フェイエノールトの勝ち上がり状況
前シーズンにオランダリーグを制したフェイエノールトは、1回戦でアイスランドのKRレイキャヴィークと対戦し、2試合合計16-2と記録的なスコアで下して2回戦に進出した。2回戦ではディフェンディングチャンピオンのACミランと対戦し、2試合合計2-1で下して準々決勝に進出した。
準々決勝で東ドイツのフォルヴェルツ・ベルリンと対戦し、2試合合計2-1で下して準決勝に進出した。準決勝ではポーランドのレギア・ワルシャワと対戦して、2試合合計2-0で破って初の決勝進出を決めた。オランダ勢としては前年のアヤックスに続いて2年連続の決勝進出となった。
セルティックの勝ち上がり状況
前シーズンにスコットランドリーグを4連覇したセルティックは、1回戦でスイスのバーゼルと対戦し、2試合合計2-0で下して2回戦に進出した。2回戦ではポルトガルの強豪ベンフィカ・リスボンと対戦して2試合合計3-3のタイスコアとなり、コイントスにより際どく準々決勝に進出した。
準々決勝でイタリアのフィオレンティーナと対戦し、2試合合計3-1で下して準決勝に進出した。準決勝ではイングランドのリーズ・ユナイテッドと英国対決となり、2試合合計3-1で下して3年ぶり2回目の決勝に進出してきた。
こうして1969ー1970チャンピオンズカップ決勝のカードはフェイエノールト対セルティックの顔合わせとなり、フェイエノールトが勝てば初優勝でオランダ勢としても初優勝となり、セルティックが勝てば3年ぶり2回目の優勝となる。
試合(前半)
10分 フェイエノールトのウェリーからのパスを受けたファン・ダイフェンボーデがシュートを打ったがGKウィリアムズがセーブしてゴールならず。
18分 セルティックのオールドがミドルシュートを放ち、こぼれ球をマードックがフェイエノールトゴールに押し込んだがオフサイドでゴール無効の判定。
29分 フェイエノールトのヤンセンのパスをキンドヴァルがポストプレーで頭で落とし、ハシルがシュートを打ったがGKウィリアムズがセーブしてゴールならず。
30分 セルティックがフェイエノールトゴール正面のFKをマードックが少しずらして、ゲメルが強烈なミドルシュートをフェイエノールトゴールに蹴り込んでセルティックが先制点を挙げた。(フェイエノールト0-1セルティック)
32分 フェイエノールトが右サイドのFKからセルティックゴール前にクロスを入れ、2人が頭で繋いだボールを最後はイスラエルが頭でセルティックゴールに押し込み、フェイエノールトが同点に追いついた。(フェイエノールト1-1セルティック)
40分 セルティックのジョンストンが右サイド深く持ち込んでフェイエノールトゴール前にクロスを上げ、ヒューズが飛び込んだが合わせることが出来ず。
下馬評ではセルテッィク有利と思われた試合は、セルティック攻撃のキーマン・ジョンストンに対してフェイエノールトが厳しいマークで抑え込み、ファン・ハネゲム、ヤンセン、ハシルのトリオがフェイエノールトの中盤を制していった。しかし、30分にセルティックがFKからゲメルが強烈なミドルシュートを突き刺して先制点を挙げた。フェイエノールトは直後の32分にイスラエルが頭で押し込んで、すかさず同点に追いついた。そして前半は1-1のまま終了してハーフタイムに入っていった。
試合(後半)
48分 フェイエノールトのハシルがシュートを打ったが、ポストを弾いてゴールにはならず。
65分 フェイエノールトが中盤のパス回しからファン・ダイフェンボーデがシュートを打ったが枠を外してゴールならず。
68分 セルティックがFKからヒューズがシュートを打ったが枠を外れてゴールならず。
77分 セルティックがオールドを下げてコネリーを投入。
83分 フェイエノールトがヤンセンのスルーパスからウェリーがシュートを打ったが枠を外れてゴールならず。
後半に入るとフェイエノールトがペースを握って攻め込んでいったが、チャンスを逃して得点には至らず、65分頃過ぎからはセルティックもチャンスを作ったが得点にはならなかった。そして75分過ぎからは再びフェイエノールトがカウンターからチャンスを作ったが得点にはならず、勝負の行方は延長戦まで持ち込まれることになった。
試合(延長戦)
91分 セルティックのヒューズがイスラエルの不用意な横パスを奪い、そのまま持ち込んでシュートを打ったがGKグラーフランドがセーブして惜しくもゴールならず。
98分 フェイエノールトのハシルがセルティック陣内でボールを奪い、シュートを打ったが枠を外れてゴールならず。
100分 フェイエノールトのウェリーからのパスを受けたハシルがシュートを打ったが枠を外れてゴールならず。
102分 セルティックのレノックスが左サイドを突破してクロスを上げ、競り合ったルーズボールをウォレスがヘディングで狙ったがGKグラーフランドの正面でゴールならず。
106分 フェイエノールトがローメインを下げてハークを投入。
108分 フェイエノールトがカウンターからウェリーが自陣からドリブルで持ち上がってキンドヴァルにパスを出し、キンドヴァルがシュートを打ったがGKウィリアムズがセーブしてゴールならず、さらにそのこぼれ球をウェリーがシュートを打ったが、再びウィリアムズがセーブしてゴールならず。
113分 フェイエノールトが中盤でのパス回しからファン・ハネゲムがヤンセンに渡し、ヤンセンがキンドヴァルにスルーパスを出してシュートを打ったが枠を外れてゴールならず。
117分 フェイエノールトがハーフェライン付近からのFKをセルティックペナルティエリア内に放り込み、キンドヴァルがGKウィリアムズの頭上を越すループシュートを決めてフェイエノールトが勝ち越し点を挙げる。(フェイエノールト2-1セルティック)
119分 フェイエノールトがカウンターからキンドヴァルが持ち込んでハシルにパスを出し、ハシルがシュートを打ったがクロスバーを直撃して追加点にはならず。
延長に入って開始早々の10秒もしないうちに、ヒューズがイスラエルの不用意なパスを奪ってシュートを打ったが惜しくもゴールにはならなかった。一方のフェイエノールトはハシルが2度ほどシュートを打ったがゴールにはならずに延長前半を終了した。延長後半に入るとフェイエノールトペースで進んでいきスコアが動いたのは試合終了間際の117分、ハーフェライン付近のFKからキンドヴァルがループシュートを決めて勝ち越し点を挙げた。そして試合は2-1のまま終了してフェイエノールトが初優勝を飾ることになった。
その後のフェイエノールト
フェイエノールトのチャンピオンズカップ初優勝はオランダ勢にとっても初優勝となり、そしてこの優勝は1970年代のオランダサッカー黄金時代の幕開けとなった。そしてフェイエノールトはインターコンチネンタルカップでアルゼンチンのエストゥディアンテスを2試合合計3-2で破ってタイトルを獲得した。しかし、翌シーズンのチャンピンズカップでは1回戦でルーマニアのUTAアラドに2試合合計1-1のアウェーゴールの差で敗れて1回戦敗退となってしまった。
出場選手(フェイエノールト)
GK 1 E・L・P・グラーフランド 1970年にフェイエノールトでチャンピオンズカップ優勝。1950年代から1970年代初頭のオランダを代表するゴールキーパー。この試合が現役最後の試合となった。
DF 2 P・ローメイン ▼106分 1970年にフェイエノールトでチャンピオンズカップ優勝。
DF 4 T・ラザロムス 1970年にフェイエノールトでチャンピオンズカップ優勝。
DF 3 R・イスラエル Ⓒ 1970年にフェイエノールトでチャンピオンズカップ優勝。後年フェイエノールトの監督に就任する。
DF 5 T・ファン・ダイフェンボーデ 1970年にフェイエノールトでチャンピオンズカップ優勝。
MF 7 W・ヤンセン 1970年にフェイエノールトでチャンピオンズカップ優勝。1960年代中盤から1980年代初頭のオランダを代表するミッドフィルダー。後年フェイエノールトとJ・リーグのサンフレッチェ広島の監督に就任する。
MF 6 F・ハシル 1970年にフェイエノールトでチャンピオンズカップ優勝。
MF 10 W・ファン・ハネゲム 1970年にフェイエノールトでチャンピオンズカップ優勝。1960年代から1980年代初頭のオランダを代表する史上最高の選手の一人。後年フェイエノールトの監督に就任する。
FW 8 H・ウェリー 1970年にフェイエノールトでチャンピオンズカップ優勝。
FW 9 O・キンドヴァル 1970年にフェイエノールトでチャンピオンズカップ優勝。1960年代から1970年代のスウェーデンを代表する史上最高のストライカーの一人。
FW 11 C・ムーリン 1970年にフェイエノールトでチャンピオンズカップ優勝。1950年代中盤から1970年代初頭のオランダを代表する左ウインガー。
MF 15 G・ハーク △106分 1970年にフェイエノールトでチャンピオンズカップ優勝。
監督 E・ハッペル オーストリアを代表する史上最高の監督。1970年にフェイエノールト、1983年にハンブルガーSVで監督としてチャンピオンズカップ優勝。
出場選手(セルティック)
GK 1 E・ウィリアムズ
DF 2 D・ヘイ 後年セルティックの監督に就任する。
DF 5 B・マクニール Ⓒ 1967年にセルティックでチャンピオンズカップ優勝。1960年代から1970年代中盤のスコットランドを代表するディフェンダー。後年セルティックの監督に就任する。
DF 6 J・ブローガン
DF 3 T・ゲメル 1967年にセルティックでチャンピオンズカップ優勝。
MF B・マードック 1967年にセルティックでチャンピオンズカップ優勝。1960年代から1970年代中盤のスコットランドを代表するミッドフィルダー。
MF 10 B・オールド ▼77分 1967年にセルティックでチャンピオンズカップ優勝。
FW 7 J・ジョンストン 1967年にセルティックでチャンピオンズカップ優勝。1960年代から1970年代中盤のスコットランドを代表する史上最高の選手の一人。
FW 9 J・ヒューズ 1967年にセルティックでチャンピオンズカップ優勝。
FW 8 W・ウォレス 1967年にセルティックでチャンピオンズカップ優勝。
FW 11 B・レノックス 1967年にセルティックでチャンピオンズカップ優勝。1960年代から1970年代のスコットランドを代表するストライカー。
MF 14 G・コネリー △77分
監督 J・スタイン スコットランドを代表する史上最高の監督。1967年にセルティックで監督としてチャンピオンズカップ優勝。
試合結果
1970年5月6日 サンシーロ(ミラノ)
フェイエノールト 2-1 セルティック
得点 T・ゲメル(セルティック) 30分
R・イスラエル(フェイエノールト) 32分
O・キンドヴァル(フェイエノールト) 117分