが準決勝進出を決めた。
その後の両国
歴史的死闘を大逆転で制し、前回大会決勝のリベンジを果たした西ドイツは準決勝で欧州王者のイタリアと決勝進出をかけて対戦することになった。そしてイタリアとの準決勝も歴史的死闘となり、延長戦の末に3-4で敗れて2大会連続の決勝進出とはならなかった。
ディフェンディングチャンピオンのイングランドは歴史的大逆転負けで西ドイツにリベンジを許し、大会から別れを遂げることになった。そしてこの敗戦は予想以上にダメージが残り、この試合以降しばらくの間国際舞台から遠ざかることになり、次にイングランドがワールドカップに登場するのは12年後の1982年スペイン大会まで待つことになった。
出場選手(西ドイツ)
GK 1 S・マイヤー 1966年、1970年、1974年、1978年のワールドカップに出場。1960年代から1970年代の西ドイツを代表する史上最高のゴールキーパーであり、欧州を代表する史上最高のゴールキーパーの一人。
DF 7 B・フォクツ 1970年、1974年、1978年のワールドカップに出場。1960年代中盤から1970年代の西ドイツを代表するディフェンダー。後年ドイツ代表監督に就任し、1994年と1998年のワールドカップに監督として出場。
DF 11 K・フィヒテル 1970年のワールドカップに出場。
DF 3 K・H・シュネリンガー 1958年、1962年、1966年、1970年のワールドカップに出場。1950年代終盤から1970年代初頭の西ドイツを代表するディフェンダー。
DF 2 H・D・ヘットゲス ▼46分 1966年、1970年、1974年のワールドカップに出場。
MF 12 W・オヴェラート 1966年、1970年、1974年のワールドカップに出場。1960年代から1970年代の西ドイツを代表する史上最高のオフェンシブミッドフィルダーの一人。
MF 4 F・ベッケンバウアー 1966年、1970年、1974年のワールドカップに出場。1960年代中盤から1980年代初頭の西ドイツを代表する史上最高の選手であり、世界を代表する史上最高の選手一人。後年西ドイツ代表監督に就任して1986年と1990年のワールドカップに監督として出場し、1990年は優勝に導いている。1972年、1976年にバロンドール受賞。
FW 17 H・レーア 1970年のワールドカップに出場。
FW 9 U・ゼーラー Ⓒ 1958年、1962年、1966年、1970年のワールドカップに出場。1950年代から1970年代初頭の西ドイツを代表する史上最高の選手の一人。
FW 13 G・ミュラー 1970年、1974年のワールドカップに出場し、1970年は得点王。1960年代中盤から1970年代の西ドイツを代表する史上最高のストライカーであり、欧州を代表する史上最高のストライカーの一人。1970年にバロンドール受賞。
FW 14 R・リブダ ▼55分 1970年のワールドカップに出場。
DF 5 W・シュルツ △46分 1962年、1966年、1970年のワールドカップに出場。1960年代から1970年代初頭の西ドイツを代表する史上最高のスイーパーの一人であり、欧州を代表する史上最高のスイーパーの一人。
FW 20 J・グラボウスキー △55分 1966年、1970年、1974年のワールドカップに出場。1960年代中盤から1970年代の西ドイツを代表するオフェンシブミッドフィルダー。
監督 H・シェーン 西ドイツを代表する史上最高の監督。1966年、1970年、1974年、1978年のワールドカップに監督として出場し、1974年は優勝に導いている。
出場選手(イングランド)
GK 12 P・ボネッティ 1970年のワールドカップに出場。
DF 2 K・ニュートン 1970年のワールドカップに出場。
DF 5 B・ラボーン 1970年のワールドカップに出場。1950年代終盤から1970年代初頭のイングランドを代表するセンターハーフ。
DF 6 B・ムーア Ⓒ 1962年、1966年、1970年のワールドカップに出場。1950年代終盤から1970年代のイングランドを代表する史上最高のディフェンダーであり、欧州を代表する史上最高のディフェンダーの一人。
DF 3 T・クーパー 1970年のワールドカップに出場。
MF 4 A・マレリー 1970年のワールドカップに出場。
MF 8 A・ボール 1966年、1970年のワールドカップに出場。1960年代から1970年代のイングランドを代表するミッドフィルダー。
MF 9 B・チャールトン ▼70分 1958年、1962年、1966年、1970年のワールドカップに出場。1950年代中盤から1970年代中盤のイングランドを代表する史上最高の選手であり、欧州を代表する史上最高の選手の一人。1966年にバロンドール受賞。元イングランド代表のジャッキー・チャールトンは実兄であり、ジャッキー・ミルバーンは叔父である。
MF 11 M・ピータース ▼81分 1966年、1970年のワールドカップに出場。1960年代から1970年代のイングランドを代表するミッドフィルダー。
FW 7 F・リー 1970年のワールドカップに出場。
FW 10 G・ハースト 1966年、1970年のワールドカップに出場。1960年代から1970年代中盤のイングランドを代表するストライカー。
MF 19 C・ベル △70分 1960年代中盤から1970年代のイングランドを代表するミッドフィルダー。
DF 18 N・ハンター △81分 1970年のワールドカップに出場。1960年代から1970年のイングランドを代表するセンターバック。
監督 A・ラムゼー イングランドを代表する史上最高の監督。1940年代から1950年代中盤のイングランドを代表する右サイドバック。1950年のワールドカップに選手として出場し、1966年と1970年のワールドカップに監督として出場して1966年は優勝に導いている。
試合結果
1970年6月14日 エスタディオ・レオン(レオン)
西ドイツ 3-2 イングランド
得点 A・マレリー(イングランド) 31分
M・ピータース(イングランド) 49分
F・ベッケンバウアー(西ドイツ) 68分
U・ゼーラー(西ドイツ) 82分
G・ミュラー(西ドイツ) 108分